手紙

猫丸

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6.老人の告白⑤

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 自分の家だというのに、夜中、庭から忍び込むというのは、妙にドキドキするものだと思いました。
 いや、きっと自分がこれからしようとしていることに対する罪悪感もあったと思います。
 できる限り音を立てないようにそっと開けたつもりでしたが、どうしても古い木がこすれ、引っかかるとガラス窓ががたがたと音がしました。
 今日は湯を沸かし、ちゃんと風呂に入って丹念に身体を洗い、汗を流したというのに、緊張で再び全身から汗が噴き出てきました。
 身体一つ分が入る程度の隙間から、自分の身体を滑り込ませ、家の中へと進入します。
 ふすまを開けたところで私は動きを止めました。
 布団の上には浴衣を着て、目隠しをした兄が背筋を伸ばして待っていました。
 私の気配に気づいたのか、兄はこちらの方へ顔だけを向け、小さくうなずきました。
 そして浴衣の紐に手を持っていき、合わせを解き、その肌をあらわにしました。
 風呂で何度も見ているはずなのに、隙間から差し込む月光に照らされ、その身体はとてもなまめかしく輝いて見えました。
 私はごくりと唾を飲み込むと、無言で兄に近づき、その身体を抱きしめました。
 褌一枚になった兄が、私の顔に手を寄せ、唇を寄せてきました。
 一瞬バレるのではないかと私は身体をこわばらせましたが、兄の唇が私に触れた瞬間、そんな私のなけなしの理性などどこかに吹き飛んでしまいました。
 むさぼるようにその唇を吸い、その口内へ舌をねじ込む私に、兄も必死に応えてきます。
 私がSではないと気付きもせずに。
 私は兄の褌を解きました。
 薄い下毛の間のイチモツは慎ましくも反応し、その皮からわずかに顔を出している先端の割れ目には透明な液体が雫を作っていました。
 私はその先端を覆う皮を剥き、それを口に含みました。
「あっ」
 兄の身体がびくりと跳ね、甘い吐息が漏れます。
 私は逸る気持ちを押さえ、やさしく後孔へと触れました。指先が濡れ、兄が既に準備していたのがわかりました。
 その助けを借りて私の指はするりと兄の体内へと侵入します。
 温度などすべて失ってしまったかのような兄の体内は驚くほど熱く、私は兄が発熱でもしているのではないかとぴくりと指を止めました。
「やめ、ないで……」
 兄は私の項に手を回し、再び唇を寄せてきました。
 私はそれに応えるように舌を絡めました。
 私は自分がSになった気分で兄を犯しました。まごうことなき血のつながった兄弟であるのに。
 兄は明らかに男を知っている身体で、淫らに私を求めました。
 そうすると不思議と今、兄を犯しているのは自分なのに、Sに嫉妬する気持ちも生まれてきました。そして私に抱かれながらSを思う兄に対しても憎しみも湧き上がってくるのです。
 兄にしてみればとばっちりも良いところでしょうが、私は愛しさと憎しみの感情がないまぜになって、手荒に兄を抱きました。
 なのに、兄は私が乱暴に抱いても、何度精を放っても、淫乱に「もっともっと」と私を……いや、Sを求めました。
 苛立ちが募りましたが、私には正体を明かすことはできませんでした。
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