【完結】投獄中の売国奴が出会ったのは、敵国の泣き虫王子だった。 ~期待された神器が"柄"ってだけで迫害を受けた~

三ツ三

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絡み合う陰謀

42.猶予を与えられないルビヤ

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 シアマ村を曇りの天気が包んでいた。
 それは今自室で実務をしていたルビヤの気持ちを表しているようだった。

「ルビヤ様、お茶が入りました。ご休憩をされては如何でしょうか」
「あっ・・・うん。ありがとうエルター」

 エルターの入室に気が付かなかった様子を見せた。
 区切り良く実務を終わらせルビヤはソファーへと向かう。覇気の無くなった表情を浮かべ続けながら。

「・・・フォーズ殿もお呼び致しましょう、今なら丁度労働も終わり休憩に入ると思われますので」
「え・・・ううん、大丈夫。迷惑に、なるから」

 フォーズの名を出しても浮かない顔が変わる事の無いルビヤ。
 ソファーに腰掛ける姿は、まるで以前のルビヤ。フォーズと出会う前のルビヤと酷似していると、目を閉じ痛感してしまっているエルターだった。

 カップを取りお茶の味を楽しもうと口に運ぶが。
 お茶の味がしない気がしないのか、カップに入ったお茶を凝視する。
 いつもなら美味しく飲んでいた物、小さい頃から一切変わる事の無い味のはずが、どうしても美味しく感じられないでいた。

「入れ直しましょう。すぐにお持ち致します」

 一礼して退室するエルター。
 別に構わないと止めようとするも、もうそこには誰も居なかった。

 カップに浮かぶお茶を覗く。
 そこには自分の顔が鏡のように映り込む。

「酷い顔・・・だよね」

 誰かに謝るかのように、ただルビヤは呟きソファーから立ち上がった。
 ゆっくりと歩く先はベッド。
 そこに置いてある物を優しく抱きかかえた。

 それは、結晶石があった場所。
 あのサソリ型の魔物から生まれた物。あれから今まで出来る限り共に居ようと王城のルビヤの塔にも一緒に持ってきた大事な物。
 今もこうして遠くへ出かける時は出来るだけ一緒に持ってきている物。
 そして今も変わらず、フォーズが触れようとすると拒む物。

「変わった・・・つもりだったんだ」

 ルビヤにとって、結晶石の発見とその入手はとても大事な出来事だった。
 結晶石の発見はシアマ村の人々との信頼が為し得た事。特許の取得もシアマ村の人々としっかり話し合いをしたからこそ、誰よりも早くに行動した結果。
 そして何よりも、あの騒動が自分を強くしたきっかけなのだと。
 ルビヤは深く痛感していたはずだった。

 もう今までの自分ではいられない。そう強く気持ちを持った。
 だからこそ誰にも恥じない姿でいようと頑張った。


「頑張った・・・頑張っただけ、なんだよね」


 ルビヤの瞳が揺れる。
 けれど、グッと堪えて耐えた。

 こんな姿を見せてはいけない。見て欲しくない。

 今はこの場に居ないけれど。
 この世界に一緒にいる限りもう見せないと決めたのだから。


ドクンッ・・・!


 鼓動が一瞬響く。
 ルビヤは驚き抱いていた物を見ようとした。


 だが、その時。
 まるで図ったかのようにそれは起きた。


「ルビヤ様!! 大変です、自警団が!!!」





・   ・   ・




 駆け付けたルビヤを待っていたのは悲惨な光景だった。
 シアマ村の出入り口、自警団の者達が傷を負い倒れ込んでいた。元盗賊の者から村の者も含めてほぼ全員が。

「ル、ルビヤの大将」
「ドギアさん! 何があったんですか!!」

 ドギアに駆け寄るもドギアは手を出し平気である事を告げる。だが見渡す限りの戦いの跡。
 魔物の襲撃では無い。それはここへ駆け付けた段階でルビヤは理解していた。

「すまねぇ、保安の奴等が来て。何人かパクられちまって、それで・・・」
「それよりも早く傷の手当てを――まさかっ!?」

 ドギアの心配をしながらもルビヤは自然と周囲に気を配っていた。だからわかった、ドギアが言いたい事が。

「旦那が! フォーズの旦那が一人で乗り込んで!!」

 慌てふためくドギアに対してルビヤは、ただ下を向き人々に自分の表情を見せないようにするしかなかった。



・   ・   ・




「敵襲だぁ!!!」
「何処の馬鹿だ!!?ここは保安局支部だぞ!!」

 シアマ村から離れた一つの町、初めての町並みに足を踏み入れる。
 大々的にこの町を主張するかのような建造物、保安局支部があった。現在は物凄い騒ぎが起こっている、起こしている本人が言うのもなんだが、出来るだけ殺しはしないように進むのは骨が折れる。

「ちょっと失礼、牢屋?牢獄? 知り合いが捕まってるって聞いてるんだけど、何処かわかりますか?」

 一人の保安官を締め上げ位置を聞き出す。思ったよりも素直に指で方向を差してくれて助かる。
 用が済み手を離した途端に逃げて行った。その姿を見て妙な違和感を覚えるが、今はいい。
 シアマ村が収容されているであろう場所へ行ければ今はそれでいい。

 教えてもらった方角へ歩んでいく。
 門番のような行く手を阻む者は居ない・・・ようだが。

「・・・・・・」

 大きめの扉の前に立った違和感の正体が何となくわかってきた。
 この扉は間違い無く牢屋に繋がっているのはわかるが、俺はここへ招かれるように来た可能性が高いと。

 それでも、もうここまで来たんだ。
 俺に引き返す事は出来ない。

「・・・本当に、来たのか」
「お前は確か」


 俺を出迎えたのは見知った顔の人間だった。見たくも無い眼鏡を付けた男が一人武器を構えてその場に居た。
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