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105、森の魔法使いのこと(5)
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訊かれた彼は、金色の瞳を上目遣いに思い出す仕草をして、それから懐かしそうに目を細めた。
「私はこの森で育ったから、他の職に就くことを考えなかった」
「森で育った?」
鸚鵡返しするリルに、スイウは頷く。
「私は幼い頃、実の親にこの森に捨てられたんだ」
「……はぁ!?」
リルは思わず椅子から飛び上がった。
「捨てられたって、どういうことですか?」
「言葉通りだ。私は生まれつき精霊の視える目を持っていた。両親にはその才がなかったらしく、宙に話しかけ、見えぬなにかと遊ぶ子どもはさぞかし不気味だったのだろう」
「そんな……」
口を覆ってリルは絶句する。異端に生まれた彼は、親に拒絶された。そして……魔法使いが棲まうという碧謐の森に置き去りにされた。
「その日のことはおぼろげに覚えている。雨が降っていて寒くて、静かなのにそこら中から精霊の息遣いが聞こえて。何も出来ずに木の根元にしゃがみ込んでいた私を見つけたのが、魔女ディセイラだった」
『森の精霊が騒がしいと思ったら、こんなところに人間の子が迷い込んでいたのね』
艷やかな長い黒髪を肩に払い、彼女は腰を折って彼に目を合わせて微笑んだ。
『親御さんが心配してるでしょう。街まで送ってあげるわ』
彼女の言葉に、彼はふるふると首を振った。自分が捨てられたことは理解していた。
『……帰れるところはない』
ぽつりとこぼした彼に、魔女は少しだけ目を見開いてから、
「それじゃ、うちの子になっちゃいましょ!」
にっこり微笑んで彼を抱え上げた。
『体が冷えてるわね。お風呂を沸かさなくっちゃ。あたしはディセイラ、この森の魔女よ。あなたは?』
『……』
捨てた親の付けた名前を名乗りたくなくて口を閉ざす彼に、魔女は歌うように言った。
『それなら、翠雨なんてどうかしら。青葉に降る雨のことよ。今日の出会いにぴったりでしょう?』
それから、少年スイウは魔女ディセイラと暮らし始め、魔法使いの仕事を学びながら成長していった。
特異な能力を持ち、街に馴染めなかったスイウにとって、森の生活は穏やかで快適だった。時々ディセイラと共に街へ行くこともあったが、誰も彼には気づかない。
『スイウは目眩ましの術がやたらと上手いのよね』
嫌味のない笑顔でからかうディセイラ。思い出の彼女はいつだって笑っていた。
ディセイラは朗らかで社交的で、大樹の家には彼女のお茶とお喋りを目当てに連日たくさんの森の住人が訪れていた。
歴代の魔法使いの中でもとりわけ森に愛されていたディセイラ。
……そんな彼女の魔女としての能力が急激に衰えだしたのは……スイウが森に来て二十年ほど経った頃だった。
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「森で育った?」
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「そんな……」
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『森の精霊が騒がしいと思ったら、こんなところに人間の子が迷い込んでいたのね』
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『……帰れるところはない』
ぽつりとこぼした彼に、魔女は少しだけ目を見開いてから、
「それじゃ、うちの子になっちゃいましょ!」
にっこり微笑んで彼を抱え上げた。
『体が冷えてるわね。お風呂を沸かさなくっちゃ。あたしはディセイラ、この森の魔女よ。あなたは?』
『……』
捨てた親の付けた名前を名乗りたくなくて口を閉ざす彼に、魔女は歌うように言った。
『それなら、翠雨なんてどうかしら。青葉に降る雨のことよ。今日の出会いにぴったりでしょう?』
それから、少年スイウは魔女ディセイラと暮らし始め、魔法使いの仕事を学びながら成長していった。
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『スイウは目眩ましの術がやたらと上手いのよね』
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ディセイラは朗らかで社交的で、大樹の家には彼女のお茶とお喋りを目当てに連日たくさんの森の住人が訪れていた。
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