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第1話 “作る者”マサムネ
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「──えっと、初めましてだよな。俺は本日、君達の引率をすることになった【マサムネ】だ、よろしく頼む」
目の前には剣士の装いをした少年と、剣士の装いをした少女、魔法使いの装をした少女の計三人が俺の顔を見ている。
そのうち少年と魔法使いの少女は、俺を見るからに嫌そうな表情で睨み付ける。
「引率って、おっさん──“作る者”だろ? あんたに引率なんて勤まるのか?」
またそれが始まった……めんどくさい。
この世界では、人々は個人の適正に合わせ大まかに三つのクラスに分けられる。
戦闘の才があれば──“戦う者”
魔術の才があれば──“祈る者”
共に才が無ければ──“作る者”……である。
そしてその中でも、“作る者”。つまり生産者は、蔑まれる傾向にある。
特に“戦う者”とは相容れず、こんな扱いを受ける事も屡々……この引率事態、お断りしたいのだが──。
「──安心しなさい、彼は有能だよ。今回の【ダンジョン】探索に彼の力が役立つはずだ」
元凶は全てコイツ。ギルドのマスターである【ヨハネ】だ。
昔馴染みのコイツに頼まれ事……つまりこの子達のダンジョン探索に付き合うことを強要されたのだ。
「協力してくれないと、今後君のところに下卸す素材が偶然にも値上がりしてしまうかもしれない……」っと。
「──しかしギルドマスター。この冴えないおっさんが、戦闘で役立つとは思えません!」
少年の暴言が胸に突き刺さる。
実際に俺が剣を振るおうが、活躍どころか自らの命を縮めることになるだろう。
普通、才とは努力でまかなうことが出来ない……つまり──そう言うものなのだ。
それにしてもおっさんって……確かに三十五だが、まだ働き時だぞ? 十代である君達には、若さでは劣るのは間違いないが……。
「うん、君達の言い分は分かる。四人一組で挑むのが一般的なダンジョン攻略に、非戦闘員がいると足手まといと言うことなのだろ?」
「はい。正直申しますと、私もその様に思っております」
“祈る者”だと思われる少女が、ヨハネの言うことに同意した。
言葉遣いの割には、ハッキリとものを言う娘だ。
ダンジョンとはこの限られた世界、通称【箱庭】と呼ぶのだが。
その箱庭と箱庭を繋ぐ通路……とも言われている施設だ。
化石燃料や鉱物が枯渇した現在、唯一色々な資源が採取出来る場所でもある。
「安心しなさい。四人一組とは、本来視野を確保するためのもの。彼はそう言った能力に関しては長けているからね。私が保証しよう」
少年達の疑いの眼差しが突き刺さる。
邪魔者扱いするぐらいなら、他の者を連れていって欲しいものだ。
「それに君達は強い。戦力だけであれば、三人でも十分だろう。その男、荷物持ちをさせたら右に出るものは居ないぞ? 君達が身軽になれば、それだけ三人とも活躍できる。違うかな?」
誉められている気はしないな……“作る者”がダンジョンに入る以上、パシリに使われるのは珍しい事ではない。
まぁダンジョンに入る、“作る者”も、中々いないがな。
「しかしギルドマスター、僕達は他の冒険者とは違います! 第一層で素材集めをして、金儲けに満足している冒険者とは違うんです! 新たな箱庭を繋ぐ、それを目標に日々切磋琢磨……」
「──ロキ君。もういいでしょ?」
“戦う者”であろう少女が前出てきた。
──驚いた、このタイミングで出てくるとは。
彼女は足手まといになる“作る者”の同行を認めると言う事なのだろうか?
「大丈夫です。荷物持ちが入れば私が二人分働けますし、ギルドマスターの顔を立てましょう。今後、色々と優遇してくれるかもしれないわよ?」
これはまたしたたかな少女だ……。普通、本人を前にそれを言うかね?
