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第二章 本編~迷走~ 章介
5.※過去
昔の話だ。
俺の実家は代々政治家の家系で、地元ではかなりの名家だった。
住み込みの女中や下男が何人もいるような家。
そんな家にありがちな、『世間からどう見られているのか』といった体裁ばかりを気にする父親と母親。
傍から見れば理想的な家族。
だがその内情はひどいものだった。
金銭以外の愛情をかけてもらった記憶はあまりない。
彼らにとっては、学校でよい成績を取って、先生に褒められる子であればそれでよかったのだ。
長男で、父親似の兄は、それほど苦痛ではなかったかもしれない。
だがあまり勉強の得意でなかった俺は、成績で褒められることは難しく、親や先生に嫌われないよう、必死に愛想を振りまいてごまかした。
俺にとっての『家族』とは常に息苦しさの象徴で、どこか『馴染めない』という感覚が常にあった。
例えるならまさに『みにくいアヒルの子』のような心持ちとでもいうのだろう。
アヒルの子は白鳥だったが、俺はそんな『あたり』ではない。
そんなわけで、家族の中で『はずれ』の俺は、甘やかしてくれる少し年上の下男の男にベッタリだった。
実の兄とは折り合いが悪かったから、「この男が自分の本当の兄ならよいのに」一時期は本気で思っていた程だった。
それの何がいけなかったのか。
信用していた者の裏切り。
男が裏切ったのか、俺の中にいる汚い部分を見透かされていたのか。
――この事を旦那様方に話したら、坊ちゃんが恥をかきますよ? 旦那様に棒で打たれるかもしれませんねぇ。
俺を犯した男は言った。
まとまらない思考の中で、俺は必死に考えた。
事が発覚すれば、この男は間違いなく追い出されるだろう。だが、俺はどうなる?
ただでさえ『はずれ』な俺が、男でありながら女の様にペニスを受け入れるなど、あってはならない事だと考えるだろう。
「なぜ抵抗しなかったんだ? お前も男なら殴り返せただろう? お前にそういう軟弱な気持ちがあったのではないか?」
父親に言われるであろう言葉は想像できた。
家族の縁を切られるだろうか? 誰も知らない遠くの精神病院に入れられるだろうか?
間違いなく俺をなかったものとして扱うだろう。
親に愛されたい気持ちは、子供なら誰しも持つ感情だ。捨てられるなどと想像するだけで恐ろしい。
加えて一人で生きる術を持たない俺は、絶対にこのことを人に知られるわけにはいかなかった。
今もなお消えることのない世間に対するこの底なしの恐怖は、もしかしたらこの時から始まったのかもしれない。
(こんなことなんでもない。俺が黙っていれば誰にもバレない)
俺は自らの傷ついた心を、高いプライドと傲慢な態度で隠した。
思えば俺の人生は、そこから負け続けていたのかもしれない。
男との行為はその後も続いた。
雇い主の息子と下男。同じ敷地にいれば、逃げ切れるはずもなかった。
「坊ちゃんのここ、もうすっかり俺の形をおぼえちまって」
「ち、ちが……さっさと、終わらせろ……」
その日、物置の陰で俺は犯されていた。男の囁き声に俺は(絶対に違う)と頭を振る。
(こんな変態な行為に慣れるはずがない。今だって嫌で嫌で仕方ないのだ。この男に脅されて仕方なく受け入れているだけだ……)
頭の中で必死にそう言い聞かせ、誰かに見られるかもしれない恐怖で、男に「早くイケ」と急かす。
だがその日に限って男はなかなかイカない。
焦れる俺に「坊ちゃんがもっと色気出してくれればイクかもしれませんよ?」男はそういって背後から手を伸ばし、シャツの裾を捲り上げた。
露になった俺の乳首に男の指が触れ、その突起をきゅっと摘んだ。
「んんっ……」
思わず女の様な甘い声が出て、俺は慌てて唇を噛んだ。
