鳥籠姫

白雪の雫

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⑦最強で最凶のヤンデレは残念な転生者(後編)

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二十一世紀のヨーロッパに存在している王室のように開かれていたら、男爵令嬢を妃として迎え入れる事も可能であろう。
だが、【鳥籠姫~あなたの愛に束縛されたい~】の舞台は魔法が発達しているとはいえ、中世~近代ヨーロッパを彷彿とさせる専制君主国家である。
身分が厳格な世界では、男爵令嬢が王太子妃になれる訳がないのだ。
男爵令嬢が王族に迎え入れられた事に関しては、理不尽なのに何故か説得力があるジャンケンのように『ゲームだから』という魔法の言葉で言い訳が通用するだろう。
ブリュンビルデの虐めに負けない芯の強さと健気な心意気、何より純粋で素直な優しい心を買われて───というより『ゲームだからそこまで深く考えなくてもいいんじゃない?』的な理由で、晴れて王太子妃になったヘレナが親善大使として夫であるラインハルトと共に帝国を訪れた事からルードヴィッヒ編が始まる。
ゲームの中のルードヴィッヒは自身にも妻がいるというのに、ヘレナが人妻だと分かっている上で強く心を惹かれるだけではなく、戦争を起こしてまで彼女をラインハルトから奪うのだ。
そこからはもうヤンデレ街道まっしぐら!
ヘレナを自分の後宮に迎え入れたルードヴィッヒは、彼女が逃げ出すのではないか?という不安が常に心を占めていたからなのか、アキレス腱を切断した。それだけでは不安なのか、手枷足枷で拘束した上で室内に閉じ込めてR-18な事をしまくるのだ。
結果、ヘレナは皇子を産み落とす。
(姉貴はルードヴィッヒを情熱的なヤンデレだと言っていたけど、女一人を手に入れる為だけに戦争を起こす男なんて現実にいたら恐ろしいわ!!!)
一人の美女が原因で起こったトロイア戦争
孫策の妻であった大喬、周瑜の妻である小喬───二喬と呼ばれる美女を手に入れる為に起こった赤壁の戦い
女を巡って数多の英雄が策を弄して戦いを繰り広げる物語は場を盛り上げるし見ている分には面白いかも知れないが、現実を考えれば夢はおろかロマンもへったくれもないのだ。
事実、赤壁の戦いの理由は、曹操が二喬を欲したからではなく天下統一である。(赤壁の戦いで呉を破っていたら戦利品の二喬を側室にしていたのでしょうけどね~)
トロイア戦争に関しては実際にあったかどうか不明であるが、それが史実であるとしたら、領土や交易によって得られる利権が欲しいというものであろう。
本当に、自分の気に入った女を手に入れるという理由だけで戦を仕掛ける男など為政者として致命的な失態を犯しているどころか、国のトップとしての器と正気も疑われるのではないだろうか。
(俺だったら、女を手に入れる為だけに戦を仕掛けるトップが治める国から出奔するわ!!!)
女を理由に戦いを起こすのが許されるのは───【神】と呼ばれる存在だけであろう。
(・・・・・・待てよ?ラインハルトは去勢してから城を追放されているんだっけ?でもって、ヒロイン失格なヒロインは両親によって見世物小屋に売られたんだよな?という事は、〇さえよりおっぱいが小さいヒロインは俺の前に現れない???)
墓穴を掘ったヒロインが退場したのだ。
未来に無意味な戦争が起こる事態を避けられた事実に、近い将来に皇太子妃として迎え入れる令嬢を放置プレイせずに済む事にルードヴィッヒは安堵の息を漏らす。
「最後に、ブリュンビルデ嬢ですが・・・・・・彼女は死にました」
(な・・・っ!?)
「ブリュンビルデ嬢が死んだ?!セバスチャン二号、それは本当なのか!!?」
「ルードヴィッヒ殿下・・・何度も言いますけど、私の名前はリュミエルです。セバスチャン二号と呼ぶのはお止め下さい!!!」
「いや!誰が何と言おうがお前はセバスチャン二号だ!!今すぐセバスチャン二号に改名しろ!・・・・・・それに関しては後で話すとしてだ。ブリュンビルデ嬢が死んだとは、どういう事だ?」
名前の事で下らないやり取りをしているよりマシだと判断したリュミエルは話を続ける。
「ラインハルトとの婚約を破棄されたという事に心に深い傷を負ったブリュンビルデ嬢は我が国でも一・二位を争う厳しさで有名な修道院で過ごすはずでした。ですが、その途中で馬車が崖から転落──・・・」
ゲームの中のブリュンビルデは王者に相応しい器を持つラインハルトを心の底から愛していた。ヒロインであるヘレナに対して殺意を抱いたのも、嫉妬に狂ったのも、全てはラインハルトを愛するが故だ。
そんな彼女であれば、ラインハルトが廃嫡されただけではなく城から追放という事態になれば心に深い傷を負うのは必然。修道女として彼の為に祈りを捧げる一生を送りたいと願うのは当然の帰結なのかも知れない。
(俺、ブリュンビルデの乳でポムポムをしてみたかったな~)
前世だけではなく現世でも自分を魅了して止まない、形・大きさ・張り・柔らかさ・乳房と乳首の比率を競う【おっぱいオリンピック】というものがあれば間違いなくメダリストになっていたであろうブリュンビルデの八十八センチのGカップを思い出してしまったルードヴィッヒは、彼女の死を心の底から嘆く。










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ルードヴィッヒがブリュンビルデを悼んでいた頃
「グリーズさん、ノルンさん、エレーネ。市場で買ってきたライスで新しい料理を作ってみたのだけど、味見をしてくれないかしら?」
閉店後
う~ん・・・
「ちょっと柔らかすぎるわね~」
「食べた気がしないよ」
「でも、チーズのコクとベーコンの塩気がマッチしているので味付けはこれでいいと思います」
バターで炒めたライスを煮込んで作った米料理を三人に試食して貰っていた。







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孫策と周瑜に輿入れした時期を考えたら側室であろうと推測が出来る【大喬】と【小喬】を【二喬】ではなく【大橋】、【小橋】、【二橋】と書くのが正しいと分かっています。
でも、漫画・小説・ゲーム・映画では【孫策の妻である大喬】と【周瑜の妻である小喬】と紹介されているし、【江東の二喬】が有名なので、【橋】ではなく【喬】にしています。





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