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教会に帰ろう
しおりを挟む「…という具合でで過ごしたぞ。」
「ふーん。なんか楽しそうだね。今度僕もやってみたいなぁ。新しい服も似合ってるよ。2人ともカッコよくなったね。」
古着とはいえ、それまで着ていたボロに比べたら、だいぶ綺麗だし、訓練着なので生地がしっかりしている。
「着替え用に、いっぱいもらったんだ。」
そういって地面に置いた、子供が持つには重そうな袋を、パンパンと叩いた。
「僕の収納に入れてあげるよ。一緒に教会に帰ろう。」
返事を待たずに、袋の下に地面型ゴミ箱を展開して収納する。
「悪いな。」
「サンキュ。」
虹の輪の2人は、もう見慣れたようで驚かない。
「コナソ行きましょう。」
「はーい。」
倉庫に先導されて、肉を収納する。そこに解体場リーダーのノブさんがやってきた。
「よぅ嬢ちゃん。買取の精算をするぜ。あまりに量が多いから紙に書いてきた。金額を確認してくれよ?えーと、皮と毛皮と睾丸とツノと…。」
品名と金額を伝えられて、最後には多量の金貨を入った袋をユリ姉ちゃんは両手で受け取った。
「はい、これが総額だ。すげぇ額になったなぁ…プブゥッ!!」
「へ?いま、笑いましたか?笑いましたよねぇ!?」
「いや、すまねぇ。だってよぉ、買物もろくにできなかった嬢ちゃんが、こんなに金を持っちまってよぉ。プククッ。」
「もう~!!」
なぜか顔を赤くして、ノブにくってかかるユリねぇちゃん。よくわかんないけど、いつでも年上で姉のユリ姉ちゃんが、年下として扱われているのが新鮮だ。くやしい気持ちもあるけど、しっかりと見届けておかないと。
肉の回収と精算をすませ、外の自販機の値段を設定をしてから、教会へと帰る。
「みなさん、ありがとうございました!」
「「「(姉が)お世話になりましたっ!」」」
♦︎
教会では、仕事を終えた下の子達が待っていた。
「おかえり」
「遅かったね」
「おねぇちゃん誰ぇ?」
「…コナソの姉のユリよ。よろしくね。」
子供は美人が好きだ。子供達はわらわらとユリ姉ちゃんを囲む。
食卓には、テーブルなどなく、床に皿を置いている。皿の上には、下の子達が今日の稼ぎで買ったであろう、腐りかけの粗末な果物が置かれていた。
僕は収納から、今日のパンと服の袋を取り出した。
「わ、その大きい袋なぁに?ごはん?」
「悪りぃな、これは服だ。寝るときに着替えような。」
「わーい!服だぁ。」
僕は、お皿の上に、収納していた肉の串焼きや、フルーツやチーズを乗せた。
「なっ、おいコナソ!!これはオマエのだろっ!!」
僕は静かに首をふって、力強くいった。
「それ食べて待ってて!!僕はこんなもんじゃないよ!!」
そういってウインドウを開き、ポチポチと作業を始めるが、はたから見ると、急に意気込んだくせに、じっと座っているだけなので、訳がわからない。
「まぁまぁ、コナソは何かしてるみたいだから、みんな先に食べましょう。」
「ユリさんとコナソは?」
「まだ、広場で販売している仲間もいるし、あとで合流してから食べるわ。」
「…そうか。」
「ねぇねぇ!!お肉食べていいの!?」
「フルーツおいしそう!!」
「そうだな。みんなでお祈りしようか。」
手を握り、スッと目を瞑り祈りを捧げる。神様に祈りを捧げるように教わったが、オーノは神父様が亡くなってからは、神父様に語りかけている。
祈りが終わると、みんなキラキラして目で目配せをする。もういい?もういい?といった具合に確認し合っている。
「「「いただきまーす!!」」」
みんな、イチバンに肉を手に取りほおばる。ニッコニコの笑顔で肉を噛みしめている。
オーノとオスギは目配せをして、自分の串焼きの串を外して、肉を小分けにする。
「ほら、これも食いな。俺たちは昼に貰って食べたんだ。」
「……。」
ユリは、そのやりとりを無言で見つめる。そして、ボロボロの室内の傷み具合に、黙って視線を送る。
「できたぁ!!」
