ひきこもりがいくぅ

東門 大

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フロロローグ 拉致

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 十九才の夏、僕は宇宙人に誘拐された。


 気づいた時は真っ白なベッドの上にいた。

 本当なら怖くてたまらない状況だろうが、不思議と恐怖心はなかった。むしろ安堵感と開放感を感じていた。

 これまで閉塞感いっぱいの引きこもり生活を続けていたからなのだろうか。

 今日から親に気を遣ったり、不登校への後ろめたさを感じたりする必要がないのだ。

 ベッドから起き上がり、辺りを見回すと、そこは真っ白い壁で囲まれた大きな部屋で、ベッド以外は何もなかった。

 この部屋では、頭に思い描くだけで、自分が欲しい物をすぐに手に入れることができた。水、洗面台、ゲーム、スマホ……誰とも繋がらなかったが。そしてさらには食べたい物も……僕は鰻丼を食べた。

 これらはスッと現れ、数分使わずにいると、いつの間にか消えた。どこからか転送されてくるようだ。

 ただ、服は現れなかった。全裸の僕をどこかで観察しているのかもしれない。

 便意をもよおすと、トイレが現れた。宇宙人がどこかで見ているのかもしれないと思ったが、かまわず排泄した。

 ここでは時間の感覚はなかったが、おそらく地球と同じ周期で明るくなったり暗くなったりした。どこを見回してもライトと思えるものはなかったが、部屋全体で調光がされていた。

 しかしこんな生活も3日も続くと飽きてくる。

「ひま……。誰かとつながりたい。チャットでもなんでもいいから」

「チャットはさせられない。私ではダメか」

 脳内に声が響いた。ぶっきらぼうで、あまり好きになれないーーそして、なんとなく聞き覚えのある声。

 その声に一瞬驚いたが、テレパシーで会話するくらいの技術は持っていて当然かと、会話を続けた。

「だれかと話したい」

「仲間が欲しいのか?  どんな地球人がいい」

 僕は考えた。男もいいけどやっぱり女子か。それもかわいい子。

「かわいい子とは、どんな子だ?」

 また声がした。言葉にしなくても、考えが伝わるようだ。

 すぐに浮かんだのは、二次元アイドルだった。
 
 僕はすぐに首を横に振った。いや、ダメだ。あんなのがリアルに出てくるなんて……。

 実際想像すると恐ろしい。それに、彼らの技術なら実現してしまいそうで怖い。

 では、リアルでかわいい子は……僕は頭に、色々な子を思い浮かべた。

「よく理解した」

 僕が選択し確定する前に、声がした。

 だが、これまでのとは違い、女の子はすぐには現れなかった。

 部屋も薄暗くなってきたので、その日は風呂に入って寝た。
 
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