屑の男

猫丸

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第三章 番外編~片恋~ 義成

7.親友の自失

 久しぶりに見た章介は、ひげが伸び、髪もぼさぼさで、これがあのプライドが高い章介の姿だろうか、と俺は驚いた。
 いや、富栄以外の全員が同じことを思っただろう。
 章介は取り繕うこともなく、突然目の前に現れた俺達に怯え、年下の女にみっともなく縋っている。
 何が章介をこんな風にさせたのだろう。
 それにあの晩のことは関係しているのだろうか。
 ――俺がなんとかしないと。
 俺はそう思った。
 帰り道、誰も何も話さなかった。そして小舘だけが、別れ際、章介を励ます言葉を言った。
 
 ぎくしゃくしながらも、俺達の共同生活は始まった。
 二人だったらすぐにあの日のことを問いただしていただろうが、幸い大成がいた。
 元々大成は章介になついていたし、どうやらこのポンコツな男を兄弟分の様に感じている節もあった。
「しょーすけは、俺がめんどー見てやるからな!」
 ボロボロで現れた章介を見て、大成が俺と同じように思っていたことに苦笑いした。
 大成の見た目は亡くなった妻似だが、性格は俺に似ているらしい。
「大成、お前もどうやら不憫な性格らしい。将来ろくでもない相手に惚れるんじゃないぞ?」と俺は大成を抱きしめ、その頭を撫でた。
 大成は「どういう意味だ?」と首をかしげていたが、俺は笑ってごまかした。

 子供が二人いるようだった。
 章介は放っておけばいつまでも寝ていて何もしない。
 俺は章介に店を手伝わせることにした。大成に監視役を頼んだから、章介も簡単にはさぼれない。
 それは意外と功を奏した。
 章介は慣れない仕事で疲れ果て、夜はよく寝られる様だったし、酒も飲まなくなった。
 時折意味不明に俺に向かって卑屈な言葉を吐くくらい。
 俺には何も話さないくせに、意味深で、色々諦めたようなことばかりを言う。
 そのくせ黙って距離を取り、いつでも戻れるように周りの人間を手放そうとしはしないのだ。
 
 俺は腹立たしくなって言った。
「お前、自分だけが不幸だと思っているんだろ?」
 珍しくきつい言い方をしてしまった。
 戸惑った表情を浮かべた章介に、俺は更に言った。
「自分だけが不幸だという顔をして、人生に絶望して生きるのはやめろ。不快だ」
 なぁ、章介。手に入らない相手にずっと恋い焦がれる俺だって、十分不幸だと思わないか?
 あんな風にお前に侮辱されたのに、こうしてまた友達の顔をして笑っている。そんな俺だって最高の道化師で滑稽じゃないか。
 
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