26 / 174
転生者について マッド視点
しおりを挟む
マッド視点
ミシェランに着いてから、俺は密かに転生者についての調査を始めた。
まずはギルドに保護されたという女についてだ。タイゾウにそれとなく聞いてみたが、彼は事件のことは知っていても、女のことは何も知らないようだった。解体作業をしながら、一番詳しそうな人間を探る。女性の解体作業員は、非常に面倒見がよくおしゃべり好きだと聞いたから、遠回しに話を聞いてみることにした。すると彼女は聞いてもいないことまで、色々と話してくれた。
「彼女が最初にギルドに来た時は、ひどく憔悴していて、まともに話もできない状態だったのよ。でも日が経つにつれて、みんなと打ち解けて、働けるようになったんだ。一緒に保護された青年も、真面目で穏やかないい子だったわ。あの子ね、私も彼と一緒に解体作業をすることが多かったのだけど、いつも真面目に手伝ってくれてわ。彼はいつも彼女の傍にいて、彼女が慣れない作業で困っていると、すぐに手伝いに駆け付けていたわね。彼女も、彼が少しでも疲れた様子を見せると、そっと水を差し出したり、休憩を促したりしてね。二人は本当に仲が良くて、まるで夫婦のようだったわ。ギルドの仕事は厳しかったけど、二人はいつも楽しそうで、冗談を言い合って笑っていたり、時には小さなことで言い争ったりもしてたけど、すぐに仲直りして、いつも最後は寄り添って休んでいたわね。周りの私たちも、そんな二人を見ていると、なんだか心が温かくなったものよ。話によると、門で喚き散らして大ごとにしたのは、その青年があの子を保護してほしくてわざとやったって言ってたわ。あんなことになっちゃって、本当に可哀想だった。彼女は暫くはまたギルドで寝泊まりしてたけど、いつの間にかいなくなってたから、どこかに保護されたんだって私は思ってるの。幸せに暮らしてるといいんだけどね」
「二人の名前を聞いてもいいですか?」
俺の問いに、彼女は少し考えてから答えた。
「ベイルとシイラだよ」
俺は聞いたことをリオにだけ伝えることにした。
「マッドも調べてたんだね。僕も少し調べたんだよ。門番にそれとなく聞いたら、領主に預かりにされた二人のレアスキル持ちは人を殺してるだろうって言ってたよ。水晶で分かるのは書類上で犯罪とされた者だけらしい。つまり、法によって犯罪と認められていなければ、犯罪歴は無いことになるみたいなんだ。だけど、鑑定スキルを持っている人の中には、書類上は犯罪者でなくても分かる者がいるらしい。ミシェランの鑑定人はそれが分かる人だからこそ、二人は領主預かりにされたそうだ」
リオの言葉に、俺は眉をひそめる。
「リオ、その門番、そんな重要なこと、他人に喋っていいのか?」
「うーん、なんていうか……『こんな話、他では聞けないですよね?まさか、あの二人、実は裏で何かやらかしてたとか?冗談ですけど!』って感じで、わざと大げさに言ってみたんだ。そしたら、門番が慌てて否定しようとする中で、ポロッと真相に近いことを口にしたんだよ。僕の真偽判定があるから、それが真実かどうかもすぐに分かっちゃうしね」
「つまり、想像すると、転生者の一人はミシェランに着く前に殺されたってことだよな?」
「ああ、間違いないと思うよ。それともう一つ、これは僕の想像なんだけど、主犯格は小柄なルートの方なんじゃないかと思うんだ」
リオの推測に、俺も同意した。
「ああ、俺もそう思うよ。スキルを聞くとスタークに惑わされるけど、この世界に来て五人組を見かけた時、真っ黒な魂が発していた気持ちの悪い気配は、スタークからではなく、赤髪のルートから感じたからな」
そんな会話をしていると、キャロルが風呂から戻ってきた。既に眠たそうで、可愛らしいあくびをしてベッドに入っていった。
後日、俺たちは街を散策していると、立派な教会が目に入った。興味を引かれ、中を見学してみた。
教会の扉は重厚なオーク材でできており、その表面には繊細な彫刻が施されていた。内部に一歩足を踏み入れると、ひんやりとした空気が肌を包み、外の喧騒が嘘のように遠ざかる。
特に印象的だったのは、祭壇の上に描かれた巨大な天井絵だ。柔らかな光に照らされた天使たちが、今にも動き出しそうなほど生き生きと描かれており、その筆致の精巧さに三人とも思わず口を開けて魅入ってしまった。礼拝堂の静寂と、荘厳な美しさは、ただただ息をのむほど素晴らしかった。
お祈りを終え、帰ろうとしたその時、見覚えのある女性がいた。俺は咄嗟に鑑定してみる。
シイラ 17歳 転生者
光属性、神聖、隠密、清掃
妊娠中 父親 ベイル
彼女は確かに少しお腹が膨らんでいるようだ。シスターの服を着ている。目が合うと、彼女は慌てたようにメガネをかけた。その拍子に、彼女がそっと、けれど確かに、膨らんだお腹に触れているのが見えた。その指先には、優しさと、小さな命への深い愛情が宿っているようだった。
俺は何も見なかったかのようにして教会を後にした。
彼女には、どうか幸せになってほしいと、俺は心からそう思った。
ミシェランに着いてから、俺は密かに転生者についての調査を始めた。
