車椅子カップルの物語

suna

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会える時間

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泰と会える日が近づいてきた。
その日が近づく度に私の心は弾みうれしさが込み上げてきた。
会う日を楽しく過ごすために会う1週間くらい前から体の調子を整えた。これは、会うためには絶対にしておかなければいけない大切な作業だ。
毎日、24時間365日休む暇もなく痛み続ける体。痛みが酷いときは起き上がることすらできない。そう、私は原因不明の痛みと闘っているのだ。
月に1、2回会えるその日を思いっきり楽しく過ごすためにその作業は欠かせないものなのだ。
いつもは病院の面会室で話をしたり写真を撮ったりとゆっくりとした時間を2人は過ごしていた。
「デートをしたい!」そんな気持ちが2人に芽生えた。
「デート」と言っても2人だけで何処かに行けれるはずはなく、親に連れて行ってもらうかなにかしなければデートなんて簡単にできるわけがない。
毎回、泰が面会に来る度に連れて来てくれる泰の母親にも相談をして、病院の近くの100円ショップにデートと言う名の「おでかけ」を計画した。
その日の為に、私は欠かせない作業をがんばった。
当日、体調は多少の痛みはあるけれど比較的万全な状態だった。
泰の母親の車に乗って近くの100円ショップに向かった。
100円ショップの店内に車椅子が2台。
人からの視線もあったが、車椅子に乗っているだけで普通の人となんら変わらない2人なのだ。と思い直してショッピングを楽しんだ。店内を端から端まで、気になる商品を見つけては泰の母親と談笑しながら、泰は恥ずかしそうにその様子を見ていた。
ぬいぐるみが大好きな私は、ぬいぐるみのコーナーで「このうさぎちゃんとホクロウさんかわいいよね~。ふわふわしてるよ~」と言ってぬいぐるみを抱きかかえる。泰の母親は、「もうすぐクリスマスだからサンタさんが来てくれるかもしれないね。ね、泰」と。
私は、「サンタさんが来てくれると良いな~」と話していた。
数点、気になるものを見つけ会計をしようとすると、泰の母親が一緒に買ってくれた。なので、私はお礼になにかを作ってプレゼントしたいな、と思った。
短い時間だったけど、初めて外に出て楽しい時間を過ごすことができて私はとてもうれしかった。
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