ノスフェラトゥ

白雪の雫

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⑦真祖と聖女-9-

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 リオンとローズを抱えて近くの部屋に逃げ込んだメリーアンとジェーンは、クリュライムネストラにこれからどうするのかを尋ねる。

 「私が二人を元に戻します」

 「カーミラに噛まれた二人を元に戻せるの?!だったら、元に戻る薬や方法を見つける必要なんてないじゃないか!」

 「ところがそうでもないのですよ」

 吸血鬼に噛まれた事で妖魔と化した人間を元に戻せるのは噛まれた直後から一日・二日までが限度で、注ぐ霊力も僅かで済む。しかし、それ以上となると魂そのものが完全に妖魔のものへと変質しているので自分の霊力の全てを注いでも不可能なのだと、クリュライムネストラが二人に教える。

 「人間の力には限界があるという事です」

 これ以上、無駄話に付き合っている暇などない事を言葉と態度で示したクリュライムネストラは、眠っているリオンとローズに向けて何やら呟く。





 彼の者の魂を蝕む悪しき力よ

 我の霊力ちからにて汝等の穢れを払わん





 メリーアンとジェーンにはクリュライムネストラが何を言っているのか全くと言っていいほど分からないが、その声は澄んでいながら力強さを感じさせるものだった。

 それもそのはず。

 魂の浄化を使う際に発する言葉の一つ一つには霊力が込められているのだ。

 リオンとローズの首筋に付いていた、カーミラに噛まれた跡は綺麗に消えただけではなく、インキュバスとエキドナへと変化していこうとしていた二人の肉体が人間のものへと戻っていく。





 「成る程・・・ああやって昔のメディクスは妖魔と化してしまった人間を元に戻していたのだな」

 窓から見える室内の様子を眺めている、愛くるしいリスに変化しているレーヴェナードが呟く。

 「我が君。あの者達の目の前でメディクスを我が君の眷属に」

 「いや、私に匹敵する霊力を持つメディクスを眷属にするのは不可能だ」

 レオパルドが、より屈辱を与える意味で提案したのだが、それはレーヴェナードによって否定されてしまった。

 「我が君と同等の霊力を持つ存在?!」

 メディクス家の者が、強力で膨大な魔力を持っているが故に人間の世界では【魔王】とも言われているレーヴェナードと同じレベルの霊力を持っているという言葉にレオパルドは驚きを隠せないでいる。

 魔力と霊力は表裏一体。

 闇と光のように本質は正反対であるが、力の根幹は同じなのだ。

 「だが、恐怖に歪んだ顔をする人間共の目の前でメディクスに屈辱を与えるのもまた一興・・・」

 自分と同じくらいの霊力を持つメディクスの血はどのような味がするのだろうか?





 デザートワインのように甘くて、シルクのように滑らかな舌触りなのか

 ビロードのようにきめ細やかで、薔薇のように芳しい香りなのか





 メディクスの血を引く者の血の味を想像したレーヴェナードは霧に変身すると、彼等がいる部屋へと侵入する。






※ライムの魂の浄化の呪文は、アラビア文字みたいなものにルビを振っているものをイメージしているですが、どう書けばいいのか分からないので日本語です。






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