【完結】投獄中の売国奴が出会ったのは、敵国の泣き虫王子だった。 ~期待された神器が"柄"ってだけで迫害を受けた~

三ツ三

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信じたい王子と裏切られた売国奴

17.反撃のフォーズ、輝き出すサソリ

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 青白く半透明に光り輝く刃。
 鉄の塊、鉱石の塊では決してない刃の形。これが一体どのような意味、効力があるのか俺達にはわからない。

 だが、間違い無く言えること。

 俺が手に持つ者は正真正銘の柄だった。
 そしてこれはまちがい無く剣だ。

「ルビヤありがとう、もう心配ない」

 早速手にした力を振るった。
 俺を拘束する固まり付いた粘液をチーズを切るかのように簡単に切断する事が出来た。出来るとも思った。

 この贈呈具を初めて手にした時は全くその性質が頭に浮かぶ気配が無かったが、今は不思議とこの能力がわかる気がする。

「フォーズさん・・・あれが村に来たら大惨事です。だから」
「了解だ」

 贈呈具と結晶の光りに目をやられていたのかわからないが、さっきまで悠々と近付いて来ていたサソリの魔物はそこには居なかった。
 余程に俺の事を恐れ出したのか、それとも贈呈具だけか。
 いずれにせよ、サソリは本能的に理解しているのかも知れない。

 自分が弄ぶ側から弄ばれる側に変わった事を。

 そして俺の反撃が始まった。


 敵は向けて近付かせまいと粘液を乱射してくる。ルビヤは背後の物影に隠れさせてある、もうさっきのような戦法は使わせない。
 それに、無駄に時間を使うつもりはないし、使う必要も無くなった。

 一気に間合いを詰めながら飛び交う粘液を全て切り落とす。

「さぁ、もうここまで来たぞ」

 目の前には自慢の両手と刃尾を携えたサソリが鳴いた。
 もはやその大きな雄叫びも弱々しく感じられた。

 苦し紛れの攻撃。先ほど以上にブンブンと大振りに振り回してくるが、もはや避けるまでもなかった。

スッ・・・。

 ただ俺は手を振るうだけだった。サソリの両手が同時に合わさる瞬間を狙い鋭い鋏を持つ両腕を切断した。
 切断された腕からは紫の血飛沫が噴水のように溢れ続けていた。

 空間にはこれまでの雄叫びとは違う音が響き渡る。

「うるせぇ悲鳴だ」

 最後の抵抗とばかりに自慢の刃尾を俺に目掛けて伸ばしてくる。

 当たればどんな人間も一撃で死を迎えるだろうが、俺はただ突っ立ったまま尻尾に向けて柄を向ける。

「す、凄い・・・」

 遠くから覗いていたルビヤ。サソリの尻尾が綺麗に真っ二つになる光景を目の当たりし、つい物影から出ていたようだった。
 だが、もはやそれを止める必要はない。

 俺は、戦意を喪失したのかその場でぐったりとしたサソリの下へと歩み寄る。
 ゆっくりと横たわる顔面へと近付く。物凄い血相で俺を睨み付ける表情、悔しさなのか恨みなのか。

 その目を俺はよく知っている。
 敗者が向ける目、勝者へと向けられる憎悪の目だ。

「・・・フォーズさん、お疲れ様です」
「あぁ、そこまでだけどな」

 完全に戦いは終わったと悟り、ルビヤも俺の隣に来た。
 
 共に眺めている必要は無いなと、俺はルビヤより一歩前に出た。
 すると、突然俺を静止させるかのようにルビヤはサソリへと近付いて行った。

「おい、流石に」
「大丈夫です、大丈夫・・・」

 それは一体誰に向けて言った言葉なのか。
 俺なのか、それとも・・・。

「ずっと不思議だったんです。この魔物は殺そうと思えば僕なんてすぐに殺せたはずなのに、それをしなかった」
「どうだか、俺には捻くれた性格だとしか思えないけどな、後臭いし」
「フォーズさん!」

 なんだよ。ルビヤもこのサソリも二人してギロっとした目で見てさぁ。
 ルビヤが何をしたいのかはわからないが、仕方ない。
 俺も一応ルビヤの一歩後ろを歩き何かあればすぐにこいつを殺す準備をしておくことにした。

「君は・・・本当に僕等が言う魔物なのかい?」

 当然サソリは答えない。
 けれど、不思議とサソリからは殺意を感じなかった。

「君は・・・」

 ゆっくりと差し出されたルビヤの小さい手。
 恐れは無く、まるでサソリに吸われるかのようにゆっくりと近付いた。

 そして、ルビヤが触れた時それは起こった。


「何だ!? 結晶が・・・?」

 辺り一面に散らばる結晶が次々と光り出したのだった。そして結晶だけでは無かった。目の前に居るサソリも一緒に光りに包まれ出したのだった。
 これは、俺の贈呈具と結晶が触れた時に起きた物と同じ光り。けれどここにある全ての結晶が輝くとどうなるのか。

 眩しくて何が起こってるのか見えねぇえー!!!

「ルビヤ!!」

 薄目でルビヤを視界に捕えようとするが、薄らとしか見えない。
 手を伸ばし肩を掴む事が出来た。

 安堵したと同時に、何故か視界がクリアになっていくのがわかると、ルビヤがこちらを振り向いた。

「何か出来てきました!!」

 驚いた顔をするルビヤ。

 それを最後に光りはゆっくりと眩しさを落としていったのだった・・・。
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