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第15話 猫かぶりのヒロイン
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ダンジョンから外に出た頃には、外は闇夜に支配される時刻となっていた。
シャルを治療室に送った後、俺はギルドカード回収のついでに職員に話を聞いた。
どうやら、坊主はまだ出て来ていないらしい……。
マップを俺が持っていたからな、追い越した可能性も充分考えられる。二度と出てはこれない可能性も……。
ギルドにも行きたかったが、夜も更けている。報告は、日を改めることにした。
──そして、翌朝。
「マサムネさん、マサムネさんー」
日が上ったばかりの早朝。冒険者の朝は早く、それに合わせなるべく早く店を開けるよう、心掛けていた。
昨晩は、なんだかんだ興奮していたのだろうか? あまり寝付けなかったな……。
「ひーまーですー。凄くひまです! マサムネさん、昨日の話の続きをしてくださいよぉ」
俺はいつものように、商品の状態確認、手入れを行っていた。
ただいつもとは違うことが一件。
それは──何故かサクラは朝早くから家にきて、部屋の一角にあるテーブルを占拠していることだ。
「君との約束は、俺の正体の説明だったはずだ。俺は最低限の事は、話したと思うが」
間違いなく自分の正体だけは明かした。よって、何も嘘はついていないのだが、サクラは「汚いです! 大人は汚いです!」っと駄々をこねているのだ。
まだ若いとは言え、君も立派な大人だろうに……。
「あー……俺の印象だと、君はもう少し聞き分けが良かったと記憶してるのだが」
「まぁ初対面でしたし、多少は猫かぶってましたから」
テーブルに肘をたて、頬を膨らませそっぽを向く。
そうして拗ねているところは、年相応に可愛らしくも見えるな。
ワガママを言わなければ……だが。
「何て言うか、マサムネさん私の事を女って意識してない気がしますし。それに素を見せても嫌われたりしないかなって」
人の顔を見て「んべぇ~」っと舌を出すサクラ。まったく、困ったものだ。
「もう、サクラ。マサムネさんの邪魔しちゃダメですよ?」
関係者意外立ち入り禁止の部屋から、シャルが顔を出した。
医者の見立てでは、彼女が前のように激しく動き回れるのには時間が掛かるそうだ。
その間、ダンジョンには到底潜れない。その為、店の売り子として俺が雇ったのだ。
「シャルちゃん昨日ぶり──って、なんて格好してるの!?」
白と紺を貴重とした、所々フリルをあしらったメイド服に身を包んだシャルが姿を現した。
彼女の透き通るような金髪が、メイド服とマッチして清楚さを際出せる。
「なんだ、メイド服だが知らないのか?」
「──そうじゃありませんよぉ! なんでこの店にメイド服なんですか、マサムネさんの趣味ですか? はいそうですか!?」
な、怒っているのか?
「お、落ち着けサクラ。これはとある人物の趣味で……」
「マサムネさんはシャルちゃんみたいな子の方が好みな訳ですね。通りで私に興味を示さないわけです……デザインも、む、胸を強調してますし!?」
おい何を言って、誤解が生まれるだろ!? ──ってシャルも何故胸元を押さえる!
「変なことばかり言ってると追い出すぞ? 今日から働くシャルが不安になるだろ。それに何を怒って……」
「怒ってる訳じゃないですよ。ただその、目標としていた人の一人が、目の前で別の人ばかり優しくしてるのを見て……つい」
頭を手でかく……。正直、俺はそんな憧れられる程、大層なものでも無いんだけどな。
素直なのは良いことだけど。本当、年頃の子は難しい。
「なぁサクラ。君は──大丈夫なのか?」
突然の心配の言葉に、サクラは目を背ける。彼女からしたら、自分から催促したように感じているのかもな。
「ソロになっただろ? もう一人ぐらいなら、雇えないことも……」
その事は、昨日から懸念していた。
彼女の目標がダンジョン攻略であるのなら、今のご時世そうそうメンバーは集まりはしない。
金にならない夢を掲げるより、金になる現実に流される。
人が生きる以上、それは仕方がないことで道理なのだから。
「あーなるほど。私のメイド服姿も見ようって魂胆ですね? マサムネさんが大好きなお胸、そこまで大きくは……」
「──違うわ!」
冗談なのは分かるが、そのキャラを定着させるのは止めてくれ!
ったく、心配されたいのかされたくないのかどちらなんだよ……。
「まぁ、私なら他所でも引っ張り凧ですし、食べて行くだけなら大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます……その、少し嬉しかったです」
まったく、最近の若いものは……。誰かに頼るって事を知りはしないのか?
