15 / 32
⑦真祖と聖女-3-
しおりを挟むマダム・ソニアの占いは百パーセントの確率で当たると、王都・エーヴィッヒでも評判が高い。
当然、彼女の店には列が成しているので、リオン達は客に倣い並ぶ。
どれくらい待っただろうか。
「おやおや、お客さんは何をお探しかね?或いは誰かをお捜しかね?どれ、この婆が占って進ぜよう」
リオン達が占って貰う事になったので、ネクロマンサーを思わせる衣装を纏っている老婆が水晶に手を翳しながら何やら呪文を唱える。
「お前さん達の未来は・・・・・・どうやら、そこの四人にとって大切な探し物は見つからないだけではなく妖魔になってしまうようだね。それと、杖を手にしているお前さんの未来は・・・人間でありながら人間でない存在になってしまうようだ」
その証拠が水晶に出ているから覗いてごらん
老婆にそう言われた四人は顔を水晶に近づける。
「この・・・クソ婆が!!出鱈目を抜かすんじゃねぇ!!!」
水晶の中の自分はインキュバスの姿で映っていたものだから、驚きと怒りで頭がいっぱいのリオンは老婆が纏っているローブを掴み殴ろうとするのだが、クリュライムネストラが手にしているアスクレピオスの杖で彼の頭を思いっきり殴る事で彼の行動を阻止した。
「貴様、何しやがる!?」
「当たるも八卦当たらぬも八卦と言ったのはリオンさんですよね?そのリオンさんが占い師を責めるのはお門違いというものです」
それよりもお婆さん、私にも水晶を見せて下さい
先に四人が顔を近づけた事で老婆の占い結果を見られなかったクリュライムネストラが水晶を覗き込む。
水晶には今と比べたら随分と髪が伸びている自分が赤子を抱いている姿と、人間の美を超越している茶色の髪を持つ三十代後半くらいの男性が映っていた。
未来の自分は彼との間に子供が出来るという解釈でいいのだろうか?
(でも、水晶に映っている私はどこからどう見ても人間にしか見えないのだけど・・・?)
老婆の言葉の意味が理解出来ないクリュライムネストラは首を傾げる。
「嫌だ・・・あたいが猫人になるなんて」
「僕が食人花になるなんて・・・」
「私はエキドナになるの?」
リオンのように老婆に襲い掛かろうとはしていないものの、ジェーン達もまた己の未来にショックを受けている。
けっ!
「帰るぞ」
老婆の占いは信用していないが、最悪な未来しか見せなかったという事実に苛立ちを隠せないリオンは仲間に声を掛けると店を出て行く。
「お婆さん、連れの無礼をお許し下さい」
老婆に頭を下げた後、クリュライムネストラは代金を払うとリオン達の後を追いかけるように店を出て行くのだった。
0
あなたにおすすめの小説
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど
ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。
でも私は石の聖女。
石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。
幼馴染の従者も一緒だし。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる