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第一章 序章~闇~ 章介
5.※醜悪な男
「ん……」
義成が苦しそうに呻いた。
俺はびくりと表情を窺ったが、どうやら眠りから覚めていないらしい。
俺は布団の中に潜り込み、その反応したペニスを口に含んだ。まだ完全に勃ち上がってはいないのに、身体と同じく大きいそれの全部は俺の口の中に収まりきらなかった。
だが、確実に感じている。
痛快だった。そして俺の中に更に醜悪な考えが浮かんだ。
ペニスから口を離し、物音を立てないように、奥さんの鏡台を漁る。使いかけの化粧油はすぐに見つかって、俺はそれを二本の指で掬うと、自らの肛門に塗りたくった。
何事にも動じず、真面目を絵に描いたようなこの男の化けの皮を剥ぎたい。この男の本性を見てみたい。
いや、そうでなくてもかまわない。
堕とせばよいのだ。
自分に降りかかった不幸を盾に、他者に当たり散らすのは間違っているとわかってはいる。
だが、その時俺の頭の中は、今思いついた恐ろしい考え以外にこのやり場のない怒りを発散する方法はない。
そんな衝動に駆られていた。
俺に肛門性交の趣味があるわけではない。経験がないわけではないが、友を貶めるためにそのような事を思いつく自分にも驚いていた。
――俺は酔っているのだ。
酒のせいにすれば少し気が楽になった。
何度か挿れようと試みて、でも入らず少し諦めかけた瞬間、身体の力が抜け、俺の後孔がつぷっと、義成の亀頭の先端を飲み込んだ。
先端が入ればあとは体重をかけるだけだ。
俺は少し萎えていた感情などすぐに忘れ、嬉しくなってぐっと腰を落とした。
太く存在感のあるペニスが俺を貫く。
「んっ、くぅっ……」
拠り所のない俺の魂に、一本の筋が通ったような、欠けていたパーツが埋まったような心持ち。それが、俺の体内を貫く一本の肉棒によってもたらされた気がした。
俺は自分のペニスを扱きながら、夢中で腰を上下に振った。
酒が残っているからだろう。
穴は限界まで押し広げられているのに、痛みは感じなかった。
抽挿の度に、何か清浄なもので満たされ、穢れを排泄しているような、そんな恍惚とした感情でいっぱいになって、俺は不思議と笑っていた。
欲しいと思った。
俺を救う何かが。
こんな俺に赦しを。
夢中で腰を振っていると、ふと隣で寝ている大成が寝返りをうった。
その手が義成に当たって、義成が「んっ」と呻いて眉をひそめた。
俺ははっと正気に返った。
その瞬間、風もないのに鏡面の布カバーがぱさりと落ち、そこに映る自分の姿が目に飛び込んできた。
浴衣を乱れさせ、親友の上で女の様に腰を振る醜悪な姿。
そのおぞましさに血の気が引いた。
(気づかれてはいけない)
俺はあわてて抜こうとした。
だが遅かった。身体を貫く義成のペニスは限界に到達しかけていた。
射精時の男の本能なのか、義成は無意識で俺の腰をぐっと掴み、奥まで突き上げた。
「くっ」
内臓を突き破られるような感覚がしたが、俺は声を出さぬよう、必死に堪えた。
後はもう義成のペースだった。
俺は口を押さえて、ただ義成と大成が目覚めないことだけを願って耐えた。
クライマックスを迎える直前の何度かの強い突き上げの後、義成は苦しそうに呻き、奥さんの名を呼び……そして、遂に、驚きと共に目を見開いた。
真正面から俺を見据える瞳。俺は思わず目を逸らした。
だが……
「あっ……」
ここまできて止められるはずもない。
次の瞬間、俺の体内に熱い液体が吐き出されたのがわかった。義成が俺の中で射精したのだ。
「は、は……はは……」
俺は渇いた笑いを上げるしかできなかった。親友の顔は見られない。
「章……介……? なん……で……」
