交通量調査物語

がしげげ

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8、風俗嬢との出会い

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わずかに牛丼への未練を残しつつ、僕は近くの公園に入った。
滑り台、ブランコ、鉄棒、砂場。
遊具と呼べるものはこの4つだけ。
園内にはベンチが何ヵ所かあるが、雑草の手入れが出来ていないこともあり、どれも蚊の餌食になりそうな気がした。

唯一、1ヶ所のベンチのみ地面が砂地だったので、僕はそこに向かった。

すると、まさにベンチに到着する間際で、人の気配がする。

パッと目線を上げると若い女性だった。

「あ、隣いいですか??」

早い者勝ちルール適用なら僅差で僕の勝ちだ。
ただ、もちろんウェルカム。
若い女の子だし…

「もちろん、どうぞ。」

その女性もコンビニ袋を持っていた。
女性はマスクをしていたが、ベンチに座ると同時にマスクを取った。
じっくり見ることは出来ないが、横目で見る限りは、おそらく素っぴん。
にも関わらず、おそらく可愛い。
髪の毛は茶髪に染めて、しばらく経っているようで、若干プリン化しているようだ。

服装はゆったりしたロングTシャツに、ピチッとしたスキニージーンズ。

良い。

可愛い女性のOFFモード、といった様子だ。
そして、どこか影のある色気を放っている。

良い。

ただ、僕はすぐにガッかりすることになる。
左手の薬指に例の輪っかが付いていたのだ…

世の中なんて、こんなもんだ。

僕は気持ちを切り替えて、まずツナマヨのおにぎりを手に取った。
海苔を破くことなく、スムーズに開封できたことに少し喜ぶ。

ビュー。

少し強めの風。
女性の方から何かが飛ばされた。
反射的に僕は手を伸ばし、見事キャッチ。
するとそれは、ツナマヨおにぎりのゴミだった。

「あ、すみません!」

普段女性に話しかけるのが苦手なはずの僕だが、彼氏持ち(若しくは旦那か?)と分かって、緊張感を無くしていたのだろう。
調子に乗った返しをしてしまった。

「ツナマヨは外せないですよね~(笑)」

今思えば良く言った、僕。

女性は少し恥ずかしそうに、

「美味しいですよね(笑)」

と笑顔を返してくれた。
おそらく可愛い、は「可愛い」の確信に変わった。

付き合いたい…
彼氏邪魔…若しくは旦那邪魔…

という気持ちを抑えながら、次のおにぎり「昆布」を手に取る僕。
それに気付いた女性が、

「あ…」

の一言。
なんと、女性も昆布とツナマヨのコンビだったのだ。

これには僕も驚いた。
そして、より一層彼氏なのか旦那が邪魔に思えてしまった。

「何かの縁ですかね。」

女性の方から一言。

「そうかもしれませんね。良かったらお名前だけ聞いていいですか?」

良く言った、僕。

「篠田、です。」

「篠田さん、僕は前田です。またどっかでお会いしたときは宜しく(笑)」

当たり障りなく、しかも感じ良く返しが出来た自分を表彰したい。
女性はニコッと笑って返してくれた。



13時半。
休憩折り返しだ。
それよりも2人ともおにぎりを食べ終えてしまったことに少し落ち込む僕。
この楽しかったひとときが終わってしまうからだ。

ゴクっ。

お茶を一口飲んで、気持ちをリセットしようと試みた。



13時35分。

…?

立ち去らないな…
と思い、またしても「当たり障りない」を重視した質問をしてみた。

「よく来られるんですか?」

篠田さんが答える。

「初めてなんです。近くで日雇いのバイトしてて…交通量調査です。」

まじか…

どうやら公園付近の、別の交差点でも交通量調査をしているようだ。

「僕もそうですよ(笑)。初めてなんですが…」

篠田さんも驚いた様子。
僕は続けた。
しかし、これは当たり障りある内容だった…

「お小遣い稼ぎですか??」

左手の輪っかに僕の目線が向いてることに気付いた篠田さんが答える。 

「あ、彼氏ですよ。なんか、欲しいものがあるらしくて、プレゼントするためにバイトしてるんです。」

なんて出来た彼女だ…
彼氏に対しての羨ましさと憎しみを感じた一方で、未婚だったことに少し安心した僕。

すると、篠田さんが話し出した。

「本業のバイトの合間にこうやって交通量調査来てるんです。実は本業は夜の仕事で…  もちろん本番無しのっ。」

彼女は、風俗嬢だった。
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