カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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㉘酵母の登録-2-

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 五人がシュルツベルクを経ってから二日目の昼頃

 (四神のどれかを使えば一日くらいでロードクロイツに着くのだけど・・・こればかりは仕方ないわね)

 霊感がない者に式神は見えない存在なのだ。

 そんな式神に乗って空中移動するなど、養父母のみならずロードクロイツ親子にとっては恐怖でしかないだろうし、空を見上げた人は、どうやって空を飛んでいるのだろうか?としか思えないだろう。

 馬車の窓から見える景色を眺めながら紗雪はそんな事を思っていた。

 「サユキ。もうすぐしたら町に到着するから、そこの商業ギルドで酵母の登録をするわよ」

 「分かりました。お養父様達が酵母を商業ギルドに登録するという事で、宿屋に泊まっている間に作り方を書いたのですが・・・」

 こんな感じでよろしいのですか?

 酵母を作るのに最適な果物、季節によって発酵させる期間が異なる事や室温、瓶の煮沸消毒等

 イラストを交えつつ酵母の作り方、作る時の注意点を書いた用紙を紗雪が四人に見せていた。

 ふむ・・・

 「俺は作った張本人だから作り方を知っているし、作り方の説明も出来る」

 だが、書いている通りに酵母を作ったのにパン生地が膨らまないといった事も起きると思う

 その場合はどうすればいいのか?といった対処法を書けばいいのかも知れないな

 酵母の作り方の説明書に目を通しているレイモンドが紗雪にアドバイスを入れる。

 「説明書通りにやったのにその通りにいかなかったら、私や商業ギルドにクレームが入るかも知れないわね」

 レイモンドの意見を参考に紗雪が対処法を追記する。

 「私はお養父様達に相談した上で、新たな雇用を生むものだけを商業ギルドに登録しようとしていたのですけど・・・」

 酵母が登録するに値するかどうかの判断がつかない紗雪は戸惑いを隠せないでいる。

 「紗雪殿、前にも言ったがこれは紗雪殿の為なんだ」

 「ウィスティリア王国の聖女は、他人の大切な人や物を奪い取る性悪女だとランスロットから聞いている」

 「あの女の事だ。酵母は自分の発明だと主張するな。というより、絶対にやると断言してもいい!!」

 「サユキはシュルツベルク家とロードクロイツ家の料理人だけに酵母の作り方を教えるのではなく、商業ギルドに登録する事でキルシュブリューテ王国や近隣諸国に広めて欲しいんだ」

 「俺達が独占していたら市井の者達が柔らかいパンを口に出来ないし・・・何よりキルシュブリューテ王国の食文化が発展しないからな」

 「異世界にはカスタードプリンのように甘くて美味しいお菓子だけではなく、石鹸や硝子作りで使っている昆布が異世界では食材になっている。・・・キルシュブリューテ王国では工業用の資材が異世界では食材になっているものってあるのでしょ?」

 つまり、酵母やその他諸々の作り方を広める事で、茉莉花の出鼻を挫こうという訳だ。

 「色々言ったけど・・・サユキ、あなたは私達の大切な娘なのよ」

 「そうそう。娘を護るのは親として当然の事だ」

 「あんな性悪女など、私達が社会的に抹殺してやるから紗雪殿は安心して欲しい」

 「父上、シュルツベルク伯爵、伯爵夫人。紗雪、殿を護るのは俺の役目です!」

 「レイモンドさん・・・お養父様・・・お養母様・・・ロードクロイツ侯爵・・・」

 (この人達に出会えて良かった・・・)

 四人の狙いを察し、また彼等から確かに肉親としての愛情を感じ取った紗雪の顔には満面の笑みが浮かんでいた。












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