乙女ゲームに転生した男の人生

白雪の雫

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⑩報告と決意-3-

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 『灯夜君、儂がティフォーネじゃ。お主には孫の我が儘で迷惑をかけてしまったな』

 霧雨 灯夜を殺した事に対する創造神という雲の上の存在からの謝罪には、どのように応えるのが正解なのだろうか?

 (『気にしていない』と言った方がいいのかしら?)

 この答えは何か違うような気がする。

 (・・・・・・)

 「ティフォーネ様。私は異世界転生を体験しただけではなく、リーベンデールでは日本にいた頃よりも楽しく過ごしていますし、それに・・・霧雨 灯夜のままであればアイドネウスとは恋人のように振る舞えなかったのですから、女性として生まれ変わった事に感謝しているくらいです」

 水晶越しであるが、ミストレインはティフォーネに頭を下げて礼を告げる。

 『灯夜君・・・君は本当にいい子じゃな。それに比べて、あの乳の小っちゃい姉ちゃんは・・・・・・』

 「爺、乳の小っちゃい姉ちゃんって誰の事だ?」

 アイドネウスの言葉にティフォーネは、自分が把握していなかった転生者だと教える。

 「爺が言っている乳の小っちゃい姉ちゃんってどんな奴だ?」

 『名前は知らぬから儂は乳が小っちゃい姉ちゃんの事を電波と呼んでいるが、その電波はアイドネウスに対して何やら悍ましい妄想と思考を垂れ流していたのぅ・・・』

 自分はアイドネウスの妃になる女だの、ヒロインを虐めたらアイドネウスが天罰を下すだの、ヒロインのライバルはアストライアー、今はミストレインだったな。灯夜君じゃないといけないのだの・・・何やら理解出来ぬ事を言っておったな

 これが、その電波じゃよ

 孫の問いにそう答えたティフォーネは、手にしている杖を使ってリビングの壁に向かって光を放つ。





 『この指輪は陛下が私に贈ってくれたものです!今すぐ返しなさい!』

 『嫌よ!モブなんかよりヒロインに着けて貰った方が指輪も喜ぶはずだもの。そうだ。この首飾りもあたしが貰うわね』

 他人を見下す視線を向けてそう言ったカサンドラは、フローラが身に着けている首飾りに手を伸ばして鎖ごと引きちぎる。

 『フローラ様!カサンドラ様!争うのはお止め下さい!!』





 壁にはピンク色の髪の少女──電波ことカサンドラとフローラが何やら言い合っている姿と、二人の間に入った侍女達が争いを止めるが映っていた。





 『二人共、何をしておる?!』

 カサンドラとフローラの争いを止めたのはカルロスだった。

 『カルロス様ぁ~♡フローラ様がぁ~、あたしを虐めるんですぅ~( ;∀;)』

 『フローラ!そなたは凝りもせずに余の愛しのカサンドラを!!』

 自分に縋りついてくるカサンドラの小さな身体が恐怖で震わせているものだから、カルロスはフローラを威嚇する意味も込めて怒鳴りつける。

 『陛下、違います!カサンドラは陛下が私に贈ってくれた指輪と首飾りを奪ったのです!!』





 (顔だけが取り柄の攻略対象者その一。フローラが言っている事は真実よ)

 自分が生き残る為に必死だったミストレインはその一環としてバカ殿を演じていたし、フローラはそんな姉を心の底から軽蔑していたので姉妹仲は良くなかった。

 だが、今回はフローラの言い分が正しいのでミストレインは心の中で妹に声援を送る。

 届かないけど。





 『陛下、フローラ様が言っている事は真実です!』

 『そう・・・なのか?カサンドラ、侍女達の言葉は本当なのか?』

 フローラ付きの侍女の言葉にカルロスは、自分の腕の中にいるカサンドラに優しい口調で問い掛ける。

 『違いますよぉ~♡カサンドラはぁ~、フローラ様にぃ~、虐められたんですぅ~!!』

 馬鹿っぽい口調でそう答えたカサンドラは、今にも泣きだしそうな顔でカルロスに訴える。

 『フローラ・・・そなたには今夜一晩、地下牢での反省を命じる』

 愛しいカサンドラに縋られているからなのか、寵姫の可愛さに魅了されているのか、カルロスが下したのはフローラにとって理不尽なものでしかなかった。

 『そ、そんな・・・!陛下、フローラ様はカサンドラに陛下からの贈り物を盗まれた被害者です!!』





 「アイドネウス・・・ティフォーネ様が仰っている電波って──・・・」

 「時計台のカフェで逆ハーレムをしていただな」

 「カルロスの奴、自称ヒロインにすっかり骨抜きにされちゃってるよ・・・」

 (これのどこをどうすれば、名君と呼ばれるのかしら?あ~っ・・・攻略対象者って脳内お花畑が基本だから、ヒロインの讒言にコロッと騙されるのね)

 ピンク頭の顔には企みの成功の喜びと彼女の性根の悪さが滲み出た黒い笑みが浮かんでいるのだが、カルロスにはそれ見えていない。

 ((ヒロインって純粋無垢な恋愛スイーツ脳だから、浮かべる微笑みは可愛いというのが鉄板じゃなかったっけ?))

 ミストレインとアイドネウスは、すっかりカサンドラに骨抜きになってしまっているカルロスに対して心の底から呆れ果てていた。

 『儂が言いたいのは、電波に気を付けろという事じゃ。それと、電波はアイドネウスが自分を溺愛していると虚言を吐いている阿婆擦れじゃから、もし何らかの形で顔を合わす機会があれば場末の風俗嬢にしてやってくれぬか?』

 「それって・・・電波にとって褒美以外の何物でもないような気がするのだが?」

 カサンドラの本命が自分である事を知らない、否、知った上でアイドネウスがカサンドラと顔を合わせたくないと面倒くさそうに答える。

 『アイドネウス、お前の気持ちも分からぬでもない。じゃがな、電波が灯夜君・・・アストライアーが生きていると知ったらどのような行動を取ると思う?』

 リーベンデールを乙女ゲームとやらの世界と思い込んでいる自称ヒロインの事だから、どんな手を使ってでもミストレインを捕らえるだけではなく、逆ハーレムとやらの一員になってしまっているロードライト帝国の若き皇帝の手で始末させようとする可能性があるとティフォーネが告げると、アイドネウスは思わず苦虫を潰したように顔を顰める。

 「分かった。電波と会う機会があったら俺の子孫を自称する馬鹿皇帝とやらに風俗嬢にしろと命じておく。その代わり、電波の来世、その次の生も・・・前世の記憶を持たせたまま泡専門の性奴隷になる運命にしてくれ」

 『アイドネウス。それってお主が言っていたように、男好きの電波にしてみれば褒美でしかないぞ』

 「だからだ」

 例えば、シチューが大好物な人間に毎日シチューを食べ続けさせたら飽きが来るだろ?

 それと同じ事を電波にするのだとアイドネウスが伝えると、ティフォーネは何となく納得したように同意を示す。







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