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⑩報告と決意-4-
しおりを挟む『ハロー。ハロー。グッドモーニング』
水晶越しにティフォーネがリビングに居並んでいる者全員に朝の挨拶をする。
「「「「グ、グッドモーニング・・・」」」」
そんなティフォーネに一人と三柱が半ば呆れ気味な表情で挨拶を返す。
『早速だが、本題に入るぞ。ミストレイン、お主の答えが聞きたい』
「!!」
ティフォーネに話しかけられたミストレインは両手の拳を強く握り締める。
「・・・自分の選択を後悔する日が来るかも知れないし、あの悩みは何だったのかと笑う日が来るかも知れないと思っています」
ふむ
『それで?』
ミストレインから何かを感じ取ったのか、ティフォーネが先を促す。
「人間として生きる道を選んだ私は・・・何時か別の個体に生まれ変わる。だけど、それは今の私であって私でない・・・」
何も知らない真っ新な状態で生まれ変わるという事は、アイドネウスと過ごした日々の思い出だけではなく、彼に対して抱いている愛情が消えてしまう事に恐怖を覚えたのだと、ミストレインは声を震わせながら己の気持ちを吐露する。
「人間である自分が別の存在になる事に対して恐怖があるのも事実です。でも、人間として生き人間として死ぬ道を選んだ結果・・・アイドネウスの心に爪を立ててしまうのなら、私の心に傷を負った方が遥かにいい・・・・・・」
私はアイドネウスと共に永遠の時間を歩みたい
『・・・・・・後悔はせぬか?』
ティフォーネの言葉にミストレインは力強く頷く。
『では、これを飲むのじゃ』
手にしている杖をティフォーネが振り上げると、テーブルの上に薄紫色の液体が注がれているゴブレットが出現する。
「ティフォーネ様、これは一体・・・?」
『【神々の酒】じゃよ』
「神々の酒って、確か神話に出てくる飲み物というか嗜好品ですよね?」
ミストレインは、自分の目の前にあるゴブレットを不思議そうに眺める。
神々の酒というのは葡萄を発酵させて出来た酒、牧場で育てている白牛のミルク、蜂蜜を混ぜて作った甘い酒とも、いや、これこそがエリクサーであると一部の神学者の間が真面目に主張している代物だが事実は異なる。
ティフォーネの説明によると、神々の酒は全て天界で採れたもので作った酒で神にとっては単なる嗜好品に過ぎないが、人間がこれを飲むと嗜好品ではなくなる。
人間にとって神々の酒とは、それを口にした者の魂をリーベンデールに留めて輪廻転生を繰り返させる為の食物───一種の黄泉戸契のようなものなのだ。
『これにはエリクサーを混ぜてある。飲めば、お主は神族の一員・・・神后となるだけではなく不老不死となるのじゃが・・・改めて問う』
覚悟はあるか?
親しい友人や知人、妹の子孫は年を重ねれば老いていき、そして死んでいくというのに、自分だけは永遠の時間を生きていく
何れ、その苦しみが自分を襲う事は覚悟の上だと・・・何も行動しないで後悔するより、行動して後悔する方がいいと告げたミストレインは躊躇う事なくゴブレットに注がれている液体を飲み干す。
『灯夜君・・・いや、ミストレインよ。これでお主は我等と同じ存在となった』
「はい・・・」
『神族の一員になったからといって、そう深く考えなくてもいいんじゃよ』
「そうですよ。神后といっても、人間の皇后や王后のように伯母様は国を背負うという立場ではないのです」
「笑ったり、泣いたり、怒ったり、悩んだり──・・・」
レンちゃんと精霊達と共にアイテムを作ったり、素材の採取に世界各地を巡ったり、休みの日は買い出しや観劇に出掛けたり、ごく普通に生活を送ればいいのだというアイドネウスの言葉に、緊張で強張っていたミストレインの身体から力が抜ける。
「ミストレイン・・・俺の側にいてくれ。これからは共に支え合って生きて行こう」
「はい・・・」
感極まったミストレインは喜びの涙を流しながら言葉を受け入れる。
その日
ティフォーネの言葉により、一人の少女が神族に加わった──・・・。
数百年後、彼女は語る。
色々と苦労はあったけれど
あの時の選択は正解だった
ねぇ、アイドネウス
私、幸せよ・・・
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