プレイヤーズゲーム 〜生徒たちの挑戦〜

モンモン

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第7話 最強の証明

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1. 嵐の前の静寂

大会2日目、午後。競技場の熱気は、最終種目である男子4×100mリレー決勝を前に、飽和状態に達していた。
招集所のテント下。リレーメンバーは、無駄な会話を削ぎ落とし、それぞれのルーティンに入っていた。

1走・金本沙玖、2走・堀江絢太、3走・青山悠真、4走・川瀬涼賀。

全員が3年生。予選・準決を繋いだ後輩たちの想い、そして学校全体の期待を背負った、正真正銘の「最強オーダー」だ。

「涼賀。……行こうか」

沙玖の穏やかな芯の通った声に、涼賀は短く「ああ」と応えた。
萌歌から手渡されたスポーツドリンクを飲み干し、4人はそれぞれの持ち場へと散っていく。涼賀は第4コーナーの先に立ち、遠くのスタートラインに立つ沙玖の姿をじっと見据えた。

2. 静寂の観戦者

スタンドには、桜須学院陸上部の集団に混じり、大夢、由嗣、そして拓海が並んでいた。
昨日から一言も発さず、彫像のように動かない拓海の横で、奏人が緊張に耐えかねて声を漏らす。

「いよいよですね……」

「この4人の走力なら余程のことがない限り負けない。……あとは、バトンの『流れ』だけ」

大夢が冷静に分析する中、拓海はただ、アンカー地点で待機する涼賀の背中を、射抜くような鋭い視線で見つめ続けていた。

3. 決勝:絆の疾走

2日目の最終種目となる男子4×100mリレー決勝

会場は熱気に包まれている中、決勝のBGMが流れ、チーム紹介のアナウンスが流れる。

「第5レーン、桜須学院。金本沙玖、堀江絢太、青山悠真、川瀬涼賀」

「桜須!!!!!」

絶叫に近い部員たちの歓声。
4人は紳士の顔で応えた。

"On your marks" —— 静寂。風が止まる。

"Set" —— パンッ!

号砲。1走の沙玖が、低く鋭い飛び出しを見せる。しなやかなフォームでコーナーを駆け抜け、他校を圧倒。バトンは絢太、最も距離が長い2走、必死に駆け抜ける。そして悠真へと、完璧な精度で渡っていく。
悠真が猛烈な加速で第4コーナーを回り、アンカー・涼賀へ迫る。

「いけー!!」

悠真の叫びに合わせ、涼賀が左腕を後ろへ突き出し、爆発的な加速を開始した。 

ガシッ。

手のひらに、仲間の体温を帯びたバトンが吸い込まれる。
しかし、他校のアンカーも必死の猛追を見せ、差はわずか。直線100m、極限の緊張感がトラックを支配した。
残り50m。
それまで石のように沈黙していた拓海が、突然、椅子を蹴るようにして立ち上がった。
腹の底から、絞り出すような絶叫が競技場に響き渡る。

「涼賀!!!!! ラスト!!!!」

その声は、喧騒を突き抜け、真っ直ぐに涼賀の耳に届いた。

(……拓海!?)

親友の、自分を呼び覚ますような雄叫び。
その瞬間、涼賀の脚に爆発的なエネルギーが充填された。ピッチが一段階上がり、地面を叩く音が激しさを増す。
涼賀は他を圧倒する加速を見せ、2位以下を引き離してフィニッシュラインを突き抜けた。

4. 静かなる新記録

ゴールした涼賀は、叫ぶことはなかった。
荒い呼吸を整えながら、電光掲示板をじっと見つめる。

『1着 桜須学院 40.13』

「……出たな」

涼賀は安堵し、深く息を吐いた。大騒ぎするのではなく、仲間と共に歴史を塗り替えた実感を、静かに噛み締めていた。
コースを空けるため、沙玖たちが待つエリアへとゆっくり歩いていく。ルール上、コース内で抱き合うことはできないが、集まった4人は互いの健闘を称え合い、固い抱擁を交わした。

「涼賀、すごかった。最後、さらに加速したね」

沙玖の言葉に、涼賀はスタンドのあの一点を見上げた。
そこには、叫び終えて肩で息をする拓海の姿があった。
拓海は、涼賀が自分を見たことに気づくと、少し照れくさそうに、しかし誇らしげに顎を引いて頷いた。

(届いたよ、拓海)

涼賀は腕を高く掲げ、自分たちを信じてくれたスタンドへ、そして最高の親友へとその勝利を捧げた。
その熱は最終日まで続くことになる。
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