殿下のとんでもない事情

木の葉

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オークキングの討伐

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「起きろ、リン、起きるんだ」
 
「殿下、どうされたんですか?」
 
「危険信号が放たれた。どうやら隣のチームが何かに襲われているようだ」
 
 私は眠気が吹き飛び、飛び起きた。
 
「それで応援に駆けつけるのですね」
 
「そうだ、それほど離れていないからリンも一緒に行った方が安全だろう。いいか、ボーンズから絶対に離れるな。これはお守りだ、持っていなさい」
 
 殿下がお守りを首に掛けてくれて、私のおでこに軽くキスをした。キスしてくれたところがほのかに熱を持って、私の体内に巡らされた。
 
「これは保護魔法ですね」
 
「そうだ。このお守りは魔獣避けだ。それと、俺がリンに掛けた保護魔法は二時間ほどだが、守りを強化してくれる」
 
「ありがとうございます」
 
「すぐに着替えろ。時期にボーンズがやってくる」
 
 そう言って殿下はテントを後にした。
 
 すぐに着替えて身支度を整えたところに、ボーンズが現れた。
 
「行きましょう。失礼ながら、手を繋がせてもらいます」
 
「はい、よろしくお願いします」
 
 ボーンズに守られながら、私は早足で動いた。
 
「おそらくですが、オークの群れだと思います」
 
「オークですか?それは厄介ですね」
 
「はい、ですので充分気を付けて下さい」
 
「分かりました」
 
 一対一であれば普通のオークなら私でも倒せるが、群れとなると難しいだろう。
 
「止まって下さい。見えますか?」
 
「はい、オークですね」
 
「去るまで待ちましょう」
 
 オークが二匹、50メートルほど先に見える。誰かが3人で戦い始めたようだった。誰だろう?一人は女性のように思えるが、大丈夫かしら?
 
 あまり時間を掛ければ、別のオークが来てしまうわ。
 
「助けに行きましょう」
 
 私がそう言うと、ボーンズは首を横に振った。
 
「ダメです。危険すぎます」
 
 でも、あれはイザベルのような気がする。
 
「ですが戦っているのは、おそらく私の友人です。お願いします。長引けば危険だわ」
 
「はっ――、分かりました。ですが、無茶はダメですよ」
 
「了解ですわ」
 
 ボーンズは私の手を引いて走り出した。
 
 近くまで来ると、イザベルだとはっきり分かった。
 
 私は一匹のオークに魔法弓を放ち、注意をこちらに惹きつけた。私の魔法弓は弓が無くとも、私自身の膨大な魔力を使い放たれる。一撃で仕留められるほどの威力は無くとも、何度も命中すれば仕留められる。
 
 引き寄せられるように、一匹のオークが私とボーンズめがけて走り込んできた。私はボーンズの邪魔にならないように、上手く避けながら身を守ることに徹した。
 
 ボーンズは華奢ではあるが力はあるようで、拳でオークを殴ると、オークはよろめいていた。私は再び至近距離から魔法弓を放ち、今度はオークを痺れさせた。そしてボーンズは次々に拳をたたみかけて、オークに勝利した。
 
 隣で戦っていたイザベル達も倒し終わったようだった。
 
「イザベル、大丈夫だった?」
 
 イザベルは頭を縦に振って答えた。
 
 そして5人で私達はさらに前進し、200メートル走って行くと、殿下達がとても大きなオークと戦っているのが見えた。
 
「ボーンズ、あれはオークなの?」
 
「あれはオークキングです。今回の任務はあれです」

「そうだったのね。でも大丈夫なの?」
 
「殿下はとてもお強いですからね。私が見る限り、全く問題はないでしょう」
 
「そう、なら安心したわ」
 
 本当に殿下はお強い。
 殿下が叫ぶと、天から槍のごとく撃ち落ちて来るのは雷魔法かしら?まるで天の使いがオークを成敗しているかのように見える。その姿は、この世の者とは思えないほどに美しかった。
 
 ボーンズの言う通り、10分もしないうちに決着がつき、戦った遠征メンバーは一斉に歓喜の声をあげた。
 
「おお――」
 
「王太子殿下、バンザーイ」
 
「さすが我らの殿下だ――」
 
「エイエイオー」
 
 よく分からないが皆とても嬉しそうだ。
 
 一瞬殿下と目が合うと、自慢げに笑みを浮かべられた。まるで褒めてと尻尾を振るワンコに見えたことは黙っていよう。
 
 命を落とした者も重傷を負った者もいなかったので、任務は大成功と言えるだろう。帰還するチームと、マルドン妖精国へ向かうチームに別れた。
 
 マルドン妖精国へ向かうのは私を含めて10名だが、入国出来るのは殿下と私だけのようだった。
 
「もしかして、私が入国出来るのは殿下の婚約者だからですか?」
 
「当たり前だ」
 
 しまった。鳥の鳴き声に釣られてはめられてしまったようだ。
 
「なんだか少し眩暈がしてきたので、私も皆と共に、入国せずに殿下を待とうと思います」
 
「却下だ。既にマルドン妖精国には連絡済みで、歓迎の宴を開いてくれると聞いている」
 
 ますます入国したくないのだけど……。私は歩きながら、どうやったら入国しないで済むかを真剣に考えたが、思いつかない。
 
「策を練っているようだが、抱っこしてでも連れて行くから、無駄な足掻きはやめろ」
 
 どうやら殿下は私の性格を読めるようになってきたようだ。これはちょっとまずいかも……。
 
 そして3日後、私達はマルドン妖精国に渡る港町に到着したのだった。
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