Erased Knight/Princess

藍沢 紗智子

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II

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 キラキラに光るのおもちゃのロッド。フリルとチュールが盛りに盛られた桜色のドレス。真ん中に宝石の入ったティアラ。どれもどれもが過去の私が胸をときめかせたものだ。

 写真館のレンタルスペースで、どれを選んでも良いよと言われて、思わず手を伸ばしかけた。

(ダメ、こんなのは”きし”にはふさしくない)

 そう言って私は欲しがる手を後ろでキュッと合わせて一番地味な格好でカメラの前に立つ。

 私は姫乃を守る騎士。あぁいったものは姫にこそ相応しく、騎士は着飾る余裕なんてない。私はあの日に弱い女の子の私を消したのだ。

「ねぇ、本当にわたしのこと、消せたと思ってる?」

 あの日の小さな私が、私の着たかったドレスを着て私を覗き込む。

(あなたは私が消したのよ)

「そう思ってるの? 私、結構強いのよ」

 無邪気で挑戦的な瞳。彼女がロッドを一振りすると、大人の私の着ていた地味な会社の制服がフリフリのドレスに様変わりした。

(こんなの、似合わないよ)

「そんなことない。絶対にない。ねぇ、王子様を探しに行かない?」

 小さな私が手を引く。恐る恐る踏み出した先に居たのは、スーツを着た三隅でーー。



「夢、かぁ」

 二日酔いの頭をかきながら私はカーテンから差し込む光を見つめる。三隅はあの後、何事もなかったかのように私を家に送ってくれた。

(三隅のせいで変な夢見た)

 冷静に考えると昨日の三隅の行動はおかしい。私のことを好きだなんて、酔っていたのだろうか。

(いや、三隅ずっと烏龍茶飲んでたし帰りも運転してくれたから素面だ)

 ベッドの上で力なく転がる。ボサボサになった髪は昨夜手入れされることもなく寝落ちした罰だ。姫乃なら絶対にこんなことはしない。

(姫乃を好きになるならわかるけど、私はない)

 そのとき、ふとポロン♪と音がしてスマホが光った。画面を見て、私の眉間に深い皺が刻まれる。

[話がしたい。今日の午後1時、XX公園で会わないか?]

 用件だけの簡潔なメッセージはメッセージアプリでお友達登録すらしていない猿山からのものだった。昨日も会ったのに今日もまた会わないといけないとは。

[どうして私の連絡先知っているクソ猿。今、世界で一番会いたくないのだが]

[誰がクソ猿だ男女]

 ここで連絡先を知ったのが姫乃からだと言われたら私は数時間凹んだだろう。しかし、話を聞くと違うらしく少しだけ安心した。

 あまり会話の往復はしたくないらしく、とどめの一撃が来た。

[俺と姫乃のことお前が一番聞きたいハズだろ]
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