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⑥ヘレーネという女
しおりを挟む(この男、ディオメテス様と比べたらあれは小さいわ、下手だわ、早いわ、淡泊過ぎるわ、出すもの出したら何もせずにさっさと寝てしまうわ・・・)
平凡な顔立ちをしている夫よりも若く、何より王子様的な外見に惹かれてしまったから差し出された手を取ってしまったヘレーネであったが、共に過ごしている内にパリスの本性が見えてきた。
パリスは顔しか取り柄のない不良物件以外の何者でもなかったのだ。
自分を犯している男に対して心の中で愚痴を零しながら、ヘレーネはパリスの愛撫に感じている振りをしている声を上げる。
「うっ・・・!」
女の胎内で果てたパリスは疲れてしまったのか、そのまま静かに目を閉じる。
「何でこんな事になってしまったのかしら・・・?」
自分が原因で戦争が起こると知っていたら、パリスの手なんか取らなかった!
大体ね、クリュライムネストラ様に女の魅力がないのがいけないのよ!!
聖女だか神子姫だか知らないけど、ここは私を見習って可愛く振る舞うとかして、パリスの心を繋ぎ留めておく努力をしなさいよ!!!
ディオメテスによって開発された肉体はまだ疼いているのだが、それよりもパリスとクリュライムネストラに対する怒りが勝るのか、ヘレーネは二人に対して心の中で毒を吐いていた。
「・・・・・・こいつはクズで女好きだけど、四兄弟の中では父親に一番愛されているわ」
パリスの間抜けな寝顔が瞳に入ったヘレーネが呟く。
もしかしたら、ハーネット王国が勝つかも知れないし?
何より、正后が産んだ王子達と国王が戦死したらこいつが即位するという事もあるのよね?
私、ハーネット王国の王后になっちゃう?
仮に今回の戦争でハーネット王国が滅んじゃったとしても、ディオメテス様は私にベタ惚れだもの♡
夫は庇ってくれるのだから、私が戦犯として殺される心配何てないわ
あれ?
私の人生って、どっちに転んでも薔薇色だったりする?
未来の輝かしい人生に向けて祝いをしなくちゃね
この際、パリスの欠点と戦時中という事実に目を瞑って贅沢三昧しようと決意するヘレーネであった。
これより十数年後に戦争は終結し、ハーネット王国を滅亡へと導いたヘレーネはパリスとの間に産まれた娘と生き別れになってしまうが、夫と共にインフェル王国へと戻った彼女は平凡な一生を送る事となる。
※但し、インフェル王国の王宮のみならず国民達からは『尻軽女』や『売女』といった類の陰口を叩かれていたりします。
パリスとの間に産まれた娘は、子宮を摘出した上で娼館へと売られてしまいました。
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