スキル:自販機

あごにくまるたろう

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2人の午後(オーノ君)

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コナソと別れた後で、黙々と解体作業を繰り返してた。ここで成果を出せたら、解体職員として雇ってもらえるだろうか。そしたら安定した収入で、まだ小さい奴らにたくさん飯を食わせてやれる。真剣に作業を覚えるんだ。雇ってもらえないとしても、まだランクアップもしてないのに、解体を覚えるチャンスをもらえるなんて。ついてるぜ。

オスギも同じ気持ちだろう。真剣に解体作業をしている。オレもオスギも、ものごごろついた時には、もう神父様と暮らしていた。本当の家族のことなんてわかんないけど、神父様も、オスギも、チビたちも、オレにとっては大切な家族なんだ。神父様が死んじまって、あっという間に教会がボロくなって、前みたいな暮らしはできなくなったけど、守りたいんだ。大切な家族を。神父様と過ごしたあの場所を。

「おーい、ガキども。いまやってる解体が終わったら飯にするぞ。終わり次第こっちに来いよぉ。」

顔色がだいぶ良くなった職員が顔を出して呼びかける。

飯!?飯がもらえるのか!?普通だったら、飯なんんて分け与えないよな?オスギと顔を見合わせて、とりあえず、言われたまま外に出る。

休憩のために、たくさんの職員が解体場の外にいた。

「よぉ、来たな。この姉ちゃんがよぉ、肉がたくさんあるから、昼飯にみんなで焼いて食べようって言ってくれてよぉ。」

「「(に、肉…!!ゴクリッ!!)」」

ユリの方をみると、少し落ち込んでいるように見える。もしかして、本当は肉を分けるのが嫌なのに、無理してるのかな。心配になり声をかける。

「あの、お肉…ほんとにいいんですか?」

「え?うん、みんなで食べようね。じゃあ私は薪になるような枝を拾ってきて、ここで火の準備をしますね?」

オレに返答して、周りの職員にも声をかける。

「いやいやいや、ギルドの中にキッチンがあるからよ。薪もギルドにもあるし、店でも売ってるしよぅ。」

「え?え?火おこししないんですか?」

みるみる顔を赤らめて恥じらうユリさん。か、かわいい。顔色のだいぶ良くなった職員が俺たちに耳打ちする。

「この姉ちゃん、さっきもパンや調味料を、肉と物々交換しようとしててな。店で物々交換なんて、どこの田舎から出てきたんだか。オレらで必死に止めたんだ。」

「ちょっ、バラさないでください~っ!!」

「ん、ちょっと待て。お前らちょっと臭くね?いや、ブンクスやフランクのがくせぇけどよぉ。」

虹の輪の2人に近づいて、鼻をふんふん鳴らす。急に名指しされたブンクスとフランクの大男コンビが声を荒げる。

「おおい!!くせぇとは失礼だな!!」
「そうだぞ!!オメェもクセェだろうがっ!!……ん、明るいところで見ると、確かに、なんか汚れてるか?まぁブンクスのが汚ねぇけどよ。」
「あぁん!?」

「寝る前には、拭いてるけど。神父様に教わったから…。」

「神父ぅ?あ、おまえら虹の輪かぁ?解体場は衛生第一なんだ。こんな汚ねぇ男ばっかりいるから信じられねぇかもしれねぇが。まぁ、元はと言えば、オレが無理矢理連れ込んだんだけどな。リーダーにバレる前に、洗っちまおうぜぇ。」

