メタバース世界が利権まみれなので、既得権益を打破します!

曽我雪政

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013. 綸言汗の如し

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——電子世界・大陸西部
「まもなく西の国境を抜けます!!!」
 ついこの前までは馬で移動していた部分。東都攻略でゴムや石油を手に入れ、今では自動車で移動している。流石に戦車を作るまでは技術が追い付かなかったが。
 西方遊牧民ネルガルの領域を勝手に横断し、西方領域へと向かう。当然ながら、途中で撤退要求を受ける。
「我が国の領内を経由して我が同盟国に侵攻を企てるとは何事か」
 しかし、わざわざ「お邪魔します」通告の一段階を踏めば、確実に戦争になる。ドイツがベルギーに通告して拒否され、侵攻した結果が一次大戦である。
「馬と車では車の機動力が上だ、振り切るぞ!!!」
 彼らに用事はない。領内を略奪する訳でもなく、全力で横断する。
 そうして辿り着いた西方領域ネウストリア。この帝国の東半が独立戦争を起こしている状態なのである。
「避難民を探し、我が軍の後方へ誘導せよ」
 ネウストリアに侵攻して数時間。敵軍がようやく現れた。

 この頃、ネウストリア帝国陸軍でも命令が出された。
「騎兵隊、全軍突撃っ!!!」
「中佐、相手は恐らく装甲車化歩兵隊です、どうぞお考え直しを」
「そんな訳がなかろう」
 一方で商丘側では、迅速な対応が行われていた。
「騎兵が突っ込んでくるぞ」
「縦列駐車した陣地からライフル隊が一斉射撃せよ」
「縦列駐車、完了しました」
「初撃が最も重要であると心得よ」
 兵士たちが頷いた事を確認し、命令を出す。
「撃ち方用意、撃てぇ!!!」
 敵騎兵の大半を打ち破った所で第2撃を放ち、壊滅的打撃を与えた。

「槍騎兵隊、跡形もありません!!!」
「ならば歩兵隊、突撃用意」
「どうか突撃以外でお考えを!!!」
「怖気づかず敵陣を破ってこそ、我が陸軍が最強である証明よ」
「そんな……」
 歩兵隊も左右から放たれる無数の銃弾を前に敗れ、軍としての形は失われた。

 大佐が技術力を過信して敗北した事は、勿論軍法会議に問われた。しかしネウストリアにとって、初の技術的敗北は衝撃を与えた。

——電子世界・ネウストリア帝都・エクスラシャペル
 技術的敗北の報は帝都に
「我が軍の兵器が敵軍に劣っていた事が露呈した模様」
「どういう事だ?」
「現在、『アウストラシア』の鎮圧軍が次々に各個撃破されております」
「ならば決戦に持ち込め」
「いえ、このままでは負けるのです」
「うむ、決戦と言ったろ、魔術師を動員するのだ」
「承知致しました」


——電子世界・南ネウストリア『メーガバーロの森』
「帝国より、動員令が発出はっしゅつされました」
 黒いローブに身を包んだ怪しげな魔術師が答える。
「合点承知の助」
(本当に大丈夫なのだろうか……)
 ネウストリアの使者が疑念を抱いた瞬間、半径10mの森が外側へと倒れる。
「この程度の事なら容易たやすいぞよ?」
 使者は恐れ入ってその場を後にした。


——電子世界・東部ネウストリア
 ネウストリア側には、各地からの騎兵隊4万と魔術師数人が集まっていた。
「これで勝てるのか?」
「皇帝陛下の勅令による作戦だぞ」
「イルミナートは絶対無謬の組織だと聞いている」
「綸言汗の如しというように、取り消しができないだけなのでは?」
「いや、仮に間違えても正しいと再定義してしまう事ができるらしい」
「この世のルールを司るらしい」
 軍規が緩み切った状態での戦いに、先の戦いで苦汁を呑んだ大佐は不安しかなかった。
 しかし魔術師の作る竜巻や旋風つむじかぜに、商丘の自動車兵団は近付けなかった。
「敵が攻めてこないだと……!?」
 大佐が驚くのも当然である。敵を騙すならまず味方からと言うように、誰にも知らされていなかったのである。言わば、秘密兵器であった。