義成の驚きと戸惑いが間髪いれずに伝わってきた。
俺の体内では、まだ義成のペニスがびくびくと脈打っている。指で触れた義成の下腹部が残滓を吐き出す為に蠕動している。
俺は思い出した。
俺が行為中、この男の清廉さを分け与えてもらった気がしたのは勘違いだ。俺はこの男を俺のいる場所まで堕とそうとしていたのだと。
「なんで、って……り、利息だよ。お前のことだから、どうせ亡くなった奥さんに操を立てて発散してないんだろう?」
「どうして、こんな……どうして……」
義成はまだ状況を理解していないのか、言葉の節々から混乱が伝わってくる。
突き刺さっていたペニスが柔らかくなっていた。
「……男で悪かったな。でも……男だろうが女だろうが、結局快楽を求める本能は、俺も、ご立派なお前も大差ないってことだな」
俺がこの緊張感に耐えきれず、へらりと笑うと体内のペニスが完全に縮こまり、ぶるんと俺の穴から抜けた。
「んっ」
思わず鼻にかかったような甘い声が漏れ、ふるっと身体が震えた。
「ふざけるなっ!!」
その声と共に、義成が俺を突き飛ばした。
倒れた俺の顔面を襲う強い一撃。
暗い部屋の中で、視界が一瞬真っ白になった。
鼻の奥から鉄の香りがする。どろりとした液体が喉の奥に流れ込んできて、俺はそれをごくりと飲み込んだ。
鼻と口を押さえるとぬちゃりと指が濡れた。
腰に巻かれた帯紐。腕に絡まっているだけのはだけた浴衣。俺のペニスも恐怖で縮こまっている。
ほぼ全裸に近い俺の後孔から義成の精液がぶりゅりと漏れ出て、尻の下で丸まっている浴衣を濡らした。
「はは、はは……そんなに怒るなよ。悪かったよ。でも……気持ちよかったんだろ?」
俺は嘲笑うように言った。
俺は本当にどうしようもない。
だが心は叫んでいた。
――ほら、お前もここまで堕ちて来いよ。
だって、一人は寂しいじゃないか。
この世界はこんなにも暗くて……地獄だ。
(第一章 完)
義成が苦しそうに呻いた。
俺はびくりと表情を窺ったが、どうやら眠りから覚めていないらしい。
俺は布団の中に潜り込み、その反応したペニスを口に含んだ。まだ完全に勃ち上がってはいないのに、身体と同じく大きいそれの全部は俺の口の中に収まりきらなかった。
だが、確実に感じている。
痛快だった。そして俺の中に更に醜悪な考えが浮かんだ。
ペニスから口を離し、物音を立てないように、奥さんの鏡台を漁る。使いかけの化粧油はすぐに見つかって、俺はそれを二本の指で掬うと、自らの肛門に塗りたくった。
何事にも動じず、真面目を絵に描いたようなこの男の化けの皮を剥ぎたい。この男の本性を見てみたい。
いや、そうでなくてもかまわない。
堕とせばよいのだ。
自分に降りかかった不幸を盾に、他者に当たり散らすのは間違っているとわかってはいる。
だが、その時俺の頭の中は、今思いついた恐ろしい考え以外にこのやり場のない怒りを発散する方法はない。
そんな衝動に駆られていた。
俺に肛門性交の趣味があるわけではない。経験がないわけではないが、友を貶めるためにそのような事を思いつく自分にも驚いていた。
――俺は酔っているのだ。
酒のせいにすれば少し気が楽になった。
何度か挿れようと試みて、でも入らず少し諦めかけた瞬間、身体の力が抜け、俺の後孔がつぷっと、義成の亀頭の先端を飲み込んだ。
先端が入ればあとは体重をかけるだけだ。
俺は少し萎えていた感情などすぐに忘れ、嬉しくなってぐっと腰を落とした。
太く存在感のあるペニスが俺を貫く。
「んっ、くぅっ……」
拠り所のない俺の魂に、一本の筋が通ったような、欠けていたパーツが埋まったような心持ち。それが、俺の体内を貫く一本の肉棒によってもたらされた気がした。
俺は自分のペニスを扱きながら、夢中で腰を上下に振った。
酒が残っているからだろう。
