乙女ゲームに転生した男の人生

白雪の雫

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⑩報告と決意-4-

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 『次は灯夜君・・・いや、ミストレインの決意を聞きたい』

 「私の決意、ですか・・・?」

 『そうじゃ。そなたは神后になる覚悟があるかどうか・・・儂はお主の口から聞きたいのじゃ』

 ザクレウスとブリュネイアが、自分をアイドネウスの神后になる立場の人間だと言っていた事を思い出す。

 「ティフォーネ様、現代でも神と人間の婚姻というのはあるのですか?」

 『昔と比べたら頻繁とは言えぬが、人間が知らぬだけで現在でも行われているな。人間の世界では王侯貴族と平民が結婚出来ぬらしいが、神の世界では相手の種族と身分は問わぬのが普通じゃ』

 敢えて問われるとすれば、本人の心と魂の質じゃな

 ミストレインの問いにティフォーネが答える。

 「心と魂の質・・・ですか?」

 自分が生き残る為だけにバカ殿を演じていただけではなく、妹をロードライト帝国の皇帝に売った人間の魂のどこを気に入ったのか、疑問を抱かずにいられないでいるミストレインは声を上げずにいられないでいた。

 「・・・・・・今夜一晩、考える時間を頂けませんか?」

 『・・・・・・あい分かった』

 心の整理をしたい今のミストレインには、そう答えるのが精いっぱいだった。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










 ミストレインは人間だ。

 人間として生き人間として死にたいと、若い盛りである今をアイドネウスと共に過ごし、老いの兆候が見え始めたら自分から離れようと思っていた。

 だが、これは残される相手の事など一切考えていない己のエゴなのだ。

 (どのような結論を出すのが正しいのかしら・・・?)





 アイドネウスと共に人生を歩みたい
 永遠の時を生きる苦痛を味わいたくない





 人々を眠りに誘うかのように夜に君臨する月を眺めながら、矛盾する二つの思いを抱えているミストレインは考える。

 「ミストレイン・・・」

 そんな彼女の部屋にやって来たのはアイドネウスだ。

 ノックしてから扉を開けてミストレインの部屋に入ったアイドネウスは彼女の隣に腰を下ろす。

 「アイドネウス・・・私、分からないの──・・・」





 アイドネウスと共にいたいという思い
 人間でありながら人間でない存在になる事に対する恐怖
 アイドネウスを残して先に逝く事に対する不安





 「アイドネウスと平穏な日々を送りたい。でも、自分の選択を後悔して何時か気が狂ってしまうのかも知れないと思うと、自傷行為を繰り返しそうな気がするの」

 「そうか・・・」

 涙を流しながら、己の選択次第で訪れる未来に対する得体の知れない不安と恐怖を語るミストレインにアイドネウスは静かに寄り添う。

 「ミストレインの悩みは当然だな。・・・・・・それで、お前はどうしたいんだ?」

 永遠の時間を生きるのが辛いと思うのであれば、人間として生きる道を選べばいい

 「私が死んだら・・・アイドネウスはどうするの?」

 「生まれ変わったミストレインと再会するまで待つだけだ」

 待つ事には慣れているんだ

 (私は・・・)

 優しい口調でそう答えてくれているアイドネウスの顔と瞳に哀しみの色が浮かんでいるが涙は流していない。

 それなのに、泣いているように見えてしまったミストレインの胸が締め付けられる。

 「アイドネウス」

 私は・・・





 決意を込めて天空神の名を口にしたミストレインはアイドネウスの背中に腕を回す──・・・。




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