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三つの手紙と五つの嘘
十章『その怒りは誰のもの――?』
しおりを挟む「萌花さん、怒ったの?可愛い人ね。浮かれてるんだから。ほんとに選ばれると思ってるの?」
「脇役なのよ、あなたも。私も」
「雪乃さんの事をわかってるフリしてさ、あなた、自分自身の事もわかってないんじゃない?」
違う、そうじゃない。奏先輩の言葉を心の中で必死に否定する。
そう、分かっていた。わたしは分かっていた。
先輩が、わたしなんかと……ずっと一緒に、いてくれるわけなんか、ない。
今日で『ゲームはおしまい』いつそう言われるのか……怖くて、怖くてたまらない。
ポケットの中のロザリオに勇気をもらおうと、強く握りしめる。
でも、今はわたしの事なんて、どうでもよかった。
先輩のことを知ろうともしないくせに――それだけが許せなかった。
ただその一心で体の震えを無理やり押し込めた。
「謝って、ください……先輩に」
「雪乃先輩が、どんな思いでお話を聞いていたか」
「奏さんの事を、真剣に、考えていたか、わかりますか?」
「あなたは……先輩の事を、何もわかってない……」
わたしのその言葉に、テーブルのカップが跳ねる勢いで、奏先輩も立ちあがった。
「恋人ごっこはやめなさいって、そう言ってるのよ」
わたしを見据えるその瞳に、魂まで焼かれる気がした。
これがこの人の本当の心――
今にも逃げ出したくなるくらい怖いけれど、雪乃先輩の心をどうしても知ってほしい。
足が震え、指先が冷えていくのがわかるのに、自分の唇がゆっくりと動き出していた。
これが一番いいやり方なんて思ってない。
けれど、どうしても言いたかった。今ここで言わなければいけないと思った。
「謝って、ください。わたしはそう言いました」
震える拳を握りしめた。
「奏さんが双子の影じゃなくて、一人の人として見られたいように」
「雪乃先輩だって、普通に学校に来て授業に出て、部活やって、お友達と遊んで――」
「普通に恋愛したいだけなんです」
最後の一言は、自分自身に強く言い聞かせるものだった。
「あなたなら雪乃先輩のこと、一番わかるかもしれないのに」
「どうして、それが……」
わたしが最後まで言い終わる前に、奏さんの手が振り下ろされた。
それは、奏さん自身に向けられたような、衝動的な動きだった。
わたしに当てるつもりがなかった事だけは、はっきりとわかる。
指先が頬をかすめ、熱がじんわりと広がった――
バチンと音を立て、鮮やかなネイルチップが、夕立にかかる虹のように、跳ねた。
わたしはそれを綺麗だな、と人ごとのように眺める。
それから一瞬遅れてやってきた痛みに、悲鳴をあげてしまった。
けれど、わたしはその痛みに密かな誇りを感じていた。
それが自分のためなのか、先輩のためなのか、
それとも他の誰かのためなのかさえ、曖昧なままに。
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