穴は限界まで押し広げられているのに、痛みは感じなかった。
抽挿の度に、何か清浄なもので満たされ、穢れを排泄しているような、そんな恍惚とした感情でいっぱいになって、俺は不思議と笑っていた。
欲しいと思った。
俺を救う何かが。
こんな俺に赦しを。
夢中で腰を振っていると、ふと隣で寝ている大成が寝返りをうった。
その手が義成に当たって、義成が「んっ」と呻いて眉をひそめた。
俺ははっと正気に返った。
その瞬間、風もないのに鏡面の布カバーがぱさりと落ち、そこに映る自分の姿が目に飛び込んできた。
浴衣を乱れさせ、親友の上で女の様に腰を振る醜悪な姿。
そのおぞましさに血の気が引いた。
(気づかれてはいけない)
俺はあわてて抜こうとした。
だが遅かった。身体を貫く義成のペニスは限界に到達しかけていた。
射精時の男の本能なのか、義成は無意識で俺の腰をぐっと掴み、奥まで突き上げた。
「くっ」
内臓を突き破られるような感覚がしたが、俺は声を出さぬよう、必死に堪えた。
後はもう義成のペースだった。
俺は口を押さえて、ただ義成と大成が目覚めないことだけを願って耐えた。
クライマックスを迎える直前の何度かの強い突き上げの後、義成は苦しそうに呻き、奥さんの名を呼び……そして、遂に、驚きと共に目を見開いた。
真正面から俺を見据える瞳。俺は思わず目を逸らした。
だが……
「あっ……」
ここまできて止められるはずもない。
次の瞬間、俺の体内に熱い液体が吐き出されたのがわかった。義成が俺の中で射精したのだ。
「は、は……はは……」
俺は渇いた笑いを上げるしかできなかった。親友の顔は見られない。
「章……介……? なん……で……」
義成の驚きと戸惑いが間髪いれずに伝わってきた。
俺の体内では、まだ義成のペニスがびくびくと脈打っている。指で触れた義成の下腹部が残滓を吐き出す為に蠕動している。
俺は思い出した。
俺が行為中、この男の清廉さを分け与えてもらった気がしたのは勘違いだ。俺はこの男を俺のいる場所まで堕とそうとしていたのだと。
「なんで、って……り、利息だよ。お前のことだから、どうせ亡くなった奥さんに操を立てて発散してないんだろう?」
「どうして、こんな……どうして……」
義成はまだ状況を理解していないのか、言葉の節々から混乱が伝わってくる。
突き刺さっていたペニスが柔らかくなっていた。
「……男で悪かったな。でも……男だろうが女だろうが、結局快楽を求める本能は、俺も、ご立派なお前も大差ないってことだな」
俺がこの緊張感に耐えきれず、へらりと笑うと体内のペニスが完全に縮こまり、ぶるんと俺の穴から抜けた。
「んっ」
思わず鼻にかかったような甘い声が漏れ、ふるっと身体が震えた。
「ふざけるなっ!!」
その声と共に、義成が俺を突き飛ばした。
倒れた俺の顔面を襲う強い一撃。
暗い部屋の中で、視界が一瞬真っ白になった。
鼻の奥から鉄の香りがする。どろりとした液体が喉の奥に流れ込んできて、俺はそれをごくりと飲み込んだ。
鼻と口を押さえるとぬちゃりと指が濡れた。
腰に巻かれた帯紐。腕に絡まっているだけのはだけた浴衣。俺のペニスも恐怖で縮こまっている。
ほぼ全裸に近い俺の後孔から義成の精液がぶりゅりと漏れ出て、尻の下で丸まっている浴衣を濡らした。
「はは、はは……そんなに怒るなよ。悪かったよ。でも……気持ちよかったんだろ?」
俺は嘲笑うように言った。
俺は本当にどうしようもない。
だが心は叫んでいた。
――ほら、お前もここまで堕ちて来いよ。
だって、一人は寂しいじゃないか。
この世界はこんなにも暗くて……地獄だ。
(第一章 完)
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