カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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⑨その頃の聖女-1-

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 「ねぇ、紗雪さん・・・私が出資するから料理店を・・・カフェや喫茶店を開いたらどうかしら?」

 「は?」

 日本の料理に飢えている美奈子が紗雪を口説いている頃










 「相変わらず、この国の料理はクソ不味いわね!!」

 こんなもの、食べられるか!!!

 今すぐ作り直しなさいよ!!!

 夕食として出された、香辛料をふんだんに使った肉料理。

 砂糖をこれでもか!と言わんばかりに使ったケーキの不味さに、茉莉花は某漫画に出てくる芸術家のように、ちゃぶ台返しならぬテーブル返しをしていた。

 「「も、申し訳ございません!!」」

 邪神・サマエルの恐怖から世界を救った聖女の機嫌を損ねてしまったものだから、茉莉花付きとなった二人の侍女は平身低頭に謝りながら床に散らばっている皿と料理を片付けていく。

 「次こそは、あたしが満足する料理を出すのよ!!!」

 さっきのようにクソ不味い料理を出したら、エドワードに頼んであんた達をクビにして貰うからね!!!

 「「か、畏まりました!」」

 王宮内の人事の采配と権限は王太子ではなく王妃にあるので、エドワードは自分達をクビにできないのだが、一刻も早く茉莉花から離れたい二人は、その事実を口にする事なく部屋を出て行くのだった。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










 「何なのよ、あの女!」

 「王太子殿下とギルバード様に気に入られているからって生意気なのよ!!」

 「あれが邪神を倒したなんて未だに信じられないわ!」

 良く言えば小柄で華奢、悪く言えばチビで貧乳の茉莉花に対する愚痴を零す。

 「聖女は『小柄で愛くるしいところが庇護欲をそそる』らしいけど、あの女の声が耳に入るだけでイラッとするわ!」

 「分かる!あの女の媚を売っていると言えばいいのか、猫なで声と言えばいいのか・・・とにかく耳障りなのよ!」





 『エドワード様ぁ~♡茉莉花、あの宝石が欲しいですぅ~♡』





 『エドワード様のぉ、苦しみも知らないシーラ様ってぇ、公爵令嬢の分際で生意気ですよぉ!』





 『ギルバード様ぁ~♡剣を持っている姿がとても凛々しくて格好いいですぅ~♡』





 『ギルバード様にぃ、意見するなんてぇ、オリビア様って高慢な女ですよねぇ!』





 茉莉花の間延びした舌足らずな声を思い出してしまった二人の侍女は思わず身体を震わせる。

 「貴女達。無駄口を叩いていないで自分の仕事をしなさい!」

 たまたま通りかかった侍女頭が二人を注意するのだが、彼女達が聖女付きの侍女で手にしている割れた皿や残飯を目にした事である程度の事情を察したのか、それ等を早く片付けるようにと言ってその場から離れる。









◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










 「あの女は私が作った料理の何が気に食わないんだ?!」

 不味くて食べられない!

 今すぐ作り直せ!

 聖女の不満を侍女達から告げられた王宮の総料理長は、高価な香辛料や砂糖をたっぷり使って作った自分の料理にケチをつける、厨房に居ない茉莉花に対して文句を垂れる。

 「聖女様・・・いえ、あのチビで貧乳の小娘が言うには、『香辛料を使い過ぎて舌が麻痺しそう!』とか『砂糖の塊を食べさせるなんて、あたしを糖尿病にしたいの?!』だそうです」

 「私が作った料理が食べたくないのであれば、自分で作ったらいいんだ!!」

 茉莉花は聖女であり、救国の英雄である。

 だからこそ、総料理長は彼女の為に心を込めて朝食・昼食・夕食を作っているのだが、その度に不満しか漏らさないのだ。

 遂に堪忍袋の緒が切れた総料理長は聖女・・・いや、チビで貧乳の小娘の為に二度と料理を作らないと顔を真っ赤にして宣言すると、エプロンを外して厨房を出て行く。

 厨房に残されたのは、聖女付きの侍女と料理人と見習いの者達だけ──・・・。

 「あの、俺達の賄いで良ければ」

 見習いの一人が侍女に声を掛ける。

 「・・・お願いできるかしら?」

 見習いは聖女の為にベーコンと野菜のスープ、白パンを用意するのだが、今度は『味付けが薄すぎる!』『白パンなのに固い!』と、再びちゃぶ台返しならぬテーブル返しをされるのだった。






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