赤ずきんは狼（おとこ）から逃げられない

3話

　赤ずきんことヴィルヘルミナは母親に、森の奥に住んでいるおばあちゃんにパンとワインを届けて欲しいとお使いを頼まれた。

　十歳の時の事である。

 「は～い」





　おばあちゃんの家に行く途中で寄り道してはいけない

　森で狼を見かけたら近寄ってはいけない





　母親から注意を受けた後、ヴィルヘルミナはパンとワインが入っている籠を手にするとおばあちゃんの家がある森へと向かうのだった。





　光のカーテンと言えばいいのだろうか。

　穏やかな木漏れ日が光の雨となって森に降り注ぐ様は神秘的で幻想的だ。

　澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込んだヴィルヘルミナは祖母の家を目指して森の中を進む。

　うわ～っ

 「綺麗なお花畑･･･」

　赤・白・ピンク・青・黄・オレンジ・紫等

　祖母の家に向かっている途中で色鮮やかに咲き乱れる花畑があったものだから、祖母の家に向かっているはずの赤ずきんことヴィルヘルミナが破顔する。

　ここのお花を花束にして持って行ったらおばあちゃんが喜ぶと思ったヴィルヘルミナは花を摘もうとしたのだが、母親から言われた言葉を思い出す。

 「寄り道してはいけないってお母さんが言っていたけど･･･」

　う～ん

　母親の言葉に従うべきか

　マッチョな祖母の喜ぶ顔を見る為に花束を作るべきか

　ヴィルヘルミナは腕を組んで暫し考える。

 「･･････決めた！」

　花束を作るべくヴィルヘルミナは花畑へと駆けて行った。