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第5話 100m頂上決戦
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第5話 100m頂上決戦
1. 決勝:頂上決戦
午後3時。決勝のBGMが流れ、アナウンスが響いた
『第6レーン、川瀬涼賀。桜須学院』
「涼賀ーーー!!!」
部員たちの絶叫に近い歓声に、涼賀は歯を見せて笑い、スタンドを指差した。その先には、涼賀を見つめる拓海の姿があった。
『第9レーン、金本沙玖。桜須学院』
「沙玖ーーー!」
歓声が重なり、スタジアム全体が震える。
柔和な沙玖も、この時ばかりは戦士の顔で観客に応える。
"On your marks" —— 静寂。
"Set" —— パンッ!
8人の弾丸が解き放たれる。
最初の30メートル、涼賀のスタートは完璧だった。60m付近で他を突き放し、独走かと思われたその時、外側の9レーンから沙玖が猛烈な勢いで並びかける。同時にスタンドの声援が一気に大きくなる。
――残り20メートル。
拓海の喉が、衝動のまま動いた。
「涼賀....!!!行けるぞ!!!!」
叫びが空気を切り裂く。
その声が、確かに涼賀の耳に届いた。
「……!」
聞き覚えのある声。
懐かしい響き。
身体が自然と反応した。
ラストスパート。
風を置き去りにするように、スピードが上がる。
ゴールライン。
スタンドが一瞬、静まり返った。
そして――電光掲示板が光る。
1着:川瀬涼賀(桜須学院)10秒57
2着:金本沙玖(桜須学院)10秒60
桜須学院、ワンツーフィニッシュ。
次の瞬間、スタンドが歓声に包まれた。
涼賀はトラックに膝をつき、天に向かって咆哮した。駆け寄ってきた沙玖が涼賀を引き起こし、二人は力強く抱擁を交わす。かつてのライバル、今は最高の友。二人の笑顔が、オーロラビジョンに大きく映し出された。
2. 表彰台の輝き
レースから30分後。メインスタンド前で表彰式が行われた。
夕日に照らされた表彰台の頂点に涼賀、その隣に沙玖が並ぶ。
「第1位 川瀬涼賀、桜須学院高校 10秒57」
「第2位 金本沙玖、桜須学院高校 10秒60」
賞状とメダルを受け取った二人は、金と銀のメダルを首にかけ、誇らしげにスタンドを見上げた。
「涼賀先輩! 沙玖先輩! おめでとうございます!」
最前列で奏人が喜び、萌歌が涙を拭いながら拍手を送る。由嗣は表彰台の頂点に立った息子の姿を見て、涙を流す。大夢も、誇らしげに笑っていた。
涼賀の視線は、静かに拍手を送る拓海へと向けられた。
拓海は一瞬だけ、涼賀と目が合うと、小さく、だが力強く頷いた。
(おめでとう、涼賀。……次は俺の番だ)
声は聞こえない。だが、涼賀には確かにその言葉が届いた。
「……ありがとな、みんな」
涼賀はメダルを握りしめた。
3. 表彰後の熱気
表彰後、萌歌が涙目で2人のもとへ駆け寄る。
「すごかったよ、ほんとに……! 二人とも、最高だった!」
「……ありがとな、萌歌」
「涼賀も沙玖も、桜須の誇りだよ」
笑顔でタオルを渡しながら、
萌歌の目尻には涙が光っていた。
そこへ、大夢が駆けてくる。
「おい、涼賀! お前、やっぱ化けもんだな!」
「見てたのか」
「そりゃ見てるよ!10.57とか……漫画かよ!」
「はは、まぁちょっと頑張った」
「ちょっとどころじゃねぇだろ!」
ふたりが笑い合う中、
スタンドからゆっくりと降りてきた由嗣が近づいてきた。
「よくやったな、涼賀」
短い言葉に、全ての想いが詰まっていた。
涼賀は息を整えながらも、
父の前では素直に笑った。
「ありがとう、父さん」
「……次は全国だ。しっかり休め」
「うん」
父が涼賀の肩を軽く叩く。
その手の温もりが、これまでの努力を静かに肯定するようだった。
スタジアムにはまだ歓声が続いていた。
夕暮れの風が吹き抜け、
遠くから涼賀を見守る拓海の頬を優しく撫でた。
彼は何も言わず、ただ小さくうなずく。
――その瞬間、どこかで止まっていた時間が、ほんの少しだけ動き出した。
(……また、いつか)
涼賀は空を見上げた。
夏の空は、まるで約束を知っているかのように、眩しく笑っていた。
桜須学院、最速のワン・ツー。この熱は冷めることなく、後に行われる200m、4×100mリレー、4×400mリレー、と引き継がれていく。
1. 決勝:頂上決戦
午後3時。決勝のBGMが流れ、アナウンスが響いた
『第6レーン、川瀬涼賀。桜須学院』
「涼賀ーーー!!!」
部員たちの絶叫に近い歓声に、涼賀は歯を見せて笑い、スタンドを指差した。その先には、涼賀を見つめる拓海の姿があった。
『第9レーン、金本沙玖。桜須学院』
「沙玖ーーー!」
歓声が重なり、スタジアム全体が震える。
柔和な沙玖も、この時ばかりは戦士の顔で観客に応える。
"On your marks" —— 静寂。
"Set" —— パンッ!
