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第三章 ジェンダー調査官からの報告

第17話 最後の聞き取り

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 聖喜は性依存症と判断され、病院送りが決定したため、私に預けられるという希望は絶たれた。しかし、送致する前に二時間だけ聖喜との面談が許された。

 取調室のような病院の待合室に座る聖喜は、拘束衣をつけられていた。そうしないと、性的衝動を抑え切れないのだという。私は聖喜の前に座り、こうなってしまった経緯を尋ねた。これはその時の記録をもとに作成したものである。



 輝の僕へのイジメは、毎日続いた。ーーー

「なあ、イブ。今日は私たちの前でオナニーして見せろよ。昨日射精しただろう? あの時のお前の顔、もう一回見たいんだよ」

 僕はそれまでオナニーなんてしたことがなかった。それに昨日はキモいとか言っておいて、次の日はオナニーを強要するなんて、酷すぎる。

 僕は首を振って断った。でも叩かれ、脅迫されて、仕方なくオナニーすることに同意した。

「ほら、手の拘束も外してやったんだから、早く自分でやりな」

「まさかやったことないなんて言わないよな」

 戸惑う僕に催促とも脅迫とも言える罵声がとんだ

 僕は自分のペニスを手で掴んで、上下に動かしてみた。

「おっ、始めたぞ。いいぞ、もっと動かせ」

「気持ちいいのか? 声出していいんだぞ、イブ」

 女子四人の前での強制オナニーは、僕の心を凹ませた。


 そして、要求は日毎にエスカレートしていった。

「昨日のやれよ。今日は動画に撮ってやるから……いい顔するんだぞ」

「昨日お前が勝手に射精するから、きちんと撮れなかっただろう。いいか、今日は出そうになったら、『わん』て吠えるんだぞ」

 友達も最初の四人だけでなく、新しい子が何人も来ることがあった。中にはショックを受けてしまう子もいて、その時は僕のせいにして、叩かれたり蹴られたりもした。

 輝達は、僕に同じようなことをさせると飽きるのか、色々な方法でいじめてきた。その中で特に覚えているのが、お尻にウインナーを入れられたことだ。

「今日はこれをケツの穴に入れてやるよ」

 輝はそう言うと、僕を四つん這いにして、僕の尻尾を外し、肛門にジャンボフランクを入れてきた。

 僕は初めての感覚に逆らえず、言われるままに受け入れた。

「このまま立ってオナニーしな」

 立ち上がった僕は、いつものようにオナニーを始めた。女子達には大いに受けた。

「前と後ろにウインナーって、アキラ、マジ、サイコー」

 大笑いの中、オナニーしていると、これまで恥ずかしいと思っていただけの僕の感情に変化が起きた。確かに恥ずかしのは変わらないんだけど、見られて興奮する。そしてそこでオナニーすることが気持ちのいいこと、快感に思えてきた。つまり嫌ではなくなったんだ。

 朝の散歩で大勢に見られることや、うんこしているのを見られるのも、快感に感じた。人前で全裸でいることが楽しくなって、興奮した。でも自分がそんなになってしまったことへの罪悪感は常にあった。自分で自分が変態であると自覚していた。そしてオナニーは止められなくなった。一日の回数も増えていき、三、四回することはざらにあった。

 コンテストの三日前、輝にそのことがバレた。

「イブ。あんた最近精子の量少なくない? 私達がいない時、勝手にオナニーしてるんでしょう。許可なくやってたら、しばらくオナニーできなくしてやるからね」

 僕は首を振って、否定した。

「あーあ、素直に認めたら許してやろうと思ったけど、そんなんだとダメだね。全然ダメ! 飼い犬失格! お前のことはね、昼間もカメラで監視されてんだよ。今日は午前と午後、2回もやったんだろ? だから出ないよな。ちょこっとしか」

 そして三日間、オナニー禁止の命令が出され、おかしな器具がペニスにつけられた。家族にも「イブのオナニー癖を無くすため」と説明していた。

 コンテスト当日、その器具を外された僕は、すぐにでもオナニーしたい衝動に駆られた。ステージに立つとその衝動はますます膨らんだ。見ず知らずの人に、犬になった僕を見られている。それだけで興奮し、自分を抑えられなくなっていった。

 最後に「ちんちん」した時は、もうオナニーのことしか頭になかった。その日は指も使えたので、輝にジャンボフランクをアナルに入れられたことを思い出して、アナルも刺激しながらオナニーをした。その後は、ああ、思い出しただけで……。



「おばさん、この拘束具はずしてください。僕、もう……もう我慢できない」



 最後は立ち上がって、私に詰め寄ってきた。哀れだったが、仕方のない結末を私も受け入れざるを得なかった。あの状態ではさすがに私も責任は持てない。然るべき施設での治療を望んだ。

 小学校で児童会長をやり、「全裸でステージに立てるか」と大見栄を切って、評定会をボイコットした男子は、今や性欲の虜となり、羞恥心のかけらも無くなってしまった。人は何とでも変われるものである。







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