例え強かろうと彼女も女性だ……あまり一人でフラフラさせるのも心配だ。
……俺に出来る事でも考えておこうか。
シャルを治療室に送った後、俺はギルドカード回収のついでに職員に話を聞いた。
どうやら、坊主はまだ出て来ていないらしい……。
マップを俺が持っていたからな、追い越した可能性も充分考えられる。二度と出てはこれない可能性も……。
ギルドにも行きたかったが、夜も更けている。報告は、日を改めることにした。
──そして、翌朝。
「マサムネさん、マサムネさんー」
日が上ったばかりの早朝。冒険者の朝は早く、それに合わせなるべく早く店を開けるよう、心掛けていた。
昨晩は、なんだかんだ興奮していたのだろうか? あまり寝付けなかったな……。
「ひーまーですー。凄くひまです! マサムネさん、昨日の話の続きをしてくださいよぉ」
俺はいつものように、商品の状態確認、手入れを行っていた。
ただいつもとは違うことが一件。
それは──何故かサクラは朝早くから家にきて、部屋の一角にあるテーブルを占拠していることだ。
「君との約束は、俺の正体の説明だったはずだ。俺は最低限の事は、話したと思うが」
間違いなく自分の正体だけは明かした。よって、何も嘘はついていないのだが、サクラは「汚いです! 大人は汚いです!」っと駄々をこねているのだ。
まだ若いとは言え、君も立派な大人だろうに……。
「あー……俺の印象だと、君はもう少し聞き分けが良かったと記憶してるのだが」
「まぁ初対面でしたし、多少は猫かぶってましたから」
テーブルに肘をたて、頬を膨らませそっぽを向く。
そうして拗ねているところは、年相応に可愛らしくも見えるな。
ワガママを言わなければ……だが。
「何て言うか、マサムネさん私の事を女って意識してない気がしますし。それに素を見せても嫌われたりしないかなって」
人の顔を見て「んべぇ~」っと舌を出すサクラ。まったく、困ったものだ。
「もう、サクラ。マサムネさんの邪魔しちゃダメですよ?」
関係者意外立ち入り禁止の部屋から、シャルが顔を出した。
医者の見立てでは、彼女が前のように激しく動き回れるのには時間が掛かるそうだ。
その間、ダンジョンには到底潜れない。その為、店の売り子として俺が雇ったのだ。
「シャルちゃん昨日ぶり──って、なんて格好してるの!?」
白と紺を貴重とした、所々フリルをあしらったメイド服に身を包んだシャルが姿を現した。
彼女の透き通るような金髪が、メイド服とマッチして清楚さを際出せる。
「なんだ、メイド服だが知らないのか?」
「──そうじゃありませんよぉ! なんでこの店にメイド服なんですか、マサムネさんの趣味ですか? はいそうですか!?」
な、怒っているのか?
「お、落ち着けサクラ。これはとある人物の趣味で……」
「マサムネさんはシャルちゃんみたいな子の方が好みな訳ですね。通りで私に興味を示さないわけです……デザインも、む、胸を強調してますし!?」
おい何を言って、誤解が生まれるだろ!? ──ってシャルも何故胸元を押さえる!
「変なことばかり言ってると追い出すぞ? 今日から働くシャルが不安になるだろ。それに何を怒って……」
「怒ってる訳じゃないですよ。ただその、目標としていた人の一人が、目の前で別の人ばかり優しくしてるのを見て……つい」
頭を手でかく……。正直、俺はそんな憧れられる程、大層なものでも無いんだけどな。
素直なのは良いことだけど。本当、年頃の子は難しい。
「なぁサクラ。君は──大丈夫なのか?」
突然の心配の言葉に、サクラは目を背ける。彼女からしたら、自分から催促したように感じているのかもな。
「ソロになっただろ? もう一人ぐらいなら、雇えないことも……」
その事は、昨日から懸念していた。
彼女の目標がダンジョン攻略であるのなら、今のご時世そうそうメンバーは集まりはしない。
金にならない夢を掲げるより、金になる現実に流される。
人が生きる以上、それは仕方がないことで道理なのだから。
「あーなるほど。私のメイド服姿も見ようって魂胆ですね? マサムネさんが大好きなお胸、そこまで大きくは……」
「──違うわ!」
冗談なのは分かるが、そのキャラを定着させるのは止めてくれ!
ったく、心配されたいのかされたくないのかどちらなんだよ……。
「まぁ、私なら他所でも引っ張り凧ですし、食べて行くだけなら大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます……その、少し嬉しかったです」
まったく、最近の若いものは……。誰かに頼るって事を知りはしないのか?
例え強かろうと彼女も女性だ……あまり一人でフラフラさせるのも心配だ。
……俺に出来る事でも考えておこうか。
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