163 / 190
episode X . ギュスターヴの場合 / 性奴隷虐めの代償
Gustave 003. 赤い風船
しおりを挟む地下室は撮影厳禁であるにも拘わらず
みにくく、じめじめしたヒキガエルが密室で仕置きを受けているという噂は
SNS で瞬く間に広がり、
じわじわと階段の人口密度が濃くなってきた。
時折、ドアのくり貫かれた覗き穴からわめき声が響いてくる。
拘束され辱しめギュスターヴはもう、
「わたしは胸が苦しくって、歯がガチガチする。それで脈の中では、火が燃えているようです」
何故、あんなことを
何故、こんなことに
「あの寂しげな眼が、ちょうど鋏の刃のように、俺の心をひやっとさせたのだ」
性奴隷施設の職員
ギュスターヴ Gustave は、
大学を卒業後、刑務官として働いていたが、待遇の良さに惹かれて、
試験を受け、性奴隷施設の職員に転職した。
この施設に勤務し始めて3年目の青年だが、
彼は最初にここに足を踏み入れたときからずっとずっと心にひとときの休憩も挟まずに、
苛々していた。
前に勤めていた刑務所では、受刑者が日々社会奉仕活動を行い、聖職者の説法に耳を傾け、皆、必死に勉強と運動をしているのを見てきた。一生懸命にペナルティをクリアし、自尊心を取り戻し、社会復帰していく人々にギュスターヴも胸を打たれていたのだ。
が、
それに比べて、
この施設に収容されている性奴隷たちときたら。
スポーツブランドやカジュアルブランドから提供されるお洒落な服で寛ぎ、
都会的な食堂とカフェで新鮮で美味しいパーフェクトな食事をし、
それだけでは飽きたらず旦那さま方からの贈り物は贅沢品ばかり。
施設内の一流のサロンで頭の天辺から爪の先までピカピカに磨きあげ、
趣味や副業も充実しており、
心身の不調は最新の医療技術でリセット。
そして、厳しくも慈しみ深い調教師による極上のプレイ。
シャバでは、一般市民が懸命に労働し社会保障にありついているというのに…
ここはまるで天国じゃないか…
ギュスターヴの性奴隷への憎悪は風船のように日々膨れ上がるばかり。
それでも、性奴隷施設の職員は社会的地位が高く、一般のビジネスマンよりも高給なこともあり、仕事と割りきって、性奴隷の指導と世話を続けてきたのだ。
そんなある日、
夜も遅い時間に、
性奴隷施設の前庭に真っ白なリムジンが停まった。
ぐったりと疲れきった様子の性奴隷が下車し、付き添いの職員に車椅子に座らされ、施設に向かってきている様子を、
ギュスターヴはぼんやりと見ていた。
性奴隷は痩せっぽっちの蒼白い青年で、童顔の細面はどこか寂しげな雰囲気を漂わせていた。
オーバーサイズのコットンのローブの分厚い襟に覆われた小さな顔が、
ふと、
微笑んだ。
月明かりに照らされた微笑みは、満たされた心がそのまま表情筋を弛ませたかのようなもので、
その微笑みがギュスターヴの荒んだ心を苛んだ。
憎悪の風船が膨らむのを、
見ていた。
夜空のお月さまが、ギュスターヴを見ていた。
その夜の翌々日。
ギュスターヴの端末機に、メディカルルームからサロン施設へ性奴隷をエスコートするよう指示が入った。
早速、メディカルルームの入り口でスタッフから性奴隷を引き受けたのだが、
ギュスターヴは、ハッとした。
その性奴隷が、昨日車椅子で運ばれてきた、あの寂しげな青年だったからだ。
ギュスターヴは、何故か早まる鼓動と浅くなる呼吸を抑え、淡々とぶっきらぼうを装いながら、この性奴隷の青年をサロン施設まで送り届けた。
青年の背中がドアの向こうの廊下に小さくなっていくのを見届け、
ギュスターヴは落ち着いた様子で次の仕事に映った。
それから数時間がたち、
ギュスターヴは館で使用する家具や性奴隷の衣装の発注、性奴隷のコンディションのチェック、調教師たちのスケジュールの調整等
幾つかの事務的な仕事を終え、スタッフ用のカフェテリアで一服をしに行く途中、
サロン施設のドアから、あの寂しげな性奴隷の青年が出てくるのと鉢合わせた。
ギュスターヴは、ドキッ、と無意識に体が強ばり、鼻息が荒くなることに気付きながらも、それとなく彼を観察し終えると、
行き先を変えた。
ソワソワする。ギュスターヴの心と体。
施術を終えた青年性奴隷は、髪の毛が清潔に整えられ、肌が血色良く艶めき、手の爪などオイルでキラキラにケアされていた。
そして、あの、今にも泣き出してしまいそうな目。
ざわざわする。
ギュスターヴの心と体は、
オフィスに引き返すと逸る気持ちで端末を操作し、
収容されている性奴隷の名簿を調べはじめた。
程無くして、彼は見つかった。
「いた」
詳しいプロフィールと近況とともに写真が何枚も掲載されている。
「エドガー」
エドガーの、ブラウンの長い睫毛に縁取られた真冬の曇り空のような薄い灰色の瞳が、
ギュスターヴの内面で膨れ上がっていた真っ赤な風船を射ぬいた。
「エドガー」
性奴隷になっても尚、悪魔に食べられていない心をズタズタにしてやりたい。
風船が破裂したギュスターヴの空に、
暗雲が猛烈なスピードで垂れ込めて、
真っ黒になってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
朔望大学医学部付属病院/ White Dictator
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
White Dictator______通称:『白衣の独裁者』
<ホワイト・ディクテイター>
⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯
圧倒的な「実力」と「技術」で捩じ伏せ・現場を支配する凄腕たち。
___ ごく僅かな一瞬の隙も逃さない神手の集まり。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる