カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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㉗ちくわパンとカルツォーネ-6-

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 次の日の朝

 「皆さんには縄のような太さにしたパン生地と、ちくわを作って貰います。レイモンドさんはマヨネーズを作って下さい」

 「マヨネーズ!?紗雪、殿は本気でそれを言っているのか!?」

 レイモンドはマヨネーズに刻んだゆで卵とピクルスと玉ねぎを混ぜて作るタルタルソースを付けて魚介類のフライを食べた事がある。

 しかし、その時に使ったタルタルソースの材料となるマヨネーズは紗雪がネットショップで購入したものだ。

 ちなみにマヨネーズの材料は卵黄、油、塩、酢。

 それ等をクリーム状になるまで混ぜるだけで出来る調味料なのだが魚同様、生で卵を食べる習慣がキルシュブリューテ王国にはないのでレイモンドは思わず声を荒げる。

 「レイモンドさん、私が何も考えていないと思う?」

 「あっ・・・」

 シャーベット、カスタードプリン、カスタードクリーム

 卵を使ったデザートを作った時、紗雪は火を通すものだけを自分や料理人達に教えていたし、魚を生で食べる刺身を広める気等ないと言っていたではないか。

 という事は、今回作るマヨネーズは火を通して使うのだろう。

 「済まない。俺の早とちりで勘違いしてしまった・・・」

 紗雪の意図を察したレイモンドが謝罪の言葉を口にする。

 「いいのよ。それに、マヨネーズの原料と作り方を知っていたら、そう考えてしまうのも当然だわ」

 一瞬でも疑ってしまった事を謝るレイモンドに、紗雪は気にしていないと笑みを浮かべて告げる。

 「お嬢様?マヨネーズとは一体?」

 「ソースの一種ね」

 異世界・・・日本ではサラダや揚げ物、お好み焼きやたこ焼きといった粉物にかけるソースだが、個人によって好き嫌いが分かれるかも知れないし、肉料理の時にかけるベリーのソースのように火を通していないのでキルシュブリューテ王国では受け入れられない可能性があるのだと、マヨネーズが何なのかを聞いてきた料理人達に話す。

 「でも、お嬢様は・・・マヨネーズとやらを使うが、ベリーのソースのように火を通すのですよね?」

 「もちろん」

 マヨネーズが火を通していないソースという事実に料理人達はgkbr状態になってしまったが、紗雪の一言に安堵の息を漏らす。

 「でしたら安心です!!」

 冷蔵ボックスと冷凍ボックスがあるとはいえ、食生活と育った環境からキルシュブリューテ人が卵を生で食べる事に忌避感を抱くのは当然だ。

 国によって食生活は異なるものなのだと、紗雪は改めてそう感じていた。

 「私は今から鱈を下ろすから、皆さんは小骨を取り除いて下さい」

 「はい!」

 一部の料理人達が中種を使ってパン生地を、レイモンドがマヨネーズ作りを進めている中、紗雪が三枚に下ろした魚を料理人達が丁寧に小骨を抜く。

 その間に紗雪は冷凍ボックスから氷を出して氷水の準備と、卵を黄身と白身に分けていた。

 「レイモンドさん、マヨネーズを作る時はこの黄身を使って頂戴」

 「ああ、分かった」

 卵は高級食材の一つである。

 マヨネーズを作る為に別の卵を使うのは勿体ないと思った紗雪は、黄身が入っている器をレイモンドに渡す。

 レイモンドが紗雪から受け取った黄身でマヨネーズを作っている間、料理人達が適当な大きさにカットした魚を氷水で洗う。これは、魚の臭みと脂を除く為だ。

 氷水で洗った魚に付いている水気を清潔な布巾で拭った。

 ミキサーに似た魔道具に魚、昨日作った片栗粉、卵白、塩を入れたらスイッチを入れてペースト状にする。

 ペーストになった魚をミキサーから容器に移すと筋と皮を取り除く為、濾し器で裏漉しにする。

 「後はこれを棒に巻いてコンロで焼いたら、ちくわの完成なのだけど・・・」

 棒に巻いたすり身が白色になり焼き色が付いていく様を眺めている紗雪は空洞の部分には何を入れればいいだろうか?を考える。

 「チーズとマグロのオイル漬け・・・ツナマヨ。どれにするべきか」

 他にもアレンジしたものがあるのかも知れないが、紗雪が知っているのはこの二種類だけだ。

 (ちくわパンって確かパンの上にマヨネーズを少しかけるのよね?だったら、ツナマヨは避けた方がいいかしら?)

 「・・・・・・・・・・・・」

 悩んだ末に紗雪が出した結論は、チーズとツナマヨのちくわパンを作るというものだった。

 「紗雪殿、このマヨネーズをどう使うんだ?」

 「ありがとう、レイモンドさん」

 卵黄、酢、塩が入ったボウルにオリーブオイルを少しずつ加えて泡立て器で混ぜる事でクリーム状になったマヨネーズを紗雪に渡したレイモンドは使い方を尋ねる。

 「このマヨネーズはパンの上に塗る為と、ツナ・・・マグロのオイル漬けと和えるのに使うの」

 「マグロのオイル漬けとマヨネーズ・・・ツナマヨは分かるが、パンの上に塗るという事は、ちくわパンというのはハンバーガー・・・いや、ウィンナーを挟んでいないホットドッグのようなものなのか?」

 「形としてはホットドッグ・・・少し違うけどクリームを詰めていないコロネに近いかも知れないわね」

 説明するより実物を作った方が納得すると思った紗雪は、ちくわパン作りに取り掛かる。









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