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㊵プルメリア島へ
しおりを挟む澄んだ青い空
青いキャンバスを彩る白い雲
太陽の光を受けて輝いている大海原
「綺麗・・・」
デッキで外の景色を眺めている紗雪が感動の声を上げる。
「紗雪、これを被らないと日に焼ける」
ネットショップで購入した日焼け止めクリームを塗っている事を知っているし、帽子を被ったり、傘を差して紗雪は出掛けている。
今は早朝なので昼と比べたら日差しは強くない。それでも紗雪の肌が焼ける事を危惧したレイモンドが彼女にフードを被せた。
「ありがとう、レイモンド」
「何を見ていたんだ?」
「刻一刻と違った形を見せる景色を眺めていたの」
「違った形、か・・・」
紗雪の言っている事は何となく理解出来るのだが、世界各国を旅してきたレイモンドにしてみれば見慣れている景色でしかない。
「ええ。空に浮かぶ雲はどれ一つとして同じ形がないし、降り注ぐ太陽の光を浴びている海は言葉で表現出来ないくらいの感動を覚えるもの」
同じ場所でも、自然が作る風景は同じようでいて違っているから見ていて飽きないわ
「そうか・・・」
見慣れている景色も注意深く見てみると違っている、ような気がする。
汚れのない、朝の爽やかな空気を堪能するかのように紗雪が深呼吸した。
「紗雪。その、手を繋いでも、いいか・・・?」
「ええ」
二人は手を繋ぎながら目の前の景色を静かに眺める。
「・・・・・・ねぇ、レイモンド。こんな時に無粋な話をして申し訳ないと思っているわ。でも、もう少し進んだらハルピュイアイとセイレーネスが棲む諸島を横切る事になるのよね?」
「ああ」
「仮にハルピュイアイとセイレーネスを全滅させてしまったらどうなるの?」
それ等を餌にしている・・・そうね、例えばグリフォンやクラーケンが人里を襲うようになるから倒してはいけないとか?
ギリシア神話に出てくるセイレーンとハーピーは怪物の餌ではないが、ここは異世界。
呼び方は同じでも地球のものとは性質が異なっている可能性があるし、生態系が狂ってしまうかも知れないと危惧を抱いている紗雪はセイレーンとハーピーについて聞いてみた。
「そんな話は聞いた事がないな。セイレーンは耳栓をすれば簡単に解決するからいいとして、ハルピュイアイはセイレーネスと同様に船乗りにとって厄介な怪物である事は確かだ」
食い意地が張っている奴等は船に積んでいた食糧を奪うわ、人間を食らうわ、繁殖の為に人間を襲うわ──・・・
レイモンドがハーピーという怪物について教える。
「・・・・・・よく、生き延びたわね」
「あの時は魔法で出した氷柱を雨のように降らせた事でハルピュイアイを倒したから、奴等の被害を受けずに済んだんだ」
護衛の依頼で帝国に向かった時の事を言っているのだと察したレイモンドは当時の事を紗雪に話す。
「な、何と言えばいいのか・・・」
随分とエグイ方法でハルピュイアイを始末したものだとツッコミを入れたい紗雪であったが、もし自分がレイモンドと同じ状況にあったら霊感のない人間では見る事が出来ない式神を使って倒そうとしていたはずなので黙っておいた。
「セイレーネスやハルピュイアイが襲ってきた時は私も一緒に戦う。・・・だから、無茶しないでね」
「期待している。だが、男は惚れている女の前では見栄を張ってしまう生き物・・・って!言っている傍からハルピュイアイが襲ってきたーーーっ!!!」
耳障りな鳴き声が耳に入ってきたのでレイモンドが空を見上げると、ある個体は若いが目を背けたくなるような悍ましく醜い顔、ある個体は老婆の顔。それ等に共通しているのは身体が鳥である事だ。
ハーピーが船に乗っている人間と食糧を食らおうと、繁殖の為に人間の男を攫おうと、船を見下ろしながら飛んでいた。
ブチッ
(ブチッ?)
「貴様等っ!」
(レイモンドが切れた!?)
二人の時間を邪魔された事にブチ切れてしまったレイモンドが魔法で出した無数の氷柱が、情け容赦なくハルピュイアを貫いていく。
(あれは・・・ハルピュイアイ!)
「サユキ!レイモンド殿・・・!」
船室の窓からハルピュイアイが見えたアルバートはデッキへと駆け付けるのだが、頭部に胸部、羽の部分など身体中を氷柱に刺されて息絶えたハルピュイアイ、ハルピュイアイの死体に八つ当たりしているレイモンド、そんなレイモンドを必死で宥めている紗雪の姿だった──・・・。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
リバーシをやったり、壊血病対策として野菜を使った料理を教えたり、セイレーネスが棲む諸島を通り抜ける時は耳栓と筆談で対応する事で乗り切ったりしている内に七日が経った。
「あれがプルメリア島・・・」
紗雪達を乗せた船はリゾート地を思わせるプルメリア島へと到着した。
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