コナソが食事中にも関わらず、大きな声で話しかけてくる。
「ねぇ、ここでいい?この隅に、自販機置いていい?」
「俺たちには、銅貨もあんまりだせねぇよ?」
許可などおりていないのに、コナソは食卓の扉から遠いところに、自販機をひとつ設置した。それは王家の紋章が入っていない、村で使っているシンプルな自販機だ。
「お金は必要ないよ。みんな、食事中に申し訳ないけど、飲み物を取りに来てよ。」
飲み物ときいて、ほぼ初めての味の濃い料理、しかも肉を食べたので、みんな喉の渇きに気がついた。ゾロゾロと自販機に並ぶ。
オーノ君が小さい子を持ち上げながら、ひとりづつに自分で自販機のボタンを押させる。小さい子は、持ち上げられるだけでキャッキャと喜び、ボタンを押すのも楽しいようで、笑顔が絶えない。食事中に時間をとらせるのもよくないので、とりあえず全員お水のボタンを押させる。
ここで問題が発覚。小さい子は自分でペットボトルの蓋を開けられないようだ。
「問題ねぇよ。年上組であけてやるさ。」
オーノ君は言うけど、改善できないかなぁ。
全員に、お水が行き渡って、食事が再開されるので、僕と姉は、おいとますることにする。
「自販機のラインナップは栄養価の高そうな、スペシャルセレクトだから、あとでゆっくり試してみてね。」
「ありがとな。正直、かなり助かる。お前にばっかり負担をかけちまってるけど。」
「ううん。自販機って使えば使うほど、スキルがレベルアップするんだ。だから、たくさん飲んでもらえると、僕も嬉しいんだ。」
オーノ君は、困ったような笑顔を浮かべる。年下のコナソの負担になりたいわけじゃないが、この好意を受け入れないと暮らしていけないこともわかっている。
「ちょっと畑を見てから帰るね。明日も朝からお邪魔するよ。」
「おぅ。また採取に行くか?」
「ううん。明日は畑を手入れしたいんだ。実家が農家のプライドがあるからね。」
「ありがとな。また明日。」
「うん、また明日。」
「ユ、ユリさんも…今日はありがとうございました。また…。」
「うん、またね。」
顔を赤らめるオーノ君に、イラッとする気持ちを抱いてしまう。
「はい、扉しめて、しめて。またねぇ。」
「わっ、ちょっ…。」
オーノ君を詰め込んで、バタンッと扉を閉めると、教会の裏手にまわる。
「僕、明日ここを耕したいんだけど、姉ちゃんも一緒にやってくれない?」
農家のプライドなんて言ったものの、6歳児の僕には、畑を耕すのは難しい。
「いいわよ。お城で農具を借りれるか、聞いてみましょう?」
「道案内とか言って、男手も借りれないかなぁ?」
「うーん。それはちょっと…。」
裏庭の状態は最悪なので、特に詳しく見ることもなく、パッと見て、すぐに帰路につく。
♦︎
中央広場でコルネコさんと合流すると泣きつかれた。
「絶対にしまってぇ!!盗まれちゃうからぁ!!田舎とは違うんですよぉ!!」
「ちょ、抱き付かないでよぉっ!!」
「出し入れ自由なの知ってるんですからねぇ!!とにかくしまってぇ!!なに面倒くさがってるんですかぁ!?」
「うぅ…。」
僕はしぶしぶ自販機をしまった。
「ねぇねぇ、夕飯どうしようか?まだ、あいてるお店あるかなぁ?」
ユリ姉ちゃんは、自販機のことなどお構いなしだ。
「うーん、この時間だと、若い女の子を連れて行きたくはないですが。馴染みの店がありますので、そこに行きましょうか。」
「わーい。」
大通りでは、明かりをつけてやっている店がいくつもあって、まだ賑わっていた。コルネコさんオススメの店の、ふくよかな女将さんがやっている、アットホームな食事処は、比較的治安が良さそうで入りやすかった。
ただ、ひとりの酔っ払いがユリ姉ちゃんをゲスイ目でみてきて、声をかけようと腰を浮かせたところで、ユリ姉ちゃんがピンポイントで放った殺気で気を失っていたけど、僕もコルネコさんも、なにも言わなかったよ。
看板メニューのシチューを熱々で食べながら、少し胸が苦しくなった。
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