クラス M

東門 大

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第二章 森 聖喜の場合

第11話 散歩

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 少女は首輪を柱から外した。

 僕は立ち上がり、急いで逃げようとした。よく分からない状況だが、このままいるわけにはいかないのだ。

「おすわり」

 後ろから少女の声が聞こえると、また電気が走った。僕は衝撃と痛みでその場に膝をついた。2回目は1回目のそれよりもさらに強く感じた。

「ダメでしょう勝手に立ったり、歩いたりしては……」

 そう言うと頭をポンポンと叩いた。

「今度やったらお仕置きだよ」

 十歳くらいの女の子に、飼い犬のように扱われた僕の心はズタズタになりそうだったが、電撃のことを考えると、逆らうことはできなかった。

「ママ行ってくるね」

 少女は、ソファーの横にあった細い木の棒と何かが入ったレジ袋を持って、また僕の所へ来た。

「イブ行くよ」

 棒を持った少女と電気ショック、僕を従わせるにはそれだけで十分だった。僕は仕方なく犬のように四つん這いになって、少女についていった。

 本当に外に出るのだろうか? まさかそんなことはしないだろう。そう思っていたら少女は当たり前のように、玄関ドアを開けた。

 いくら何でもこんな姿で外へ出るわけにはいかなかった。僕は犬ではないのだ。ドアの前で踏ん張り、声は出せないので、少女に何度も頭を下げた。

 バシッ!!  少女は棒を振り上げ、僕の背中を叩いた。

「うっく」

 あまりの痛さに悶絶し、声を発したが、電気はこなかった。

「わがままするとお仕置きですよ」

 こうなると、少女に従うしかなかった。

 ぼくは真っ赤になった背中を摩ることもできず、ひりひりしたまま四つん這いで外へ出た。同じような外観の家が立ち並ぶ団地だった。早朝だというのに、数名の人が散歩をしているのが見えた。

「おはようございます」

 庭の手入れをしていた隣のおばあさんに、少女は明るく挨拶した。

「おはよう、サトルちゃん、またワンちゃんが替わったのね」

「そう、でも名前はイブ」

 驚くことに、そのおばあさんも僕を見て表情一つ変えず、普通に会話をしたのだ。

 その後も何人かすれ違ったが、だれも僕を見ても驚かず、まるでただの日常風景として受け入れているようだった。僕は恥ずかしくてたまらないのに……
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