乙女ゲームに転生した男の人生

白雪の雫

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⑥嫉妬と本音-4-

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 「伯父上」
 「伯父様」
 「ザクレウス、ブリュネイア。久し振りだな」
 アイドネウスの前に現れたのは、河川を司るザクレウスと森を司るブリュネイア。
 神話ではザクレウスとブリュネイアはアイドネウスの子供であると伝わっているが、事実は異なる。
 アイドネウスからから見て二柱は甥と姪になるのだ。
 「確か、こうして顔を合わせるのは二百年振りでしたか・・・」
 「伯父様。私達姉弟を呼び出したという事は、力を貸して欲しいと解釈してよろしいのでしょうか?」
 「ああ。実はライトアンバー男爵とやらの娘だという、くねくねとして気持ち悪い奇乳女が俺の愛人を侮辱した。 お前達はその男爵家が治める土地に住む者達全てを殺してくれ」
 二柱に対してそう告げたアイドネウスの瞳は怒りで青から金色へと変化していた。
 「伯父上の愛人を侮辱・・・?」
 うわ~っ・・・奇乳女って馬鹿ですか?!
 あぁ、真性の馬鹿だから神の愛人を侮辱するという大それた事が出来るんだよな~
 心の底から呆れたと言わんばかりに、ザクレウスが自分の額を押さえて呟く。
 神の愛人を侮辱したという事は、その神をも侮辱した事を意味する。
 今回の場合、ミストレインを罵ったイコールアイドネウスを侮辱したのだと解釈され、その報いはシャルロッテだけではなく彼女の家族、そしてその土地に住んでいる何も知らない領民までもが受けるのだ。
 一言で言えば、連帯責任である。
 神話では、アイドネウスが浮気をした自分の情婦とその家族だけではなく国諸共滅ぼしたと記されているが、あくまでもそれは彼の天空神としての強大な力を謳うものでしかない。
 実際のアイドネウスは己の子孫を騙る皇族や王族が治める国を怒りで滅ぼした事はあっても、情婦の浮気で何の関係もない赤の他人に連帯責任を負わせていないのだ。
 だって、当時のアイドネウスには愛人はおろか情婦などいなかったのだから。
 「伯父様、一つ聞いてもよろしいでしょうか?伯父様の愛人という御方は伯父様がなさろうとする事を──・・・」
 「いや・・・あいつは知らない。寧ろ、必死になって止めるだろうな・・・」
 「でしたら、伯父様は神の掟をお教えした方がよろしいかと思いますわ」
 「時が来れば、俺が教えるさ」
 そう答えた時に浮かんでいたアイドネウスの笑みは穏やかで、その時が訪れるのを楽しみにしているものだった。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










 三人の目の前に広がっているのは、刃と化した河の水と凶器と化した森の草木から逃れる術もなく命を奪われていく領民の姿。
 そして、怒りで双眸を金色に輝かせているアイドネウスによってありとあらゆる拷問を受けた挙句、殺されてしまったライトアンバー家に仕える侍従とメイド達の死体だった。
 「アイドネウスさん・・・?私はただ、あの男のような大女から気高くて美しいアイドネウスさんを解放しようとしているのよ?」
 それなのに・・・何でこんな惨い事が出来るの!!?
 「たかが平民の分際で貴族に逆らうとは・・・貴様は八つ裂きにしてやる!!!」
 お前のせいで殺されたと言わんばかりに責め立てる死体の目から顔を背けながら、シャルロッテと彼女の両親が怒りに任せて一斉にアイドネウスを非難する。
 「八つ裂き?この俺を?」
 神を死刑にするという戯言を口にした人間を嘲笑した後、アイドネウスは本性を晒す。





 三人の目の前に現れたのは、月のように儚い光を帯びた、そして見る者に力強さと神々しさを感じさせる銀色の美しい毛並みを持つ一頭の巨大な狼───フェンリルだった。





 「そこの奇乳女は俺の愛人を大女と罵った・・・。即ちそれはこのアイドネウスを侮辱した事を意味する──・・・」
 肩を寄せ合い震わせているシャルロッテ親子を見下ろしているフェンリルが雷を放つ。すると、凄まじい爆音と共に雷が雨のように降り注ぎ闇の帳に覆われている空が昼間のように明るくなる。
 「狼・・・フェンリル・・・アイドネウス・・・雷霆・・・天空神・・・世界崩壊・・・」
 神話で語られている光景の一つが広がっている事実に、シャルロッテ親子は腰を抜かして驚愕するしか出来ないでいる。
 「伯父上、こっちは終わりました」
 「ザクレウス、ブリュネイア。お前達のおかげで奇乳女親子の始末に集中する事が出来た」
 フェンリルから人の姿になったアイドネウスが甥と姪に感謝を告げる。
 「これくらいお安い御用ですわ・・・ってあら?伯父様を侮辱した人間、気が狂ってしまいましたわね」
 自分が治めている土地が一瞬にして滅んでしまったからなのか、生き残ったライトアンバー男爵達は正気を失っていた。
 「あひゃひゃひゃひゃひゃ」
 口端から涎を垂らし、焦点の合っていない瞳で虚空を見つめて奇声を上げている三人に満足したのか、三柱は止めを刺す事なく去って行く。






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