「ふん、君がそう言うなら仕方がないな。そのおっさんの面倒は、責任もって視てくれよ?」
俺の目の前には彼らの荷物が、次々と放り出された。
ダンジョンに潜るには食料を含め、相応の道具が必要だ。自分の荷物を含めた四人分の荷物、俺はそれを軽々と……そして、淡々と担いで行く。
「盗みでもしてみろ、その時は容赦なく斬るからな?」
「……あぁ、重々承知しているよ」
目の前には剣士の装いをした少年と、剣士の装いをした少女、魔法使いの装をした少女の計三人が俺の顔を見ている。
そのうち少年と魔法使いの少女は、俺を見るからに嫌そうな表情で睨み付ける。
「引率って、おっさん──“作る者”だろ? あんたに引率なんて勤まるのか?」
またそれが始まった……めんどくさい。
この世界では、人々は個人の適正に合わせ大まかに三つのクラスに分けられる。
戦闘の才があれば──“戦う者”
魔術の才があれば──“祈る者”
共に才が無ければ──“作る者”……である。
そしてその中でも、“作る者”。つまり生産者は、蔑まれる傾向にある。
特に“戦う者”とは相容れず、こんな扱いを受ける事も屡々……この引率事態、お断りしたいのだが──。
「──安心しなさい、彼は有能だよ。今回の【ダンジョン】探索に彼の力が役立つはずだ」
元凶は全てコイツ。ギルドのマスターである【ヨハネ】だ。
昔馴染みのコイツに頼まれ事……つまりこの子達のダンジョン探索に付き合うことを強要されたのだ。
「協力してくれないと、今後君のところに下卸す素材が偶然にも値上がりしてしまうかもしれない……」っと。
「──しかしギルドマスター。この冴えないおっさんが、戦闘で役立つとは思えません!」
少年の暴言が胸に突き刺さる。
実際に俺が剣を振るおうが、活躍どころか自らの命を縮めることになるだろう。
普通、才とは努力でまかなうことが出来ない……つまり──そう言うものなのだ。
それにしてもおっさんって……確かに三十五だが、まだ働き時だぞ? 十代である君達には、若さでは劣るのは間違いないが……。
「うん、君達の言い分は分かる。四人一組で挑むのが一般的なダンジョン攻略に、非戦闘員がいると足手まといと言うことなのだろ?」
「はい。正直申しますと、私もその様に思っております」
“祈る者”だと思われる少女が、ヨハネの言うことに同意した。
言葉遣いの割には、ハッキリとものを言う娘だ。
ダンジョンとはこの限られた世界、通称【箱庭】と呼ぶのだが。
その箱庭と箱庭を繋ぐ通路……とも言われている施設だ。
化石燃料や鉱物が枯渇した現在、唯一色々な資源が採取出来る場所でもある。
「安心しなさい。四人一組とは、本来視野を確保するためのもの。彼はそう言った能力に関しては長けているからね。私が保証しよう」
少年達の疑いの眼差しが突き刺さる。
邪魔者扱いするぐらいなら、他の者を連れていって欲しいものだ。
「それに君達は強い。戦力だけであれば、三人でも十分だろう。その男、荷物持ちをさせたら右に出るものは居ないぞ? 君達が身軽になれば、それだけ三人とも活躍できる。違うかな?」
誉められている気はしないな……“作る者”がダンジョンに入る以上、パシリに使われるのは珍しい事ではない。
まぁダンジョンに入る、“作る者”も、中々いないがな。
「しかしギルドマスター、僕達は他の冒険者とは違います! 第一層で素材集めをして、金儲けに満足している冒険者とは違うんです! 新たな箱庭を繋ぐ、それを目標に日々切磋琢磨……」
「──ロキ君。もういいでしょ?」
“戦う者”であろう少女が前出てきた。
──驚いた、このタイミングで出てくるとは。
彼女は足手まといになる“作る者”の同行を認めると言う事なのだろうか?
「大丈夫です。荷物持ちが入れば私が二人分働けますし、ギルドマスターの顔を立てましょう。今後、色々と優遇してくれるかもしれないわよ?」
これはまたしたたかな少女だ……。普通、本人を前にそれを言うかね?
「ふん、君がそう言うなら仕方がないな。そのおっさんの面倒は、責任もって視てくれよ?」
俺の目の前には彼らの荷物が、次々と放り出された。
ダンジョンに潜るには食料を含め、相応の道具が必要だ。自分の荷物を含めた四人分の荷物、俺はそれを軽々と……そして、淡々と担いで行く。
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