「いやいや、オレここにいるぜ。」
「まだバレてない、バレてない。」

顔色の悪い男は、虹の輪の背中を押しながら、解体場リーダーのノブの前を通り過ぎる。

「解体場は汚れるからな、洗い場が充実してるんだ。ほれ、こんなところからでも水がでるんだぜ。だれかダライに湯をはってきてくれよぉ。」

言いながら、虹の輪のメンバーに水をかける。

「わぷぷっ、つめてぇ!!」

「すぐ湯がくるからよ、下洗いしとこうぜ。」

「あ、それなら私が洗いましょうか?よく弟を、お風呂に入れてますから。」

「「えっ!!」」

「じゃあ頼む。オレはイラねぇ服でも見繕ってくるよぉ。ギルドの訓練場にたくさんあったはずだ。オメェら、今着てる服は捨てちまっていいだろぅ?ボロだからよぉ。」

「「ちょっとまって!!」」

「ん?大事な服だったか?」

「いや…ユリさんに洗ってもらうのは、その、俺たち汚いし。」

「えっ、私…田舎者だし、買物もできなかったけど、洗うのくらいなら、できるかなって思ったんだけど…やっぱり私なんかじゃ、ダメかな?」

目を潤ませて、悲しそうに問いかけるユリ。

「「よぉっ!!よぉろしくお願いしまぁぁすっ!!」」

オーノとオスギ、揃って上着を脱ぎ捨てた。

「なぁなぁ、肉をここで焼くのもいいんじゃねぇか?よさそうな鉄板みつけてきたんだ。じつはオレ火の玉程度の魔法が使えるんだよ。」

男が、大きな鉄板を抱えながら、解体場の中からでてきた。

「オメェそんなことできたのかよ。そいつは丁度いいな。魔法の火なら、煙も出ないしな。じゃあ、オレは肉でも取ってくるか。嬢ちゃん、さっき言ってたオーク肉もらうぜ。」

「はぁーい。」

洗いながらユリは返事をする。

パンや調味料を買いに行ったり、子供を洗ったり、肉の用意をしたり、鉄板を置くためにブロックを積んだり、各々が働き出している。

そんな事いっさいを遮断して、自分の背中に集中するオーノ。

ユリの女性らしい細く柔らかな指が、自分の背中を撫でている。

「~っ!!」

俺たちに構うのなんて、ギルド長のワボゥとか、ムキムキの冒険者くらいだ。教会では、チビ達のことを撫でてやる側で、女性から、こんなふうに撫で回された記憶はない。恥ずかしいけど……嬉しい、もっと触っていてほしい。

「は~い、次の子。背中洗うよ~。」

「あっ…。」

ユリはオスギの背中を洗い始めてしまった。名残惜しさを吹き飛ばすように、わしゃわしゃと髪を洗う。

解体場の影から、男たちが湯を持ってきた。

「そらぁ、湯を持ってきたぞぉ。」

ドスンドスンと、湯がたっぷりとはいったタライが2つ置かれた。

「ありがとうございます、じゃあズボンも脱いじゃおうね。」

「「え!?」」

笑顔でオスギのズボンを下げるユリ。ユリは気遣いでズボンを残していたのではない。単に身体の上から順に、ざっと汚れを落としていただけだ。そして今はズボンという汚れ物を取る順番がまわってきただけだ。オスギはお尻を犠牲にして、必死にズボンを死守している。

「ん?どうしたの?お湯入ろう?」

「ひゃあぁあ!!あの!!あとは自分でぇ!!」

オーノは止めに入ることも、逃げ出すこともできずに、その場で固まって、オスギの最後を目撃してしまう。…はずだった。

「おーい嬢ちゃん!!肉の部位を覚えてるかテストしてやるよ。こっち来なぁ。」

解体場の中から、神のひと声が聞こえた。

「えぇ、切り出した後のお肉は、難しいかも。じゃあ、ちょっと行ってくるね。」

「はひぃ!!」

「だっはっは!!こいつらの続きは俺たちがやっとくよ。」

「ありがとう。」

湯を持ってきた男が豪快に笑うと、ユリは解体場の中へと消えていった。

「よぉ、廃棄予定の訓練着を見繕ってきたぜぇ。でかいけどよぉ…ん?なんだ?なんの勝負だ?」

顔色もだいぶ良くなった職員は、服の入った大袋を担いで戻ったが、誰もその問いかけは聞こえていなかった。目の前には、競うように素早く身体を洗う虹の輪の2人。

—ゴシゴシゴシ!!

「早く、お湯かけてっ!!」

「だっはっは!!ほれ。」

—ザパァン!!

「こっちも!!はやく!!」

—ザパァン!!

「もう綺麗になってる!?」

「だっはっは。だいぶ綺麗だ。」

「よしっ。あっ!!それ服ですか!?」

「おぉ、そうだけどよぉ…。」

「「あの、早く着させてくださいっ!!」」

「ゆっくり浸かっていいんだぜぇ?気持ち良くなかったかぁ?」

「「気持ちよかったです!!でも、もういいんです!!」」

「だっはっは。オレだったら見せつけたいけどなぁ。」

「「なにいってるんだっ!!」」

顔色もだいぶ良くなった職員は「服取りに行ってる間に、すげぇ仲良くなってるじゃん」と思った。
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