まずはギルドに保護されたという女についてだ。タイゾウにそれとなく聞いてみたが、彼は事件のことは知っていても、女のことは何も知らないようだった。解体作業をしながら、一番詳しそうな人間を探る。女性の解体作業員は、非常に面倒見がよくおしゃべり好きだと聞いたから、遠回しに話を聞いてみることにした。すると彼女は聞いてもいないことまで、色々と話してくれた。
「彼女が最初にギルドに来た時は、ひどく憔悴していて、まともに話もできない状態だったのよ。でも日が経つにつれて、みんなと打ち解けて、働けるようになったんだ。一緒に保護された青年も、真面目で穏やかないい子だったわ。あの子ね、私も彼と一緒に解体作業をすることが多かったのだけど、いつも真面目に手伝ってくれてわ。彼はいつも彼女の傍にいて、彼女が慣れない作業で困っていると、すぐに手伝いに駆け付けていたわね。彼女も、彼が少しでも疲れた様子を見せると、そっと水を差し出したり、休憩を促したりしてね。二人は本当に仲が良くて、まるで夫婦のようだったわ。ギルドの仕事は厳しかったけど、二人はいつも楽しそうで、冗談を言い合って笑っていたり、時には小さなことで言い争ったりもしてたけど、すぐに仲直りして、いつも最後は寄り添って休んでいたわね。周りの私たちも、そんな二人を見ていると、なんだか心が温かくなったものよ。話によると、門で喚き散らして大ごとにしたのは、その青年があの子を保護してほしくてわざとやったって言ってたわ。あんなことになっちゃって、本当に可哀想だった。彼女は暫くはまたギルドで寝泊まりしてたけど、いつの間にかいなくなってたから、どこかに保護されたんだって私は思ってるの。幸せに暮らしてるといいんだけどね」
「二人の名前を聞いてもいいですか?」
俺の問いに、彼女は少し考えてから答えた。
「ベイルとシイラだよ」
俺は聞いたことをリオにだけ伝えることにした。
「マッドも調べてたんだね。僕も少し調べたんだよ。門番にそれとなく聞いたら、領主に預かりにされた二人のレアスキル持ちは人を殺してるだろうって言ってたよ。水晶で分かるのは書類上で犯罪とされた者だけらしい。つまり、法によって犯罪と認められていなければ、犯罪歴は無いことになるみたいなんだ。だけど、鑑定スキルを持っている人の中には、書類上は犯罪者でなくても分かる者がいるらしい。ミシェランの鑑定人はそれが分かる人だからこそ、二人は領主預かりにされたそうだ」
リオの言葉に、俺は眉をひそめる。
「リオ、その門番、そんな重要なこと、他人に喋っていいのか?」
「うーん、なんていうか……『こんな話、他では聞けないですよね?まさか、あの二人、実は裏で何かやらかしてたとか?冗談ですけど!』って感じで、わざと大げさに言ってみたんだ。そしたら、門番が慌てて否定しようとする中で、ポロッと真相に近いことを口にしたんだよ。僕の真偽判定があるから、それが真実かどうかもすぐに分かっちゃうしね」
「つまり、想像すると、転生者の一人はミシェランに着く前に殺されたってことだよな?」
「ああ、間違いないと思うよ。それともう一つ、これは僕の想像なんだけど、主犯格は小柄なルートの方なんじゃないかと思うんだ」
リオの推測に、俺も同意した。
「ああ、俺もそう思うよ。スキルを聞くとスタークに惑わされるけど、この世界に来て五人組を見かけた時、真っ黒な魂が発していた気持ちの悪い気配は、スタークからではなく、赤髪のルートから感じたからな」
そんな会話をしていると、キャロルが風呂から戻ってきた。既に眠たそうで、可愛らしいあくびをしてベッドに入っていった。
後日、俺たちは街を散策していると、立派な教会が目に入った。興味を引かれ、中を見学してみた。
教会の扉は重厚なオーク材でできており、その表面には繊細な彫刻が施されていた。内部に一歩足を踏み入れると、ひんやりとした空気が肌を包み、外の喧騒が嘘のように遠ざかる。
特に印象的だったのは、祭壇の上に描かれた巨大な天井絵だ。柔らかな光に照らされた天使たちが、今にも動き出しそうなほど生き生きと描かれており、その筆致の精巧さに三人とも思わず口を開けて魅入ってしまった。礼拝堂の静寂と、荘厳な美しさは、ただただ息をのむほど素晴らしかった。
お祈りを終え、帰ろうとしたその時、見覚えのある女性がいた。俺は咄嗟に鑑定してみる。
シイラ 17歳 転生者
光属性、神聖、隠密、清掃
妊娠中 父親 ベイル
彼女は確かに少しお腹が膨らんでいるようだ。シスターの服を着ている。目が合うと、彼女は慌てたようにメガネをかけた。その拍子に、彼女がそっと、けれど確かに、膨らんだお腹に触れているのが見えた。その指先には、優しさと、小さな命への深い愛情が宿っているようだった。
俺は何も見なかったかのようにして教会を後にした。
彼女には、どうか幸せになってほしいと、俺は心からそう思った。
133
あなたにおすすめの小説
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる