魔剣が作れるおっさんは、今日も魔力が帯びた剣を生み出したがらない。

リゥル

文字の大きさ
17 / 46

第16話 女心

しおりを挟む
「取りあえずだ、昨日の精算もある。俺は今からギルドへ報告に向かおうと思う──」
「──ギ、ギルドですか!」

 メイド服のシャルが、怖い顔をして大声で俺に詰め寄る。
 落ち着きのあるイメージだったので、その行動に虚を衝かれ、内心驚いた。

「ど、どうしたんだシャル……急に大きな声を上げて」
「私も着いていきます! マサムネさん、お願いします。どうか連れていって下さい!」

 連れていけって……自分が怪我人だってことを忘れていないか?

 しかし、彼女の様子を見て気づく。
 昨日も見た眼だ。彼女の様子からするに、坊主の事が気がかりなんだろう……っと。

「君は足の事もある、ここに残りなさい。彼の事は俺が聞いておく。これは雇い主の命令だ……」

 仲間を思う彼女には酷な話だけどな……。
 しかし、だからこそ彼女は連れていけない。
 もし、未だに坊主が帰って来ていなければ……彼女は探しにダンジョンへ戻ると言い出しかねないからな。

 シャルは悔しそうな顔で「でも……」っと手を握り力を込めるものの、その手は開かれ、だらりと垂れ下がる。

「君が出向いても結果は変わらないさ、人混みで怪我が悪化でもしてみろ、目も当てられないぞ?」
「確かに、私が行った所で彼が助かる訳でも無いですよね……」
「……そう言うことだ。彼が大怪我をして戻ってきているかもしれない。何があってもいいように、先立つものをしっかりと準備しておくんだ、例えそれが、ほんの少しの金額でもな?」

 シャルは、血が出るのではないか? っと言うほど唇を噛み締める。

 自分の感情を圧し殺せるのか……さとい子だ。
 ただ、言葉では納得したようにも聞こえても、その表情はそうは言っていない。

「準備の大切さは、俺がダンジョンで教えただろ?」

 シャルの肩をポンッっと叩くと、彼女は「はい……」っと一言だけ返事し、俺を見つめた。

 青く美しい、瞳に涙を浮かべて──。

 仲間を思う、彼女のガラス玉の様な瞳に、自分が写し出された様な気がした。
 俺が彼女立場であれば……今の会話で、すべて納得が出来るだろうか?

「──も、もし、坊主まだダンジョンから出てこない様なら、俺が捜索依頼を出しておく。費用は君の給料から天引きだ、いいな?」
「は、はい──よろしくお願いいたします!」

 真剣な顔で頭を下げる際、少しだけほころんだ彼女の顔を見ると、アーセナルを担ぎ建物の外へと向かう。

「それじゃ、留守番を頼んだぞ? 俺が出来る限りの事をしておく。君は笑顔で客を迎えてやってくれ。売り上げ次第じゃ、ボーナスも考えてやる」
「……はい!」 

 ドアノブを開き、外へと出た。そして、店の外に出るなり頭を抱える。
 どうしてこうも、俺は女性の涙に弱いのだろうか……っと。

「はぁ……余計な安請け合いしてしまったな」
「──本当ですよ、あんなこと言って大丈夫なんですかぁ? 捜索費用も馬鹿にならないと思うけど……。それとも、マサムネさんはお金持ちなんですか?」
「普通の武器屋だぞ。蓄えに余裕があるわけがないだろ?」

 自分でも分かっている……一度パーティーを組んだだけの相手に踏み込みすぎていると。
 だからと言って、俺にも責任の一端があるからな、見過ごせる訳もあるまい。

「それにしても、彼女は本当仲間思いだな……俺も若い頃は……」
「──マ、マサムネさん。それ、本気で言ってるのかな!?」

 サクラは大きな目を、更に見開き、驚きの表情を見せる。
 そして、俺の顔を見て呆れて見せた。

「い、意外ですね……。マサムネさん、そっちの方は鈍いんですか。シャルちゃんはロキ君が好きなんですよ、見ていたらわからないですかねぇ?」
「あ~……なるほど、そう言う。確かに鈍いのは自覚しているが。そうか、それで……」

 あの坊主の何処に魅力が……。
 そんなことに頭を悩ませつつも、ギルドに向かった。
 女心……それはダンジョン攻略よりも、奥深いものなのかもしれないな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった

雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。 天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。 だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。 鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。 一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。 朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。 悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。 目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...