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5話

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 「・・・おばあちゃん思いのお嬢さんの為にお兄ちゃんが協力してあげるよ。お嬢さんのおばあさんの家はどこにあるのかな?」

 「森の奥よ」

 イケメンのお兄さんの問いにヴィルヘルミナが森の方を指差す。

 (確かあの辺りに中年女性が一人で暮らしていたな。そうか、あの婆さんというかおばさんは彼女の祖母だったのか・・・)

 森の奥ではハーブに木の実、山菜にキノコ、果実といった山の幸が採れるし、腕に覚えがある者であれば兎や鹿といった動物を狩れ、川に行けば魚を釣れる。

 肉と魚は食用になるし、採りすぎた山の幸と皮は市場で売れば金になり、その金でパンやワイン、チーズ等といった食品に石鹸や生活雑貨、下着に服を買える。

 (何百年も生きている俺から見たら子供でしかないけどあの婆さんというかおばさん随分と逞しいし、寧ろ病の方から逃げるくらいに元気だから一人で森の奥で暮らしていても大丈夫だわ・・・)

 手刀で木を一刀両断したら拳か蹴りで暖炉にくべる薪を作っちゃうし、素手で熊を倒すくらいに元気な事を思い出したイケメンのお兄さんは心の中で苦笑していた。

 「お嬢さん、俺がお嬢さんのお婆さんの家に連れて行ってあげるよ。だから・・・目を閉じてしっかり捕まっていてくれ」

 「は、はいっ!」

 イケメンのお兄さんに抱き上げられたヴィルヘルミナは言葉に従い彼にしっかりと抱き着き、ぎゅっと瞼を閉じる。

 自分の腕の中に居る幼子の瞳が閉じている事を確認したイケメンのお兄さんは狼の耳と尻尾を晒す。

 実はイケメンのお兄さん、普段はどこからどうみても人間の男性の姿で人里に現れているが、その本性は金色の瞳を持つ森の主とでも言うべき巨大な狼だったのだ。

 本来の姿に戻れば花畑から少女の祖母が一人で暮らしている家がある森の奥まで数分もあれば辿り着く。

 しかし少女は男が狼である事を知らないので本来の姿に戻る訳にはいかない。

 人型に狼の耳と尻尾を出せば狼の時と比べたら脚力や腕力等といった全ての面で半分以下しか能力を発揮できないが、少女が寄り道をした時間を取り戻すには十分だろう。

 自分を信じて瞳を閉じている少女を抱えているイケメンのお兄さんは驚異的な脚力で少女の祖母が住んでいる森の奥へと駆けて行くのだった。












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