赤ずきんは狼（おとこ）から逃げられない

2話

　童話の【赤ずきん】をベースにしたR-18Gの乙女ゲームで、プレイヤーはデフォルトでブランシェットという名前になっているロリヒロインを操作して攻略対象者とデートをしたりして絆を深めて互いの好感度、そして調教によって淫乱度をMAXまで上げてハッピーエンドを目指すというものだ。

　互いの好感度が0だったら攻略対象者はヒロインの祖母を殺した上でその肉を赤ずきんに食べさせる。

　それを見届けた攻略対象者が赤ずきんを殺し、その肉を食らうというカニバリズムしかないのだ。

　仮にカニバリズムを避けたとしても、互いの絆と好感度が低かったら逃げ出そうとするヒロインを薬漬けにしたりダルマにする等といった悲惨なエンディングしかなかったりする。

　乙女ゲームなのにカニバリズムってありなの！？って思ったものだが、考えてみればカニバリズムはグロの代表格みたいなものだし何より【赤ずきんは狼おとこから逃げられない】はR-18Gなのでそのようなエンディングがあっても不思議ではないと納得できた。

　このゲームのハッピーエンドに辿り着く為には、ヒロインがロリの頃に出会う攻略対象者とデートして絆を深める&調教を十六歳になるまで受け続ける事。

　そして互いの好感度とヒロインの淫乱度がMAXになってから攻略対象者をおばあさんの家に連れて行き紹介すればいいのだ。

　攻略対象者はロリの頃から惚れているヒロインを嫁に出来るし、赤ずきんの祖母は孫の未来の夫となる男に殺されずに済む。

　それに何と言ってもヒロインは攻略対象者と濃厚なエッチをする日々を送れるから、ハッピーエンドとかと聞かれたらハッピーエンドなのだろう。

　でも、それはヴィルヘルミナにとって望む未来ではない。

　彼女が望む未来は唯一つ。

　ずばり！

　おひとり様だ！

 「でも、私は子供の頃からウォルフに気持ちいい事を教えて貰っていたし、何より･･･」

　幼い頃にウォルフに首筋を噛まれた事で仮（ほぼ確定）とはいえ番契約を交わしているし、祖母と両親にも紹介している。しかもウォルフと共に獣人の里に赴いて長老様と顔を合わせているのだ。

　つまりヴィルヘルミナは後戻りが出来ない状態という訳である。

　もし･･･望月　小夜子だった頃の前世を思い出さなかったら、ヴィルヘルミナは十六歳の誕生日を迎えたその日のうちにウォルフの元に嫁いだだろう。

　ウォルフは真一と別人なのだと分かっていても、元夫が元親友に寝取られたという過去を思い出してしまったものだから今のヴィルヘルミナは結婚や恋愛に対して非常に不安と言えばいいのか、過去と同じ事が繰り返されるのではないか？という恐怖を抱いている。

 「前世の記憶を取り戻したのが子供の頃だったら、狼のウォルフと猟師のルードに出会わないように行動していたのにな～」

　或いは私の名前がヴィルヘルミナではなく、デフォルトのブランシェットだったらずっと前に思い出していたのかも知れないわね──･･･

　鏡に映る自分の姿を眺めながらヴィルヘルミナは過去に思いを馳せる。