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35、同室者(2)

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 え? 私、なんかした!?

 セリニを抱えて、ベッドの上まで後退する私に、彼女はずずいと身を乗り出して……。

「……っきゃわいいぃぃぃ~~~!!」

 メロメロに相好を崩した。
 ……はい?

「いやーん、ちっちゃい! 可愛い! もふもふなのに羽まであるなんて反則じゃない? 白に金模様って素敵!」

 おさげの彼女は大はしゃぎだ。

「ね、触っていい?」

 眼鏡の奥の黒い瞳をキラキラさせて訊いてくる。

「どぞ」

 私が頷くと、彼女はそっとセリニの顎に指を伸ばした。掻くように撫でると、仔虎はゴロゴロ喉を鳴らしている。

「かわいい~! 鼻と肉球ピンク~!」

 セリニの愛らしさに身悶える彼女は、はしゃいでいる割に仔虎を驚かせない声の音量を保っている。相当な動物好きっぽい。

「ね、名前、なんていうの?」

「エレノア」

「エレノアたんでちゅか~! かわいいでちゅね~」

 ニコニコとトラ模様の背中を撫でる彼女。違う、そっちじゃない。

「その子の名前はセリニ。エレノアは私の名前」

 訂正すると、彼女は「あ、そっか」と舌を出した。

「まだ名乗ってなかったね。私はユニ、よろしくね、エレノア!」

 笑顔で右手を差し出すユニ。

「こちらこそ、よろしく」

 私はその手を握り返した。よかった、同室はいい人そう。

「小さいけど太い脚、牙も丈夫で歯茎もいい色ね。雛換羽は終わっている、もう長距離も飛べそうね」

 ユニはセリニの前足を握ったり口を開けたり、翼を開いたりして隅々まで確認していく。なんか、観察の仕方がプロ目線だ。

「魔獣に詳しいの?」

「私、第七隊の厩務員だから。騎獣の健康にはつい目を光らせちゃうのよね」

 なるほど。

「でも、窮奇を見るのは初めて! 綺麗な子ね。手入れが行き届いてる」

 騎獣管理のプロに誉められると嬉しいぞ。

「ユニは騎士団に所属して長いの?」

「一年くらいかな。でも私、戦闘員じゃないから騎士団員って感じじゃないかも」

 苦笑するユニに、私は首を傾げる。

「? なんで? 後方支援があるから、兵士は安心して戦えるんでしょ?」

 ユニはちょっと驚いた表情をしてから、

「貴女とは仲良くやっていけそう」

 にっこり微笑んだ。

「官舎の中を案内するわ。女性用浴場にはシャワーがあるのよ」

「わっ! それは楽しみ!」

 私、女友達がいなかったから、こういう雰囲気も楽しいな。
 セリニを肩にとまらせ、私はユニと一緒に女性官舎を見て回った。
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