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第12話 主人と犬5
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「なるほど、数は六匹……っと言った所でしょうか? 所でフランさん、隠れて居なくてもよろしいのですか?」
アリエルが隠れろと言ったにも関わらず、フランは彼女の横へと並び立つ。
ロムも唸り声をあげ、やる気に満ち溢れているようだ。
相手と位置関係を距離で言うなら、三百メートルと言ったところか? この頃には、普通の人間の視界でも、尾の大きな小動物がチラチラと黙視する事が出来た。
化け物達は木々を避けながらも、最短距離でアリエル達に迫り来る。
「射撃の訓練は受けているわ、私だって戦えるわよ」
フランは肩から背負っていた長銃を構え、化け物に標準を合わせる。
そして息を止めた瞬間引き金を引き、彼女は先制の一撃を放ったのだ。
大きな銃声の直後──遠目に一匹の化け物が宙に浮き上がり、赤い鮮血を撒き散らしながらも、崩れるように地面に伏した……。
「どう? ざっとこんなものかな」
これだけの障害物が立ち並ぶ中、人の身で時折見える一瞬を狙い打ちしたのだ。
アリエルは、そんなフランの腕前に素直に感心した。
「驚きました、中々のお手前ですね。それでは是非、援護射撃をお願いできますか?」
「分かったわ、任せて──ってアリエルちゃん、どうする気なの!?」
今回のアリエル装備は、二丁の拳銃と二振りのナイフだ。流石に先程のフランの射撃のように、針の穴を通す様な射撃は出来ない。
その事を十分理解しているアリエルは、その場で二度三度飛び跳ねる。
「武器がこれなので──私は特攻します!!」
フランの「ちょっと!」の呼ぶ声を聞かず、拳銃を両手に、アリエルは低い体制のまま化け物に向かい走り出した。
ある程度距離を詰め、双銃を前に突きだし引き金を引くと、弾丸は二匹の化け物の眉間を貫いた──!
「──後、三匹!」
二匹の化け物が、アリエルの弾丸により血飛沫をあげた。
生き残っている化け物達はその様子を見てか、木々を登り、それを盾にするかのように、縦横無尽に距離を詰めてくる。
「早い──原形はリス科ですか!? しかし無駄です、見えています!!」
木の上から口と飛膜を広げ、飛び降りる化け物をアリエルは自身の鉄の腕で、悉く払いのけ、追撃に射撃を行った……。
瞬く間に行われた攻防により、アリエルはすべての化け物に鉛弾をぶちこむことが出来た。
「これで、全て片付きましたか」
アリエルが目を凝らし、化け物の息があるかを確認しようとした時だった。
「──くっ、まだ生きて!?」
恐るべき、化け物の生命力言ったところか。
銃弾は確かに化け物を射ぬいたはずだったのだが、頭部に風穴の空かなかった一匹が、突如起き上がりアリエル襲ったのだ──。
それを受けるため、アリエルは自身の左手
を盾にしようと手を出した。
しかし、アリエルに飛び付いてきた化け物は、突如として弾けとんだのだ。
聞こえた銃声の方を見ると、長銃を構えたフランが居る。
「どうやら……助けられてしまったようですね」
アリエルは出した左手で、そのまま自分降り注いだ返り血を拭う……。
「止めを刺しきれていませんでしたか……拳銃では威力が足りませんね。やはり、大物も持ってくるべきでした」
アリエルは、銃をホルダーに納める。
顔は口を残し溶けており、体は本来生えてはならない場所から、手足が飛び出している。
そんな化け物達も、悪魔の石の犠牲者なんだと、哀れみの視線を向けた。
「──アリエルちゃん大丈夫!?」
「えぇ、フラン様の援護のお陰でかすり傷ひとつ付いておりません」
ロムと共に、フランが心配そうに駆け寄った。そして──
「──もう、アリエルちゃん! 何であんな危険なことをするの!!」
「えっと、ただの威力偵察なのですが……。何かまずかったでしょうか? 今ので悪魔の石が存在する方角が分かりましたが……」
アリエルの言葉を遮るように、フランは両手で彼女の頬を掴んだ、そしてジッと目を見つめる。
「アリエルちゃん。私は君を心配してるの……私が怒ってるの、分かるかな?」
その言葉に、アリエルは頭が真っ白になった。
勝手な行いをした自分を怒るなら理解できる……しかし、彼女は違った──心配だから、自分を怒ってくれているのだ。
「ひ、非常に効率的な手段かと思われましたので……いえ、申し訳ありません。心配を御掛けしたようで……」
申し訳ない気持ちで、視線を外してしまう。フランはそんな彼女を抱き寄せ、頭を撫でた。
「分かればよろしい! 次無茶するときは、事前に相談してよね?」
耳に心地よい声が響いた。人と同じように扱ってくれる彼女に、心が揺すぶられるのが分かる。