「もしかして、乳首いじってもらうの待っていました?」
男は嬉しそうに笑った。
俺は頭を振って否定の意を伝える。
だが普段ついていることすら気にしていない胸の飾りは、今日に限って強く自己主張してきた。
寒さなのか、恐怖なのか、それとも本当に男の言うように「もっと触ってくれ」とねだっているのだろうか。
俺の乳首は、はしたないくらいにツンと尖り、平らな胸の皮膚を引っ張っていた。
男がそこを更にくびり出して、引っ張ったり、爪ではじいたり、コリコリと押しつぶしたりしている。
熱を孕んだ先端が、後孔への刺激と一体となって全身を駆け巡る。
触れてもいない俺のペニスは勃ち上がり、その先端から粘度のある透明な液体を滴らせていた。
「早く、イケって……」
俺が言ったのか、男が言ったのか。
尻に打ち付けてくる打擲音と水音が頭の中で反響する。
女でもないのに、穴からどろりと液体が流れでて、内股を濡らした。
脳まで痺れてきて、俺は小鹿の様につま先で立ちながら、太ももをガクガクと震わせた。
今までに経験した事のないなにかが俺に迫ってきているのがわかった。
「んんっ、だめ、だめだっ!」
絶対に越えてはいけない一線がある。
だが、男が動きを止めない限り、もう抗う術などないこともわかっていた。
俺は板壁に手をつきながら、認めたくない現実にぎゅっと目を瞑った。
自然と、自らペニスで自慰をするときと同じようにイキんでいた。
「くっ! んっ……んんっ……んっ……んっ……」
一瞬、頭の中で火花が弾けたように真っ白になって、俺は声を殺してその打ち寄せた快楽の大波を受け止めた。
(違う。絶対に違う……)
頭の中でひたすらその言葉を繰り返す。
俺がイキんだと同時に、男もまた俺の体内でイったのがわかった。
男がぶるりと身体を震わせ、残滓までを俺の中に吐き出した。
抜く瞬間、結合部からぬちゃりという音が、異常に大きく聞こえて、俺は恐怖した。
俺のペニスの先端からはなにも出ていなかった。
透明な液体が一筋こぼれ落ちただけ。
俺が愕然としていると男はすぐにそれに気づいた。
「坊ちゃん、知ってました? それ中イキっていうんですよ? さすが優秀ですね。ここ使う前にナカイキ覚えちゃって……」
男は半勃ち状態の俺のペニスを握り、鈴口に溜まっていたわずかな液体を指で拭った。
「やめろっ……」
男の手から逃れようと腰を振ると、後孔からどろりと男のものが溢れ出た。
閉じているはずの穴からこぼれ落ちる液体。
慌てて俺は尻に力を入れたが、双丘の間はお漏らしでもしたかのように濡れ、不快な感触がそのまま内股を伝わって流れ落ち、足元で絡まっている下着とズボンを汚した。
「嬉しいなぁ。坊ちゃんの穴、俺の形に拡がってるんスね」
壁に向かったまま震える俺の背後から、男の嬉しそうな声と、かちゃかちゃとベルトを閉める音が聞こえた。
(違う。違う。違う……)
そう言い聞かせても、俺の体内は先程までの余韻で疼いていた。
*
その後、俺は恐怖で女に逃げた。
顔の良さを利用し、何人もの女と関係を持つ。
父親は何度も俺を叱り、殴りつけた。
相手への配慮ではない、ただ醜聞を恐れて、だ。
それでも俺にとっては、男に犯され、女のように穴でイク姿を知られるよりは、全然マシだった。
「はは、英雄色を好むって昔から言うじゃないですか……お父さんだって……」
父親が恐れているのは、子供ができないかどうか。そんなところだろう。
父親にも何人も愛人がいたが、子供ができないように気を付けているというのは俺でも知っていた。
例えできてしまったとしても、知り合いの医者の所で秘密裏に堕胎させたりもするらしい。
そんな堕落した日々を送っている中で、たまたま勢い任せに書いた小説が運よく編集者の目に留まり、デビューまでこぎつけた。それを肩書に、俺は周りに勧められるまま初世とお見合い結婚をしたのだった。
