カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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㉗ちくわパンとカルツォーネ-8-

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 「プリッとした弾力のある歯応え。これは一体・・・?」

 「ウィンナー・・・ではないな」

 「干した魚を水で戻してから焼いた、のか?いや、違うか」

 肉を使って作るウィンナーのようにジューシーな肉汁を感じないのでウィンナーではない事は分かるのだが、初めての食感と味にシュルツベルク伯爵親子とランスロットは首を傾げる。

 「だが、美味い」

 「このテリーヌ?パテを固めたもの?多分、異世界では普通に食べられている食べ物とチーズ、マグロのオイル漬けは相性がいいのですね」

 ((酵母が広まれば、民達も柔らかいパンを口に出来るだろうな。それにはまず果物の生産に力を入れて・・・))
ランスロットとアルバートは、給仕達がテーブルに置いたちくわパンを食べながら酵母を広める為の算段を立てる。

 「果物の生産もあるが、聖女・・・いや、性女を牽制する意味で酵母を商業ギルドに登録するのが先だな」

 「聖女?それって邪神・サマエルを倒したウィスティリア王国のマリカ殿の事か?」

 「アルバート、あの女は聖女でなく性女だ」

 何せあの性女は元の世界では何人もの男と関係を持っていたし、他人の大切な物を取り巻きを使って奪い取っていたり、恋人や彼氏を略奪していた。

 しかも、弱者や自分より美人や可愛い女の子を陰湿な手で虐げる事に対して躊躇するどころか罪悪感を抱かない性悪女だ。

 それが原因で性病に罹っているし、堕胎した赤子の霊が取り憑いているという事故物件以外の何者でもない。

 「何それ~?」

 世界を救った英雄の一人を悪し様に言い放ったランスロットにアルバートが呆れ果てた視線を向ける。

 「父上、あのロードクロイツ侯爵が聖女殿をあそこまで罵るのは故あっての事でしょう・・・」

 異世界の聖女マリカは妖精のように清楚可憐で天真爛漫。

 貴賤問わず平等に優しく接し、純粋無垢で慈悲深く正義感が強いのだという。





 異世界人でありながら、ウィスティリア王国の為に最前線で戦い世界を救った聖女





 嘘か本当か分からないが、噂によるとそんな茉莉花と婚姻を結ぼうと噂を聞きつけたウィスティリア王国の伯爵以上の家柄の貴族子息だけではなく、近隣諸国の高位貴族の当主が自分の息子の婚約者と婚約破棄させてまで彼女との縁談を持ち掛けていた・・・らしい。

 しかし、茉莉花に惚れているギルバードが彼女を王太子妃に迎えようとしているらしいので、数多の縁談はすぐに立ち消えになってしまったというオチつきである。

 傍から見れば茉莉花は超優良物件でしかないのだが──・・・。

 「もしかして・・・ロードクロイツ侯爵はサユキの能力で聖女殿の真実の姿を知ったのですか?」
迷い人の価値を知っているアルベリッヒがランスロットに問い質す。

 「アルバート、シュルツベルク伯爵夫人、アルベリッヒ殿。私は紗雪殿が戦っているところを一度も目にした事がない。だが、術者としての腕は一流である事は確かだ」

 敵に回せば恐ろしいが、味方であれば頼もしい存在

 それが紗雪という人間である。

 「俺はサユキが戦いに身を置いていたという事は聞いているが、お前さんと同様にその実力は知らない。だが、お前さんがサユキの能力を通じて聖女・・・いや、性女の本性を知ったのであれば俺は娘が一流の術者で、性女がとんでもない事故物件だという事を信じるさ」

 何せお前さんは何の根拠もなく、そのような事を口にする男じゃないからな

 「まぁ・・・この場に居ない性女の話はこれくらいにして、俺達はこの異世界のパンを楽しむとするか!」

 「ああ」

 「このパンの食感は初めてだけど美味しいのね。次は試食用として切ったものではなく、チーズが入ったものとマグロのオイル漬けが入っているものを一個ずつで欲しいわ」

 「僕も」

 「私も」

 「俺も」





 四人はちくわパンを堪能する。












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