「了解です……フラン様」
アリエルは少しの間、フランに身を任せ目を閉じた。
そして今の気持ちを忘れないよう深く……深くメモリーに書き残したのだった。
アリエルが隠れろと言ったにも関わらず、フランは彼女の横へと並び立つ。
ロムも唸り声をあげ、やる気に満ち溢れているようだ。
相手と位置関係を距離で言うなら、三百メートルと言ったところか? この頃には、普通の人間の視界でも、尾の大きな小動物がチラチラと黙視する事が出来た。
化け物達は木々を避けながらも、最短距離でアリエル達に迫り来る。
「射撃の訓練は受けているわ、私だって戦えるわよ」
フランは肩から背負っていた長銃を構え、化け物に標準を合わせる。
そして息を止めた瞬間引き金を引き、彼女は先制の一撃を放ったのだ。
大きな銃声の直後──遠目に一匹の化け物が宙に浮き上がり、赤い鮮血を撒き散らしながらも、崩れるように地面に伏した……。
「どう? ざっとこんなものかな」
これだけの障害物が立ち並ぶ中、人の身で時折見える一瞬を狙い打ちしたのだ。
アリエルは、そんなフランの腕前に素直に感心した。
「驚きました、中々のお手前ですね。それでは是非、援護射撃をお願いできますか?」
「分かったわ、任せて──ってアリエルちゃん、どうする気なの!?」
今回のアリエル装備は、二丁の拳銃と二振りのナイフだ。流石に先程のフランの射撃のように、針の穴を通す様な射撃は出来ない。
その事を十分理解しているアリエルは、その場で二度三度飛び跳ねる。
「武器がこれなので──私は特攻します!!」
フランの「ちょっと!」の呼ぶ声を聞かず、拳銃を両手に、アリエルは低い体制のまま化け物に向かい走り出した。
ある程度距離を詰め、双銃を前に突きだし引き金を引くと、弾丸は二匹の化け物の眉間を貫いた──!
「──後、三匹!」
二匹の化け物が、アリエルの弾丸により血飛沫をあげた。
生き残っている化け物達はその様子を見てか、木々を登り、それを盾にするかのように、縦横無尽に距離を詰めてくる。
「早い──原形はリス科ですか!? しかし無駄です、見えています!!」
木の上から口と飛膜を広げ、飛び降りる化け物をアリエルは自身の鉄の腕で、悉く払いのけ、追撃に射撃を行った……。
瞬く間に行われた攻防により、アリエルはすべての化け物に鉛弾をぶちこむことが出来た。
「これで、全て片付きましたか」
アリエルが目を凝らし、化け物の息があるかを確認しようとした時だった。
「──くっ、まだ生きて!?」
恐るべき、化け物の生命力言ったところか。
銃弾は確かに化け物を射ぬいたはずだったのだが、頭部に風穴の空かなかった一匹が、突如起き上がりアリエル襲ったのだ──。
それを受けるため、アリエルは自身の左手
を盾にしようと手を出した。
しかし、アリエルに飛び付いてきた化け物は、突如として弾けとんだのだ。
聞こえた銃声の方を見ると、長銃を構えたフランが居る。
「どうやら……助けられてしまったようですね」
アリエルは出した左手で、そのまま自分降り注いだ返り血を拭う……。
「止めを刺しきれていませんでしたか……拳銃では威力が足りませんね。やはり、大物も持ってくるべきでした」
アリエルは、銃をホルダーに納める。
顔は口を残し溶けており、体は本来生えてはならない場所から、手足が飛び出している。
そんな化け物達も、悪魔の石の犠牲者なんだと、哀れみの視線を向けた。
「──アリエルちゃん大丈夫!?」
「えぇ、フラン様の援護のお陰でかすり傷ひとつ付いておりません」
ロムと共に、フランが心配そうに駆け寄った。そして──
「──もう、アリエルちゃん! 何であんな危険なことをするの!!」
「えっと、ただの威力偵察なのですが……。何かまずかったでしょうか? 今ので悪魔の石が存在する方角が分かりましたが……」
アリエルの言葉を遮るように、フランは両手で彼女の頬を掴んだ、そしてジッと目を見つめる。
「アリエルちゃん。私は君を心配してるの……私が怒ってるの、分かるかな?」
その言葉に、アリエルは頭が真っ白になった。
勝手な行いをした自分を怒るなら理解できる……しかし、彼女は違った──心配だから、自分を怒ってくれているのだ。
「ひ、非常に効率的な手段かと思われましたので……いえ、申し訳ありません。心配を御掛けしたようで……」
申し訳ない気持ちで、視線を外してしまう。フランはそんな彼女を抱き寄せ、頭を撫でた。
「分かればよろしい! 次無茶するときは、事前に相談してよね?」
耳に心地よい声が響いた。人と同じように扱ってくれる彼女に、心が揺すぶられるのが分かる。
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