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第二章
浮キツ 黒鉄ノ
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驚くと共に、強烈な衝撃派が腹を貫く感覚にはる子は思わず耳を塞いだ。
まるで、すぐ近くにイカズチでも落っこちてきたのではないかと錯覚するほどの振動が、ビリビリと全身にめぐってくる。
怪物はしかし、黒煙をあげたままギョロリと背後を振り替えった。
遠いが、よく見ればなにか人影のようなものがこちらに向かって走ってくるではないか。
近付くにつれ、人影はなにか黒く大きなものをまとっている。重たそうなそれは人影を守る様に囲い、青い波を切り裂いてどんどん走ってくる。
滑るようなその姿に、はる子は釘付けであった。
巨大な砲門全てが怪物に向いている。怪物は近付いてくる人影に怖じ気付いたのか、ぶるっと一度だけ身を震わせた。
しかし、再び天高く吼えると今度はあの人影に向かって前進。海中に潜んでいた長い尾を振りながら怪物は人影に飛びかかった。
その衝撃は凄まじく、はる子の乗っていたボートはことごとくひっくり返ってしまう。
水の中に落ちたはる子は怖くて怖くてでたらめにもがいた。手を振るもなにも掴めるものが見当たらない。
数秒ほどでたらめに両手を振り回した時だった。水の中でなにか、固いもの同士がぶつかり合うごーん、ごーん、と言うこもった音が聞こえてきた。
じゃらじゃと喧しい金属音もする。はる子は僅かに目を開けて遥か上空の水面を見上げた。
雲の切れ目から差し込む光を背に、大きな手が降りてくる。
はる子が思い切り右手を伸ばすと、その手はなんの迷いもなく、力強く手首を掴んで一気に引っ張りあげた。
「はる子!」
水面から顔を出して息を吸い込んだのと、掠れた女性の声で名を呼ばれたのはほぼ同時だった。
長い黒髪が、日の光を反射する飛沫をまとい、軍帽の影から覗く赤い、紅い瞳がはる子を捉えて離さない。
「やまと・・・・・!」
涙が溢れて止まらない。嬉しくて嬉しくて、はる子は力一杯大和に抱きついて、大きな声をあげて泣き出した。
「ごめん、ごめんな・・・・・!」
あいた左手で、胴にしがみつくはる子を支え、落ちないようにゆっくりと抱き上げる。大和こそ、今にも泣きそうな掠れた声ではる子に謝り続けた。
「長門の奴を殴ってでも、お前を置いておくべきだった・・・・」
泣きじゃくるはる子をしっかりと抱き寄せ、大和はただ謝った。これしか思い付かなかったのだ。
だが、束の間の再開を喜ぶ間もなく、大和の立つ位置から左に七メートル程離れた場所に水柱が上がった。
轟音に耳を塞ぐはる子を宥め、大和は前方の方を睨む。遥か西方にて、大和にぶっ飛ばされたであろう怪物が、大きな口を開き毛を逆立てて唸っている。背中からは、皮膚を突き破って生えてきた紫色の主砲らしき形状の筒が、煙を吐いていた。
おおよそ、一六メートルはゆうに越えている。弩級型とみた。
座頭は、最低でも駆逐艦並の耐久性と重巡並の火力を持つものがほとんどであるとされている。
もちろん、個体によってそれらの数値はバラバラであるが、今大和と対峙しているあれは間違いなく上位のものだ。
はる子は依然として大和の上着にしがみつき、震えながら座頭を見ている。
「怖い、怖いこわい・・・・!」
だが大和ははる子の声に答える事なく、はる子を抱えたまま座頭へ向けて副砲を一発放った。
「ちーと我慢せえ。すぐに片す」
そして、大和は自身を囲うように装着した艤装、巨大な主砲を僅かに動かし、座頭目掛けて砲撃を開始したのだ。
「ぶちまわす」
まるで、すぐ近くにイカズチでも落っこちてきたのではないかと錯覚するほどの振動が、ビリビリと全身にめぐってくる。
怪物はしかし、黒煙をあげたままギョロリと背後を振り替えった。
遠いが、よく見ればなにか人影のようなものがこちらに向かって走ってくるではないか。
近付くにつれ、人影はなにか黒く大きなものをまとっている。重たそうなそれは人影を守る様に囲い、青い波を切り裂いてどんどん走ってくる。
滑るようなその姿に、はる子は釘付けであった。
巨大な砲門全てが怪物に向いている。怪物は近付いてくる人影に怖じ気付いたのか、ぶるっと一度だけ身を震わせた。
しかし、再び天高く吼えると今度はあの人影に向かって前進。海中に潜んでいた長い尾を振りながら怪物は人影に飛びかかった。
その衝撃は凄まじく、はる子の乗っていたボートはことごとくひっくり返ってしまう。
水の中に落ちたはる子は怖くて怖くてでたらめにもがいた。手を振るもなにも掴めるものが見当たらない。
数秒ほどでたらめに両手を振り回した時だった。水の中でなにか、固いもの同士がぶつかり合うごーん、ごーん、と言うこもった音が聞こえてきた。
じゃらじゃと喧しい金属音もする。はる子は僅かに目を開けて遥か上空の水面を見上げた。
雲の切れ目から差し込む光を背に、大きな手が降りてくる。
はる子が思い切り右手を伸ばすと、その手はなんの迷いもなく、力強く手首を掴んで一気に引っ張りあげた。
「はる子!」
水面から顔を出して息を吸い込んだのと、掠れた女性の声で名を呼ばれたのはほぼ同時だった。
長い黒髪が、日の光を反射する飛沫をまとい、軍帽の影から覗く赤い、紅い瞳がはる子を捉えて離さない。
「やまと・・・・・!」
涙が溢れて止まらない。嬉しくて嬉しくて、はる子は力一杯大和に抱きついて、大きな声をあげて泣き出した。
「ごめん、ごめんな・・・・・!」
あいた左手で、胴にしがみつくはる子を支え、落ちないようにゆっくりと抱き上げる。大和こそ、今にも泣きそうな掠れた声ではる子に謝り続けた。
「長門の奴を殴ってでも、お前を置いておくべきだった・・・・」
泣きじゃくるはる子をしっかりと抱き寄せ、大和はただ謝った。これしか思い付かなかったのだ。
だが、束の間の再開を喜ぶ間もなく、大和の立つ位置から左に七メートル程離れた場所に水柱が上がった。
轟音に耳を塞ぐはる子を宥め、大和は前方の方を睨む。遥か西方にて、大和にぶっ飛ばされたであろう怪物が、大きな口を開き毛を逆立てて唸っている。背中からは、皮膚を突き破って生えてきた紫色の主砲らしき形状の筒が、煙を吐いていた。
おおよそ、一六メートルはゆうに越えている。弩級型とみた。
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もちろん、個体によってそれらの数値はバラバラであるが、今大和と対峙しているあれは間違いなく上位のものだ。
はる子は依然として大和の上着にしがみつき、震えながら座頭を見ている。
「怖い、怖いこわい・・・・!」
だが大和ははる子の声に答える事なく、はる子を抱えたまま座頭へ向けて副砲を一発放った。
「ちーと我慢せえ。すぐに片す」
そして、大和は自身を囲うように装着した艤装、巨大な主砲を僅かに動かし、座頭目掛けて砲撃を開始したのだ。
「ぶちまわす」
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