俺の実家は代々政治家の家系で、地元ではかなりの名家だった。
住み込みの女中や下男が何人もいるような家。
そんな家にありがちな、『世間からどう見られているのか』といった体裁ばかりを気にする父親と母親。
傍から見れば理想的な家族。
だがその内情はひどいものだった。
金銭以外の愛情をかけてもらった記憶はあまりない。
彼らにとっては、学校でよい成績を取って、先生に褒められる子であればそれでよかったのだ。
長男で、父親似の兄は、それほど苦痛ではなかったかもしれない。
だがあまり勉強の得意でなかった俺は、成績で褒められることは難しく、親や先生に嫌われないよう、必死に愛想を振りまいてごまかした。
俺にとっての『家族』とは常に息苦しさの象徴で、どこか『馴染めない』という感覚が常にあった。
例えるならまさに『みにくいアヒルの子』のような心持ちとでもいうのだろう。
アヒルの子は白鳥だったが、俺はそんな『あたり』ではない。
そんなわけで、家族の中で『はずれ』の俺は、甘やかしてくれる少し年上の下男の男にベッタリだった。
実の兄とは折り合いが悪かったから、「この男が自分の本当の兄ならよいのに」一時期は本気で思っていた程だった。
それの何がいけなかったのか。
信用していた者の裏切り。
男が裏切ったのか、俺の中にいる汚い部分を見透かされていたのか。
――この事を旦那様方に話したら、坊ちゃんが恥をかきますよ? 旦那様に棒で打たれるかもしれませんねぇ。
俺を犯した男は言った。
まとまらない思考の中で、俺は必死に考えた。
事が発覚すれば、この男は間違いなく追い出されるだろう。だが、俺はどうなる?
ただでさえ『はずれ』な俺が、男でありながら女の様にペニスを受け入れるなど、あってはならない事だと考えるだろう。
「なぜ抵抗しなかったんだ? お前も男なら殴り返せただろう? お前にそういう軟弱な気持ちがあったのではないか?」
父親に言われるであろう言葉は想像できた。
家族の縁を切られるだろうか? 誰も知らない遠くの精神病院に入れられるだろうか?
間違いなく俺をなかったものとして扱うだろう。
親に愛されたい気持ちは、子供なら誰しも持つ感情だ。捨てられるなどと想像するだけで恐ろしい。
加えて一人で生きる術を持たない俺は、絶対にこのことを人に知られるわけにはいかなかった。
今もなお消えることのない世間に対するこの底なしの恐怖は、もしかしたらこの時から始まったのかもしれない。
(こんなことなんでもない。俺が黙っていれば誰にもバレない)
俺は自らの傷ついた心を、高いプライドと傲慢な態度で隠した。
思えば俺の人生は、そこから負け続けていたのかもしれない。
男との行為はその後も続いた。
雇い主の息子と下男。同じ敷地にいれば、逃げ切れるはずもなかった。
「坊ちゃんのここ、もうすっかり俺の形をおぼえちまって」
「ち、ちが……さっさと、終わらせろ……」
その日、物置の陰で俺は犯されていた。男の囁き声に俺は(絶対に違う)と頭を振る。
(こんな変態な行為に慣れるはずがない。今だって嫌で嫌で仕方ないのだ。この男に脅されて仕方なく受け入れているだけだ……)
頭の中で必死にそう言い聞かせ、誰かに見られるかもしれない恐怖で、男に「早くイケ」と急かす。
だがその日に限って男はなかなかイカない。
焦れる俺に「坊ちゃんがもっと色気出してくれればイクかもしれませんよ?」男はそういって背後から手を伸ばし、シャツの裾を捲り上げた。
露になった俺の乳首に男の指が触れ、その突起をきゅっと摘んだ。
「んんっ……」
思わず女の様な甘い声が出て、俺は慌てて唇を噛んだ。
「もしかして、乳首いじってもらうの待っていました?」
男は嬉しそうに笑った。
俺は頭を振って否定の意を伝える。
