65 / 465
⑳冷製パスタ-4-
しおりを挟む紗雪とレイモンドが厨房でコーンスープと冷製パスタを作っていた頃
「今だから分かるけど、ランスロットは昼食時と夕食時になれば家を出ていたのよね」
急に金遣いが荒くなった
家に居ても落ち着きがなくなった
何日も家を空けるようになった
覚えのない香水の匂いを漂わせるようになった
服の趣味が変わった
例を挙げればキリがないが、ランスロットには外に情婦を囲っている男の言動が何一つ当て嵌まっていなかったのだ。
「言われてみれば、確かにそうですよね」
食堂では、端正な顔立ちをしている淡い金髪の青年が穏やかな笑みを浮かべながら話すエレオノーラの言葉に同意を示していた。
青年の名前は、グスタフ=ロードクロイツ。
ランスロットとエレオノーラの第一子にしてレイモンドの兄、そして次期侯爵という立場にある男だ。
「レイモンドが拠点にしている家に行くと言えば、私だけではなく母上も父上が浮気をしているのではないか?と、気に病まずに済んだのですよ!?」
『グスタフ、ベルンハルト、レイモンド。心に決めた者が居るにも関わらず情婦や情夫を作るという事は、お前達の男としてだけではなく人間としての価値を下げる事に繋がる』
『父としてだけではなく、一人の男としても、私はお前達に伴侶となる娘を苦しめた挙句、心を殺す最低な人間になって欲しくないのだ』
幼い頃からランスロットにそう言い聞かせられて育った影響なのか、グスタフを含む三兄弟は情婦や情夫を作る人間というものを嫌っていた。心の底から軽蔑していると言ってもいい。
愛妻家であるランスロットの行動と、エレオノーラの落ち込んでいる姿を目の当たりにした時、グスタフも母と同じように父が外に女を囲っているのではないか?と疑っていたのだ。
それが──・・・
父が母方の祖父のように愛妾を作っていなかったという事実に安堵したのは確かだが、同時にレイモンドの家で食事を済ませると言って欲しかったというのが、グスタフの本音である。
「その事については改めて謝罪する」
「あなた・・・私とグスタフは気にしていませんわ」
レイモンドの家で豚の角煮とアイスクリームを食した日の夜
ランスロットから謝罪の言葉を聞いた事で、また、一晩中傍に居てくれた事でエレオノーラの心は癒されたのだ。
(それに・・・)
イヤン♥(/∇\*)。o○♡
情熱的な一夜が明けた次の日はベッドの住人になってしまったが、夫が甲斐甲斐しく世話をしてくれた事を思い出してしまったのか、頭を下げようとするランスロットを止めるエレオノーラの顔は赤く染まっていた。
(あ゛っ・・・)
「お、お義父様をそこまで虜にさせる異世界の料理ってどのようなものなのか、興味がありますわ・・・」
話題を変える意味もあるが、このままでは空気がショッキングピンクになってしまうと察してしまったのだろう。妖艶という言葉が相応しい女性が二人に話しかける。
女性の名前は、アルベルディーナ。グスタフの妻であり、今年の春に娘のリリアーヌを産んだばかりだ。
「異世界の料理はロードクロイツ・・・いや、キルシュブリューテ王国とは比べ物にならない程の美味であるとだけ言っておこう」
「ええ。私はショーユで煮込んだ豚の角煮、アイスクリームとジェラートとカステラというデザートしか食べた事がないけれど、どれも美味しかったわ」
「後、醤油はクッキーにも使えるのだそうだ」
「「はぁ・・・」」
ランスロットとエレオノーラは嬉々として語るが、名前だけ言われてもどのような料理なのかが思い浮かばないグスタフとアルベルディーナは適当に相槌を打つしか出来ないでいる。
コンコンコン
「失礼いたします」
そんな彼等が居る食堂に、キッチンワゴンを押した給仕達が入って来た。
「本日の夕食は、レイモンド様とサユキさんが作られた異世界の料理です」
給仕達が四人の前に料理──・・・コーンスープとオムレツと冷製パスタを置いていく。
「生ハムのピンク、アスパラガスの緑、モッツァレラチーズの白で鮮やかなパスタ料理となっているわ」
「オムレツの具材は塩漬けのタラではなく、ジャガイモ・赤ピーマン・ズッキーニを使っているのか?」
「黄色いスープは何なのかしら?」
初めて見る異世界の料理に、四人は興味津々だ。
神よ、あなたの慈しみに感謝してこの糧をいただきます
四人は目の前の料理を食べ始める。
15
あなたにおすすめの小説
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
本物の聖女なら本気出してみろと言われたので本気出したら国が滅びました(笑
リオール
恋愛
タイトルが完全なネタバレ(苦笑
勢いで書きました。
何でも許せるかた向け。
ギャグテイストで始まりシリアスに終わります。
恋愛の甘さは皆無です。
全7話。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
好感度0になるまで終われません。
チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳)
子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。
愛され続けて4度目の転生。
そろそろ……愛されるのに疲れたのですが…
登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。
5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。
いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。
そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題…
自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる