まさか、今更婚約破棄……ですか?

灯倉日鈴(合歓鈴)

文字の大きさ
4 / 8

4話

しおりを挟む
「オリビア・チャールストン! 今、この場で、お前に婚約破棄を言い渡す!」

 ロバートの声に、その場にいた全員が凍りつく。
 集まる視線にエンバー家長男は得意満面だ。
 今夜の主役は俺だ!
 ロバートはキョトンと固まるオリビアに、見せつけるように男爵令嬢を引き寄せた。

「俺はこのハニー嬢と結婚する! お前のような年増などお呼びじゃないんだよ!」

 笑いながら吐き捨てる。ハニーはオリビアと同い年だが、都合の悪いことには目を瞑る。
 この上なく愉快な気分だ。ほら、泣けよ、オリビア!

「だが、俺だって鬼じゃない。土下座して俺に忠誠を誓えば、妾くらいにはしてやるぞ。んん?」

 上から目線で命令する。
 さあ、最後の慈悲だ。俺に縋りついて許しを請え!
 唇を歪め、愉悦の笑みを浮かべるロバート。彼の興奮が最高潮に達した……その時。

「……ええと」

 ようやくオリビアが口を開いた。

「まずはロバート様、ハニー様、ご婚約おめでとうございます」

 華の咲くような、麗らかな笑顔で祝福する。それから、

「でも、わたくしの婚約破棄とは、一体何の話でしょう?」

「……は?」

 心底不思議そうに首を傾げるオリビアに、ロバートは胡乱げに眉を寄せる。

「オリビア! お前、何をとぼけて……」

 怒鳴りかけたロバートを置いて、

「オリビア? どうしたの?」

 彼女の背後から、ひょこっと弟のミハエルが顔を出した。

「ミハエル!? なんでここに??」

「なんでって、僕はオリビアのパートナーだから」

 当然とばかりに答えるミハエルはきっちり夜会服を着込んでいる。

「ねえ、なんで兄さんがここにいるの?」

 顔を寄せてくるミハイルに、オリビアは困惑気味に答える。

「さあ? わたくしの婚約破棄がどうとかって……」

「えー! 僕、オリビアと婚約破棄しないよ!? 今から明日の入籍が楽しみすぎて踊りだしそうだもん! 来月の結婚式のウエディングドレス姿も待ちきれない! 仮縫いについていっていい?」

「あらあら、ミハエルったら。新郎は式までドレスは見ちゃダメなのよ」

「えー、気になるなぁ!」

 急にイチャイチャし出した弟と許嫁に、ロバートは呆然とする。

「え? ちょ? 待て、待って!」

 頭が混乱して、狼狽える。

「何を言っているんだ? オリビア、ミハエル。オリビアの婚約者は俺だろう!」

 叫ぶエンバー家長男に、オリビアとミハエルは顔を見合わせて……ぷっと噴き出した。

「ええ!? 兄さん、それ、いつの話だよ!」

 ケラケラとお腹を抱えてミハエルは言う。

「兄さんとオリビアの婚約なんて、十年も前に解消になってるじゃないか!」
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

従姉と結婚するとおっしゃるけれど、彼女にも婚約者はいるんですよ? まあ、いいですけど。

チカフジ ユキ
恋愛
ヴィオレッタはとある理由で、侯爵令息のフランツと婚約した。 しかし、そのフランツは従姉である子爵令嬢アメリアの事ばかり優遇し優先する。 アメリアもまたフランツがまるで自分の婚約者のように振る舞っていた。 目的のために婚約だったので、特別ヴィオレッタは気にしていなかったが、アメリアにも婚約者がいるので、そちらに睨まれないために窘めると、それから関係が悪化。 フランツは、アメリアとの関係について口をだすヴィオレッタを疎ましく思い、アメリアは気に食わない婚約者の事を口に出すヴィオレッタを嫌い、ことあるごとにフランツとの関係にマウントをとって来る。 そんな二人に辟易としながら過ごした一年後、そこで二人は盛大にやらかしてくれた。

許すかどうかは、あなたたちが決めることじゃない。ましてや、わざとやったことをそう簡単に許すわけがないでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者を我がものにしようとした義妹と義母の策略によって、薬品で顔の半分が酷く爛れてしまったスクレピア。 それを知って見舞いに来るどころか、婚約を白紙にして義妹と婚約をかわした元婚約者と何もしてくれなかった父親、全員に復讐しようと心に誓う。 ※全3話。

【完結】王女の婚約者をヒロインが狙ったので、ざまぁが始まりました

miniko
恋愛
ヒロイン気取りの令嬢が、王女の婚約者である他国の王太子を籠絡した。 婚約破棄の宣言に、王女は嬉々として応戦する。 お花畑馬鹿ップルに正論ぶちかます系王女のお話。 ※タイトルに「ヒロイン」とありますが、ヒロインポジの令嬢が登場するだけで、転生物ではありません。 ※恋愛カテゴリーですが、ざまぁ中心なので、恋愛要素は最後に少しだけです。

【完結】婚約破棄の代償は

かずきりり
恋愛
学園の卒業パーティにて王太子に婚約破棄を告げられる侯爵令嬢のマーガレット。 王太子殿下が大事にしている男爵令嬢をいじめたという冤罪にて追放されようとするが、それだけは断固としてお断りいたします。 だって私、別の目的があって、それを餌に王太子の婚約者になっただけですから。 ーーーーーー 初投稿です。 よろしくお願いします! ※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています

婚約破棄裁判

Mr.後困る
恋愛
愛国心溢れる大公令嬢ヴィーナスは 自身の婚約者を誑かしたマーキュリー男爵令嬢を殺害した その裁判が今、行われる・・・

「そんなの聞いてない!」と元婚約者はゴネています。

音爽(ネソウ)
恋愛
「レイルア、許してくれ!俺は愛のある結婚をしたいんだ!父の……陛下にも許可は頂いている」 「はぁ」 婚約者のアシジオは流行りの恋愛歌劇に憧れて、この良縁を蹴った。 本当の身分を知らないで……。

そのご令嬢、婚約破棄されました。

玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。 婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。 その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。 よくある婚約破棄の、一幕。 ※小説家になろう にも掲載しています。

悪役令嬢の妹は復讐を誓う

影茸
恋愛
王子との婚約を冤罪によって破棄され、何もかも失った少女メイア・ストラード。 そしてその妹、アリアは絶望に嘆き悲しむ姉の姿を見て婚約を破棄した王子に復讐を誓う。

処理中です...