だが普段ついていることすら気にしていない胸の飾りは、今日に限って強く自己主張してきた。
寒さなのか、恐怖なのか、それとも本当に男の言うように「もっと触ってくれ」とねだっているのだろうか。
俺の乳首は、はしたないくらいにツンと尖り、平らな胸の皮膚を引っ張っていた。
男がそこを更にくびり出して、引っ張ったり、爪ではじいたり、コリコリと押しつぶしたりしている。
熱を孕んだ先端が、後孔への刺激と一体となって全身を駆け巡る。
触れてもいない俺のペニスは勃ち上がり、その先端から粘度のある透明な液体を滴らせていた。
「早く、イケって……」
俺が言ったのか、男が言ったのか。
尻に打ち付けてくる打擲音と水音が頭の中で反響する。
女でもないのに、穴からどろりと液体が流れでて、内股を濡らした。
脳まで痺れてきて、俺は小鹿の様につま先で立ちながら、太ももをガクガクと震わせた。
今までに経験した事のないなにかが俺に迫ってきているのがわかった。
「んんっ、だめ、だめだっ!」
絶対に越えてはいけない一線がある。
だが、男が動きを止めない限り、もう抗う術などないこともわかっていた。
俺は板壁に手をつきながら、認めたくない現実にぎゅっと目を瞑った。
自然と、自らペニスで自慰をするときと同じようにイキんでいた。
「くっ! んっ……んんっ……んっ……んっ……」
一瞬、頭の中で火花が弾けたように真っ白になって、俺は声を殺してその打ち寄せた快楽の大波を受け止めた。
(違う。絶対に違う……)
頭の中でひたすらその言葉を繰り返す。
俺がイキんだと同時に、男もまた俺の体内でイったのがわかった。
男がぶるりと身体を震わせ、残滓までを俺の中に吐き出した。
抜く瞬間、結合部からぬちゃりという音が、異常に大きく聞こえて、俺は恐怖した。
俺のペニスの先端からはなにも出ていなかった。
透明な液体が一筋こぼれ落ちただけ。
俺が愕然としていると男はすぐにそれに気づいた。
「坊ちゃん、知ってました? それ中イキっていうんですよ? さすが優秀ですね。ここ使う前にナカイキ覚えちゃって……」
男は半勃ち状態の俺のペニスを握り、鈴口に溜まっていたわずかな液体を指で拭った。
「やめろっ……」
男の手から逃れようと腰を振ると、後孔からどろりと男のものが溢れ出た。
閉じているはずの穴からこぼれ落ちる液体。
慌てて俺は尻に力を入れたが、双丘の間はお漏らしでもしたかのように濡れ、不快な感触がそのまま内股を伝わって流れ落ち、足元で絡まっている下着とズボンを汚した。
「嬉しいなぁ。坊ちゃんの穴、俺の形に拡がってるんスね」
壁に向かったまま震える俺の背後から、男の嬉しそうな声と、かちゃかちゃとベルトを閉める音が聞こえた。
(違う。違う。違う……)
そう言い聞かせても、俺の体内は先程までの余韻で疼いていた。
*
その後、俺は恐怖で女に逃げた。
顔の良さを利用し、何人もの女と関係を持つ。
父親は何度も俺を叱り、殴りつけた。
相手への配慮ではない、ただ醜聞を恐れて、だ。
それでも俺にとっては、男に犯され、女のように穴でイク姿を知られるよりは、全然マシだった。
「はは、英雄色を好むって昔から言うじゃないですか……お父さんだって……」
父親が恐れているのは、子供ができないかどうか。そんなところだろう。
父親にも何人も愛人がいたが、子供ができないように気を付けているというのは俺でも知っていた。
例えできてしまったとしても、知り合いの医者の所で秘密裏に堕胎させたりもするらしい。
そんな堕落した日々を送っている中で、たまたま勢い任せに書いた小説が運よく編集者の目に留まり、デビューまでこぎつけた。それを肩書に、俺は周りに勧められるまま初世とお見合い結婚をしたのだった。
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