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第一章
演習
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結局、鳳翔に上手いこと有耶無耶にされ、大和はどこか空っぽの気持ちで防波堤を目指した。
漁船の停泊する通常の港よりも、艦魂たちの使うものはより大きく長い。
そもそもが巨艦で、大砲や機関砲を載せるのに特化しているのが軍艦や艦艇の特徴である。
それに合わせて港をつくらねばならないのだ。これには散々地元の海系妖怪からごねられた。
「座頭さえおらんかったらなぁ・・・・・」
きっと、平和な青い海のままでいられたのだろうか。そんな寂しい気持ちが、腹の底にずっとある感覚がする。
座頭。今、艦魂たちが戦い続けている生命体の仮称である。
種類、サイズはバラバラで出現率も安定せず、海域も広い。
一律して姿はまるで、針山を全身に纏ったウミウシの様だった。目は三つの触角の先についており、率直に言うととても気持ち悪い。
艦魂たちが守るこの海・・・・冥海に突如発生し爆発的に広がっている。
性質は狂暴そのもの。艦魂はおろか、生きた人間でさえも襲ってしまう事が、つい最近になって分かってきた。
わかった事は、これだけだった。
もっと情報が欲しい。その為にも出撃回数を増やし、調査をより広く、深く進めなくてはならない。
なにより、私の弟妹を・・・・・
「大和さん、ねぇってば!」
甲高い叫びに近い怒号に、はっと物思いから覚めると、既に大和の目の前に1人の軍人がむくれた顔で突っ立っていた。
黒い半袖のジョンベラに膝丈までの短い短パンを穿き、頭には白い水兵帽を被った少年が、ガチャガチャと身体を覆うように装着された艤装を鳴らして待っていた。
「あ、あぁ・・・・悪い、気付かなかった」
「もう、またですか?最近ずうっとそんな調子ですよ?眠いんですか?」
「いや、そう言う訳じゃ・・・・・冬月は変わらず真面目だな」
「大和さんがぼーっとしてるだけです!いつもはそんなんじゃないでしょう?」
ふくー、と見るからにもちもちとした頬を膨らませ、少年冬月は上官相手に文句たらたらであった。
こんな態度、他の上司であったなら即刻お左遷である。たが、冬月は浜風と同様、大和とは知らない仲ではない。
無遠慮に振る舞えるのも、縁あってのものだった。
冬月、浜風、大和。この名前を聞いてピンとくる奴は多かろう。
いずれも、旧日本海軍連合艦隊最期の戦い、『坊ヶ岬沖海戦』にて共に征った戦友である。
そう言う事があってか、こうして艦魂、人の形となった今でも交流を求めてくるのだ。
「わかったって。そうキーキー言いんさんな」
そら、行くぞ。と言いながら大和は港の端に立つ鉄筋とレンガで出来たら掘っ立て小屋へ向かって歩きだした。
小屋、演習用の艤装を保管してある倉庫である。
たてつけの悪い硝子戸を力いっぱい押し開き、遠慮なく中へ入っていく。
整頓、掃除の行き届いた室内はしかしオイルの匂いで溢れていた。僅かに眉を潜めつつ、大和は更に奥へ進む。
そして一番奥、大型艦がよく使う巨大な砲門の剥き出しになったそれを見つけると、慣れた手付きで金具やら器具やらを取り付けにかかった。
漁船の停泊する通常の港よりも、艦魂たちの使うものはより大きく長い。
そもそもが巨艦で、大砲や機関砲を載せるのに特化しているのが軍艦や艦艇の特徴である。
それに合わせて港をつくらねばならないのだ。これには散々地元の海系妖怪からごねられた。
「座頭さえおらんかったらなぁ・・・・・」
きっと、平和な青い海のままでいられたのだろうか。そんな寂しい気持ちが、腹の底にずっとある感覚がする。
座頭。今、艦魂たちが戦い続けている生命体の仮称である。
種類、サイズはバラバラで出現率も安定せず、海域も広い。
一律して姿はまるで、針山を全身に纏ったウミウシの様だった。目は三つの触角の先についており、率直に言うととても気持ち悪い。
艦魂たちが守るこの海・・・・冥海に突如発生し爆発的に広がっている。
性質は狂暴そのもの。艦魂はおろか、生きた人間でさえも襲ってしまう事が、つい最近になって分かってきた。
わかった事は、これだけだった。
もっと情報が欲しい。その為にも出撃回数を増やし、調査をより広く、深く進めなくてはならない。
なにより、私の弟妹を・・・・・
「大和さん、ねぇってば!」
甲高い叫びに近い怒号に、はっと物思いから覚めると、既に大和の目の前に1人の軍人がむくれた顔で突っ立っていた。
黒い半袖のジョンベラに膝丈までの短い短パンを穿き、頭には白い水兵帽を被った少年が、ガチャガチャと身体を覆うように装着された艤装を鳴らして待っていた。
「あ、あぁ・・・・悪い、気付かなかった」
「もう、またですか?最近ずうっとそんな調子ですよ?眠いんですか?」
「いや、そう言う訳じゃ・・・・・冬月は変わらず真面目だな」
「大和さんがぼーっとしてるだけです!いつもはそんなんじゃないでしょう?」
ふくー、と見るからにもちもちとした頬を膨らませ、少年冬月は上官相手に文句たらたらであった。
こんな態度、他の上司であったなら即刻お左遷である。たが、冬月は浜風と同様、大和とは知らない仲ではない。
無遠慮に振る舞えるのも、縁あってのものだった。
冬月、浜風、大和。この名前を聞いてピンとくる奴は多かろう。
いずれも、旧日本海軍連合艦隊最期の戦い、『坊ヶ岬沖海戦』にて共に征った戦友である。
そう言う事があってか、こうして艦魂、人の形となった今でも交流を求めてくるのだ。
「わかったって。そうキーキー言いんさんな」
そら、行くぞ。と言いながら大和は港の端に立つ鉄筋とレンガで出来たら掘っ立て小屋へ向かって歩きだした。
小屋、演習用の艤装を保管してある倉庫である。
たてつけの悪い硝子戸を力いっぱい押し開き、遠慮なく中へ入っていく。
整頓、掃除の行き届いた室内はしかしオイルの匂いで溢れていた。僅かに眉を潜めつつ、大和は更に奥へ進む。
そして一番奥、大型艦がよく使う巨大な砲門の剥き出しになったそれを見つけると、慣れた手付きで金具やら器具やらを取り付けにかかった。
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