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㉛フライドポテトとソフトクリーム-6-
しおりを挟む紗雪は自分が抱えている思いを語る。
この世界で生きて行く目標を示してくれたレイモンドの夢を叶える為に自分が出来る事は何なのだろうか?
考えた末に出した結論というのが、フリューリングの食材を使って作った日本で食べられる料理をレイモンドや料理人達に教える事だった。
「オークやコカトリスといった魔物が普通に食べられる事を除けば、フリューリングに存在する食材と香辛料は地球のものと似ています」
後は、自分で作れる料理は自分が教えればいいし、作れない料理はレシピ本を見ながらレイモンドと共に試作して完成したものをロードクロイツ家とシュルツベルク家の料理人達に教えればいいのだ。
「それに・・・王侯貴族の屋敷で働いている料理人達は何時までもそこで働く訳ではないですよね?」
体力の衰えや、何らかの理由で故郷に戻らないといけなくなったので屋敷を出て行く料理人が出てくるはず。
侯爵家や伯爵家を退職した料理人達が生まれ故郷で料理店を開くかどうかなど、紗雪には分からない。
だが、侯爵家や伯爵家で作った料理やデザートを故郷に広めたいと思う料理人が一人か二人くらい居る筈だ、多分。
そうなれば、きっとキルシュブリューテ王国の食文化は今より豊かになっていくだろう──・・・。
「サユキさんが蒔く種の土壌を作るのは私達、種を育てて実らせるのはレイモンドや料理人達の役目、といったところかしら?」
「はい。どう考えてもこれは私とレイモンドだけでは出来ない大仕事ですもの」
「二人の夢を叶える為にも、ここは親である私達の力が必要という事か」
「はい」
エレオノーラとランスロットの言葉に紗雪は笑みを浮かべて返事をした。
(紗雪がそのように考えるのは、天女であるが故・・・なのか?)
ウィスティリア王国の聖女召喚に巻き込まれてしまった紗雪は本来であれば、そのような事など気にしなくてもいい人間である。
というか、ぶっちゃけると、ウィスティリア王国に復讐してもおかしくないし、フリューリングという世界そのものを恨んでも不思議ではない。
魔法は一切使えないが異世界の生活用品や食材を手に入れる事が出来る紗雪であれば、ランスロットが言っていた方法で復讐する事も可能だ。
もし、自分が紗雪と同じ立場にあったのなら、間違いなくそうしている。
まぁ、聖女として認定されている茉莉花が性病を患っているのだから、復讐をしようという気が起こらないのかも知れないが──・・・。
話を聞いたレイモンドは、紗雪がネットショップを使わずに自分が住んでいた世界の料理や調味料を再現しようとしている理由に納得していた。
「ねぇ・・・レイモンドとサユキさんは異世界の料理を広めたいのよね?その為には料理店を開くのが近道だと思うの」
「母上?」
「だが、その土壌は出来上がっていない。そうだな?」
「はい」
アイスクリームを作るのに必要な生クリームは高価だし、バニラビーンズはどこにあるのかが分からない。
それに、トマトケチャップやソースの類がフリューリングの食材で再現出来ていないのだ。
こんな状態で、日本で食べる事が出来る料理を広めるのは無理ゲー以外の何者でもない。
というか、詰んでいる。
「でも、フライドポテトの屋台であれば出来るのではないかしら?」
「特定の曜日か日付だけ屋台を開いて、限定五十から百食でフライドポテトを売る」
「フライドポテトの屋台で実績を積んでいきつつ、開いている時間を使って異世界の調味料や料理を再現する。そして、全てが整ったら店を開く・・・。ランスロット、侯爵夫人、あんた達はそう言いたいんだな?」
「ああ」
ランスロットの言葉をアルバートが補足を入れる。
「レイモンド、王都の屋台のようにフライドポテトを売る話だけど・・・どうする?」
「・・・・・・やってみるか」
今回はオリーブオイルを使ってジャガイモを揚げたが、溶かした牛や豚の脂を使えば王都よりも安い値段で売る事が出来るかも知れない。
この屋台は後に二人が開くカフェ・ユグドラシルの前身となる。
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