8人の弾丸が解き放たれる。
最初の30メートル、涼賀のスタートは完璧だった。60m付近で他を突き放し、独走かと思われたその時、外側の9レーンから沙玖が猛烈な勢いで並びかける。同時にスタンドの声援が一気に大きくなる。
――残り20メートル。
拓海の喉が、衝動のまま動いた。
「涼賀....!!!行けるぞ!!!!」
叫びが空気を切り裂く。
その声が、確かに涼賀の耳に届いた。
「……!」
聞き覚えのある声。
懐かしい響き。
身体が自然と反応した。
ラストスパート。
風を置き去りにするように、スピードが上がる。
ゴールライン。
スタンドが一瞬、静まり返った。
そして――電光掲示板が光る。
1着:川瀬涼賀(桜須学院)10秒57
2着:金本沙玖(桜須学院)10秒60
桜須学院、ワンツーフィニッシュ。
次の瞬間、スタンドが歓声に包まれた。
涼賀はトラックに膝をつき、天に向かって咆哮した。駆け寄ってきた沙玖が涼賀を引き起こし、二人は力強く抱擁を交わす。かつてのライバル、今は最高の友。二人の笑顔が、オーロラビジョンに大きく映し出された。
2. 表彰台の輝き
レースから30分後。メインスタンド前で表彰式が行われた。
夕日に照らされた表彰台の頂点に涼賀、その隣に沙玖が並ぶ。
「第1位 川瀬涼賀、桜須学院高校 10秒57」
「第2位 金本沙玖、桜須学院高校 10秒60」
賞状とメダルを受け取った二人は、金と銀のメダルを首にかけ、誇らしげにスタンドを見上げた。
「涼賀先輩! 沙玖先輩! おめでとうございます!」
最前列で奏人が喜び、萌歌が涙を拭いながら拍手を送る。由嗣は表彰台の頂点に立った息子の姿を見て、涙を流す。大夢も、誇らしげに笑っていた。
涼賀の視線は、静かに拍手を送る拓海へと向けられた。
拓海は一瞬だけ、涼賀と目が合うと、小さく、だが力強く頷いた。
(おめでとう、涼賀。……次は俺の番だ)
声は聞こえない。だが、涼賀には確かにその言葉が届いた。
「……ありがとな、みんな」
涼賀はメダルを握りしめた。
3. 表彰後の熱気
表彰後、萌歌が涙目で2人のもとへ駆け寄る。
「すごかったよ、ほんとに……! 二人とも、最高だった!」
「……ありがとな、萌歌」
「涼賀も沙玖も、桜須の誇りだよ」
笑顔でタオルを渡しながら、
萌歌の目尻には涙が光っていた。
そこへ、大夢が駆けてくる。
「おい、涼賀! お前、やっぱ化けもんだな!」
「見てたのか」
「そりゃ見てるよ!10.57とか……漫画かよ!」
「はは、まぁちょっと頑張った」
「ちょっとどころじゃねぇだろ!」
ふたりが笑い合う中、
スタンドからゆっくりと降りてきた由嗣が近づいてきた。
「よくやったな、涼賀」
短い言葉に、全ての想いが詰まっていた。
涼賀は息を整えながらも、
父の前では素直に笑った。
「ありがとう、父さん」
「……次は全国だ。しっかり休め」
「うん」
父が涼賀の肩を軽く叩く。
その手の温もりが、これまでの努力を静かに肯定するようだった。
スタジアムにはまだ歓声が続いていた。
夕暮れの風が吹き抜け、
遠くから涼賀を見守る拓海の頬を優しく撫でた。
彼は何も言わず、ただ小さくうなずく。
――その瞬間、どこかで止まっていた時間が、ほんの少しだけ動き出した。
(……また、いつか)
涼賀は空を見上げた。
夏の空は、まるで約束を知っているかのように、眩しく笑っていた。
桜須学院、最速のワン・ツー。この熱は冷めることなく、後に行われる200m、4×100mリレー、4×400mリレー、と引き継がれていく。
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