魔剣が作れるおっさんは、今日も魔力が帯びた剣を生み出したがらない。

リゥル

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第28話 乙女心 サクラ視点

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◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「驚きましたよ。マサムネさん、満身創痍で帰ってくるんですから……サクラ、プルミエールダンジョンにはそのような強力な魔物が、今だ健在なんですか?」

 メイド服に身を包む、金髪美少女のシャルちゃんが、心配そうな顔で私に尋ねてきた。

 第二の箱庭を出て三日後。
 マサムネさんの目的も達成して、私達は元いた第二の箱庭に、一名を除き無事帰ることが出来た。

 その一名とは言うまでもない、マサムネさんだ……。
 彼は悔しくも、第一の箱庭でカンナさんの手により大怪我を……ううん、これ以上は思い出すのはよそう。
 私でも恐怖するあの惨劇の事は、そっと胸に秘めておくべきだ。

「い、いやぁ……ダンジョンでと言うか、あれは第一の箱庭で負った怪我かな?」

 シャルちゃんは「まぁ!」っと驚いて見せた。
 驚くのは無理もない、まさかダンジョンではなく、普段人が住んでる箱庭であんな大量のコブを作るとは、誰も思わないよね。

「所で、怪我を負ったその本人は、今どこにいるの?」

 私はマサムネさんを探すため、辺りをキョロキョロと見回した。

 シャルちゃんの回復魔法を受けたとは言え、魔法では体力や精神疲労は治らないから、そっちも心配だ。

「サクラって……実は──マサムネさんに気がありますよね? ほら、最近毎日のように店に顔を出すじゃないですか」

 ……え? シャルちゃんは何を言っているのだろうか。気があるって……好きと言う意味で?

「え~!? 違うわよ!! それはシャルちゃんの体調が心配で、こうして顔を出しているわけで!」

 考えもしなかった。
 確かに彼は私の憧れる伝説の一人。それに奥さんも居るわけで……って、別に今は離婚をしているんだった。

 いやいや!? 無い無い! だってマサムネさんと私は一回り以上も年が離れてる訳だし、彼の態度を見ていたら分かる──私は恋愛対象にはなり得ないって。

 でもそれは、彼の視点や立場であって私の気持ちは何処にも無い……。

「べ、別に、マサムネさんなんて好きでもなんでも……」

 私の心は、あの人の事をどう思って居るのだろうか?

「──なんだ、俺を呼んだか? サクラ」
「ひゃいっ!?」

 背後から突然、マサムネさんの声が聞こえた。心ここに在らずだった私は心臓が口から飛び出すほど驚いた。

「べ、別に~マサムネさんなんて、これっぽっちも呼んでなんてないんですからね!?」
「そ、そうか……分かったから、店内では静かにしてくれよ?」

 おかしい! 変なこと考えたから顔が熱くなっている!?

 私はマサムネさんを直視出来ず、顔を手で隠し下を向く。
 なんとなく、今の表情を誰にも見られたくない……そう思ったのだ。

「──あれ、マサムネさんお出掛けなさるのですか?」

 シャルちゃんの声を聞き、私は顔を上げた。
 すると、マサムネさんはあのアーセナルと呼んでいた大きなバックではなく、肩から下げるタイプの普通サイズの荷物入れを担いでいた。

「あぁ、よく分かったな? 少々知り合いの細工師に用が出来てな。すまないがシャル、店番をお願いしたいんだが?」

 所々、痛々しく包帯が巻かれてはいるが、彼は平気そうな様子だ。

 ──本当に良かった、何とか元気そうで。

「マサムネさん! 私も一緒に……」
「──それではシャル、留守番を頼んだぞ!」

 それだけ言うと、彼は何かから逃げるように、彼の家である武器屋を飛び出した。

「行っちゃった……もう、マサムネさんは意地悪です! こうなったら“戦う者”の身体能力を見せてやるときです!」
「──もうサクラ、あまりマサムネさんを追いかけないの!!」

 追いかけるって!? 間違いじゃないけど、シャルちゃん、それ絶対に別の意味も含んでるでしょ!

「べ、別に好きだから追いかけてる訳じゃ……ほら、マサムネさんと居ると退屈しないじゃない?」

 私の反論に、シャルちゃんは「ふ~ん」っと一言だけ返事をした。

 な、なんでそんな顔するかな!? なんで呆れながらもニヤニヤするのかな!!

「──はいはい、サクラがマサムネさんを大好きなのは良く分かりました。でも程ほどにしないと嫌われちゃいますよ?」
「シャ、シャルちゃん、違うって~!! 」

 彼女は返事もせず、意味ありげな笑顔で
掃除道具片手に、隣の部屋の扉を開けたのだった。
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