「嵐には勝てぬ、撤退だ」
 この命令は正しかった。反発した一部の遊牧民が馬で突撃した所、木端微塵に粉砕されてしまったのだ。
 しかし我々も指を咥えて黙って見ている訳にはいかない。
「魔術師に関して、『メーガバーロの森』に詳しい情報がありそうです」
 スパイの報告から、すぐさま森に兵士を派遣し、大量の魔術関連の書物を押収した。
「魔術には魔術だ、土の壁を築き対抗せよ」
 厚さ100m、高さ50mの土の壁が軍事境界線上に建てられ、戦線は完全に膠着した。

「このまま魔術合戦をし続けても仕方がない」
 敵も味方も同じ結論に至った。戦いは、ネウストリアが『アウストラシア』の独立を認めるという形で収まった。これ以上の市民の白灰化を防ぐという点では、こちらの勝利であった。


——現実世界・黄船の祠への山道
 一方で現実世界では、ミコのために食糧を持って山を登る生活。
 山道の途中には有名な観光地となっている神社がある。そのためか、川には桟敷さじきが掛けられている。
 最近気付いた事だが、桟敷はもう開放されていない筈なのに、寝転がってスマホを触る人が居る。青っぽい服を着ていて、川の神様かと思ってしまう。
「覚悟っ!!!」
 いきなり日本刀を持ってこちらに斬りかかってくる男。ギリギリ躱したが、次の一撃は避けられそうにない。まずい。そう思った瞬間であった。
「早く立ち上がりなさい!!!」
 いつも寝転がっている女の子が、傘で何とか日本刀を防いでいた。
 女の子が襲撃者の腹に傘を突き刺すと、男の腹が赤色に滲む。
「仕方ない、行くわよっ」

 手を引かれて暫く走った後、何故かミコの隠れる神社の近くに辿り着いた。
「貴方、ミコの友人でしょう?」
「何故それを?」
 私がそう訊くと、女の子は自己紹介をした。
「突然連れ去ってごめんね、私は由岐ゆき雪乃ゆきの。ユキノって呼んでね」
 唐突すぎて話に付いていけないが、ミコの本名を知っているかと訊かれた。
 そういえば、知らない。そう答えると、雪乃が説明し始める。
「あの子は今宮いまみやミコ。地元でも有名なハイパーお嬢様よ」
 鞍馬山一帯に土地を持っており、総資産は100億を下らないとか。
(だから億単位の仕手戦に余裕があったのか……)
「実は由岐家の遠い親戚でね、1000年前に遡る話だけど……まあ興味ないよね」
 そんな話の切り方をされては気になるというもの。
「お願いします、気になるので聞かせて下さい」
 そう言うと、雪乃は意地悪にもこう訊いてくる。
「ホントに気になるの?」
「気になりますから教えて下さい」
 なら分かった、と言って雪乃は説明を始める。言質を取られたような、と思ったが後の祭り。
「由岐家は、鞍馬の天狗と呼ばれた一族なの。元々は殷周革命で天竺インドへ逃れ、更に西周や平安京と渡り歩いた一族なのよ。国を裏から動かして、不味くなったら妖狐の仕業って事で乗り切ってきたのよね。まあ、応仁の乱までだけどね」
「今宮家は、源義経と由岐家の女の間の子孫。由岐の家が代々守ってきた血筋なのよ」
 分かった? と確認を求める雪乃だが、情報量が多すぎて殆ど分からない。
「うーんと、要するにミコを守る道理は私にもあるって事ね」
 ここだけであればギリギリ理解は出来たので、取り敢えず話を続ける。
「まあ、ミコの許に行くわよ」

「ミコー、久しぶりー!!!」
 雪乃が声を掛けると、ミコが返事をする。
「あら、2人とも知り合いだったの?」
 この前は祠しかない広場だったのに、木造の立派な御殿が建っている。いつの間に。
「あ、さっき知り合ってねー。そろそろここも危ないかもよ」
「1000年以上安全だったのに?」
「うん、現代のネット社会ってすごいからね」
 さっきから単位が幾つかズレた話をしているが、これがミコと雪乃の会話である。
「あっ、マサには話してなかったわね。雪乃ちゃんは、マサが手を組んだ月港のユキノと同一人物よ」
 最早大混乱である。
 ネット上で結婚した2人が現実世界では遠い親戚で、しかも人知れない名家である。訳が分からない。
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