殿下のとんでもない事情

木の葉

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魔獣討伐に同行

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 殿下との顔合わせから一週間が過ぎたが、婚約解消にはまだ至っていない。
 
「リンデル、もうすぐ長期休暇だったな」
 
 夕食後にお茶を飲んでいると、お父様に聞かれたので私は予定を伝えた。
 
「はい、今年は隣国の叔母様のところに行こうかと思っております」
 
「中止だ。殿下と共に遠征について行きなさい」
 
「お父様、どういうことですか?私は婚約を解消するつもりです」
 
「一度は陛下も婚約解消をお許し下さったんだが、殿下がお前を気に入ったのが嬉しかったらしく、婚約解消はもう少し様子を見てからになったんだ。遠征に同行すれば、仲も良くなるだろうとお考えだ」
 
「あなた、リンデルを魔獣狩りのお供になど出来ません。女の子ですよ。怪我でもしたら大変ですわ」
 
 お母様が最もなことを言いながら、物凄く怒っている。
 
「リンデルには専属の護衛もつくし、今回の遠征は危険ではないそうだ。それに、一般人では入国出来ないマルドン妖精国にも寄るらしい」
 
 マルドン妖精国とは、大昔に妖精と共に暮らしていたと言われる島国で、他国との交流を良しとしていない。ブルネル国の王族とだけは良好な関係が続いているから許可されたのだろう。
 
 確かにマルドン妖精国には興味があるけれど、そんなことで釣られるような私ではないわ。
 
「殿下の話によると、マルドン妖精国には『妖精の遺産』と呼ばれている、とても美しい鳥がいるらしい」
 
「鳥ですか?」
 
「私にもよく分からんが、その鳥はとても綺麗な声で、たまに人前で鳴くそうだ」
 
 そういえば本で読んだことがある。その鳴き声を聞いた者の中には、素晴らしい才能が開花した者がいて、『妖精のいたずら』なのではないかと記されていた。
 
 どうしよう、才能はともかくとしても、鳴き声を聞いてみたいかも……。
 
 長期休暇に入り、誘惑に簡単に負けてしまった私は、明日の朝早くに出発するからと言われて王宮に泊まりに来ていた。なぜか横にはガーディン王太子殿下がいらっしゃる。
 
「久しぶりだな。リン」
 
 なぜこの人は私の名前を勝手に短くして呼ぶの?
 
「王太子殿下もお元気そうで何よりでございます」
 
「俺のことはディンと呼べ」
 
「嫌です。殿下と呼ばせて頂きます」
 
「リンが十七歳になるのはいつだ?」
 
「いつだったか思い出せませんわ」
 
 ブルネル国では、平民は十五歳になると一人前として扱われるが、貴族の場合は貴族学校に通うことが義務付けされているので、十七歳に一人前扱いされる。
 
 貴族学校は十五歳から十八歳の3年間通うことになり、十七歳になる頃には真面目に通学していれば単位も取れ、毎日通わなくても卒業が出来る。それもあり、十七歳になると同時に、貴族令嬢の中には結婚する者も出てくる。
 
 それに、結婚しなくても婚約者となら特別な関係になることも許されているのだ。もちろんそれは近いうちに結婚するから許されているのだけど……。それもあり、結婚式には既に妊娠していたり、場合によっては赤ん坊を抱いての式の場合もあるぐらいだ。当然ながら、十七歳を過ぎた後の婚約中に出来た子供は跡継ぎにだって出来るし、両親だって早くに跡継ぎが出来て喜ぶそうだ。
 
「そうか。確か今回の遠征中に十七歳になると書類に書いてあった気がするぞ」
 
 知っているなら聞かないでほしいわ。
 
「そうでしたか?まあ、どちらにしろ私達には関係ありませんわ」
 
「まあ、流れに任せるとしよう」
 
「殿下、そんなことよりも私の護衛はどなたですか?」
 
「ああ、食後には挨拶に来るだろう。奴はかなり強いから安心しろ」
 
 夕食が終わり、一人の青年が挨拶に来られた。
 
「ドヴァーグ侯爵令嬢、私はリード伯爵家の次男のボーンズと申します。よろしくお願いします」
 
 あら、びっくり。この方は殿下の恋人様ではなかったかしら?
 
 間違いないわ。サラサラで艶やかな焦げ茶色の髪と瞳をした美男子。
 
「初めまして、リンデル・ドヴァーグです。明日からよろしくお願いしますね」
 
「はい、お任せ下さい」
 
 素直そうな良い青年だわ。こうやって近くで見ると、背は私より10cmぐらい高いだけで痩せているし、年齢も私と変わらないように見えるわ。
 
「ボーンズは俺の二つ下の19歳だが、童顔だからリンと同じぐらいに見えるだろう」
 
 思わず大きく頷いてしまったわ。
 
「確かに童顔で華奢ですが、護衛はしっかり出来ますので安心して下さい」
 
 どうしましょう。この遠征はなんだか変に気を遣ってしまいそうだわ。私はなるべくお二人の邪魔をしないようにしなくてはいけないわよね。
 
 その後、私は一人で部屋に戻り大きなベッドでぐっすり眠った。
 

 

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